日程

第14次(1996)黄山〜無錫
明石市・無錫市友好都市提携20周年記念行事


 第14次石子路之会の訪中団員一行54名は、8月10日に関西国際空港を出発、6日間で575キロを走破して、8月21日に帰国した。
 8月10日、上海で雑技を鑑賞。翌11日は、黄山の山頂へ(加賀城・楢崎・梶原・多田・安田・中山学・中山陽の7名はロープウエイを使わず登頂)。毎回感じることであるが、この団には中国の特別な配慮が多々ある。そして、まるで天気まで注文したようだ。ロープウエィから歩いて山小屋に到着、その直後に大雨。山頂散策する頃、雨が止み、夜は再び雨。翌朝まで降り続くが、日の出の頃になると次第に天気は回復する。
 午前5時に起床。ご来光を見るために黄山の山頂に立つ。中国独特の山水画に出てくる、雲海の上にそびえ立つ山々、その雲の切れ目から、くっきりとご来光を確認。眩しいばかりの太陽は、私達のこれからの中国サイクリングを、しっかり見守ってくれていた。
 8月13日、いよいよ黄山の麓からサイクリングを開始。ハンドルとブレーキをしっかり握り締め、急坂を一気に下る。兵庫県知事・神戸市長・明石市長の親書を携え、一路無錫へ向かった。
 パトカーを先導に、54台の自転車隊。その後ろにはバス・トラックが伴走。対向車まで徐行する、この一行は一体何物だ
 臨安市の中心街では、我々を歓迎する横断幕が何本もかかっている。沿道から飛び交う地元の人達の声援、バスの車窓から「加油!(頑張れ)」の声に「謝々!(有難う)」と応えると自然にペダルに力が入る。ホテルに到着するは、30人程のブラスバンドが歓迎演奏。我々のボルテージは上がる一方。
 しかし、杭州市までの安徽省の道路は辛かった。工事中の道路には尖った小石がまかれており、ロードレーサーのタイヤには、あまりにも苛酷である。次から次ヘパンクの連続。1本(約1時間)の走行で、6本のスペヤー車輪が間に合わない。世語役が休憩毎にパンク修理。この日、1日でパンクは何と30本以上!過去13三回の訪中の記録を大きく上回った(14次は全体で106本)。雨が降っても走り続けた。汗と埃でくしゃくしゃになっても誰一人としてバスに乗ろうとしない。ドロドロの顔をしながら目は生き生きと輝いている。これを『石子路病』と言わずして何と言う
杭州市てまえの工事中の砂挨もひどかった。車が通り過ぎると、一寸の先も見えなくなる。髪は白髪に、ユニフォームまでも変色、それでも走り続けた。杭州に着くと、その日は民泊。ホストファミリーが夕食も食べずに待っているとのことで、シャワーを浴びたい気持ちを抑えドロドロのまま、ホームステイ先へ。
 ここ数年、中国の経済成長の発展は目覚ましい。私達はその変貌を眼の当たりに見て来た。都会では高層ビルが林立し、経済特区が設けられ、どんどん発展してきた。一方、何千年も前と同じ生活を続けていると思われる田舎があった。そして、その差はますます広がって来ていた。
 しかし、最近それがちょっと変化し始めた。かつて中国で最も貧しい省の一つと言われた安徽省にも、開放政策が届き始めたようだ。道路の拡張・整備が進められ、農作物の請け負い制度で多くの万元戸が出現している。そして、都会だけでなく田舎でもホームステイを請け負う家庭が出て来ている。私達は、そんな村で貴重な民宿を体験した。
 「苦泳れぱ楽あり」。杭州では完全休養日。人民政府表敬訪問をした後、市内観光、西湖遊覧などを楽しんだ。世界でアマゾンとここでしか見られないと言う、海から川への大逆流、そのすごい迫力に圧倒された。すっかり元気を取り戻し、サイクリングにも憤れて来た頃、寒山寺と運河で有名な蘇州を通過、ゴールの無錫が近づいて来る。
 ゴールの手前1.5キロはファイトコール。「ファイト!」という声と共に、転倒・パンク・下痢・発熱等、六日間の思い出が走馬灯のように頭を駆け巡る。  
 ゴールのホテル前から我々を歓迎するブラスバンドが鳴り饗く中、ついにゴール。黄山から無錫までを全員で無事完走。一人一役を合言葉に協力し合い、一つのことを成し遂げた。一人では出来ないことを「石子路」皆んなの力でやり遂げた。充実感と嬉しさで涙ぐみながら、握手し肩をたたき合うと、不思議に共通の思いが伝わって来た。
 初参加の団員が「石子路のお陰で、普通のオバちゃんでも完走出来ました」。14歳の若者が、苦あれば楽ありを学びました」。最高齢の団員が「長年の夢であった日本列島縦断をやり、2人の孫と一緒に中国を走れたなんて、72年間の生涯で最高の年になりました」。
 明石・無錫友好都市締結15周年記念の一環として行われた14次訪中も成功裡に終わった。完走祝賀パーティーで、無錫市人民政府から栄誉証と、名前入りの湯飲みが全員に授与され、すばらしい夏の思い出と共に今年も終わった。

(1996年 石子路之会文集 小池 啓納 文より抜粋)

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