WEST COAST BLUES (Transcribed by GIBSON BOY)
1960年4月リリースされたジャズギター史上、最高傑作の《The Incredible Jazz Guitar of 
Wes Montgomery》ではじめて公式デビューを飾ったこの曲は、それ以来WESの愛奏曲としてアル
バム、VTR、だけでも7回(625のテーマ曲を入れれば8回)発表されています。
(詳しくは当HPのディスコグラフィー、「ウエスの作曲」の項目をご覧ください。)

今回コピーをしたバージョンは、いままで書物や雑誌にも掲載されていない、Harold Landの
《WEST COAST BLUES/JAZZLAND JLP-20》からのWESのアドリブソロです。
WESが数多く作曲したBluesナンバーでもWESらしい特徴を幾つか持つBluesナンバーです。
音楽としてとりわけ大切なそして印象に残るメロディ。メロディアスでワルツタイム(3/4)の
リズムに乗って、鼻歌でも歌いたくなるような明るいイメージのメロディで、既存のBluesとは
ちょっと違った色彩を持つ曲です。
従ってWES以外のプレーヤー(キャノンボールアダレイー、ナンシーウイルソン等)にも演奏さ
れ、彼の作った代表曲、名曲といっても良いでしょう。


WESの技法的な特徴も良く出ています。 まずは3拍子のワルツタイムのリズムで24小節(通常のBluesの1小節を2小節分として解釈して) で構成されています。Key in B♭です。 テーマのコード進行は通常のブルース進行とさほど変わりませんが、アドリブパートの進行はよ り流れのスムーズさを出すためにU―Xが多用されています(アドリブパートの11〜20小節)。 ここは、A♭7からF7までの半音下降ラインをU―Xに分けて更にスムーズ感をだしています。 WESはアドリブでもしばしば見られますが、X7をU―Xに分解してソロも構築します。 又WESのコード進行の最大の特徴とも言える裏コードの使い方も良く出ています。(アウト感を出 す)それはW7(サブドミナント)(E♭7 )に行く前のトニック7の裏コードの♭X7を使って、そ れを更にU―Xに分解する進行。7〜8小節のBm7/E7の箇所です。それとコーラスの最後のター ンバック(20〜24小節)にも裏コードを使ってすごく気持ちの良い進行感を作っています。 普通でしたらB♭7−G7−Cm7−F7(T7―Y7−Um7―X7)で済ませるのですが、 B♭mj7−D♭7−G♭mj7−B7♭5というように裏コード(変形)の4度進行になっています。 ちなみにこれはイントロ、エンディング(ここでのバージョンでは演奏していませんが)もこの 進行でできています。 以下、WESが如何に音楽的に合理的かつ正しいことをやっているかを細かく、小節ごとに分析、 解説をしました。 『WES AD-LIB SOLO Analyze』 【A】 1〜2brs.;B♭7   T、3°4°とシンプルに使い、トニック7thを表現。 3〜4 brs.;全音下のA♭7  3°4°Tとシンプルに使ってA♭7 を表現。 5〜6 brs;B♭7 をFm7―B♭7とU―Xに分けて、Fm9の9thから始まるFm9アルペジオ。WESが良く 使う思考。 7〜8 brs;WES、得意の裏コード。本来B♭7でも良いのですが、B♭7の裏コードのE7を使い、更に それをBm7―E7(U―X)に分けて、少々アウト感を出している。そしてつぎのE♭7の へ半音で解決するコード進行。 9 brs  ;E♭7(W7) Mix-Lyd ♭7、5°6°5°Tとシンプルだけど完璧な7thフィーリングフレ      ーズ。 10 brs ;本来ならE♭7の進行のところだが、先取りで次のE♭m7―A♭7へいく為に、既にE♭m7 の引っ掛けのフレーズを弾いている。 11〜12 brs;E♭m7―A♭7のアルペジオの変形で綺麗な下降ライン。 13〜14 brs;Dm7―G7、Dm7の5thから始まる綺麗な上昇ライン。 15brs ;C#m9のアルペジオの下降ライン。WES得意のフレーズ。 21〜24 brs;ここはみごと!! B♭mj7−D♭7−G♭mj7−B7♭5の進行を完璧に進行とうりに表現している。 B♭mj7(T, 5,4,3,T) D♭7(T, ♭7,T,6,3) G♭mj7(9,T,3,5,Mj7) この進行は、元々B♭7−G7−Cm7−F7(T7―Y7−Um7―X7)の進行の変形で先にも記述したと おり、裏コードの4度進行になっている。 【B】 29brs ;B♭7 をFm7―B♭7と考え、Fm7のアルペジオ。最後のEの音はB♭7の♭5の音を使ってい      て、とてもhip!!。 30brs ;31brsのBm7―E7の先取りで、既にBm7のアルペジオを弾いている。 31brs ;*1はニアンスとしての付記でBm7のアルペジオ。 33brs ;ここのE♭7(W7)のフレーズもシンプルだけど、すごくかっこよい。 3,T,5,♭7,Tといったて構成音のみだけど。 34〜38 brs;E♭m7―A♭7  Dm7―G7 同じようなフレーズパターンで 45〜48 brs;前記の21〜24 brsといっしょで見事にB♭mj7−D♭7−G♭mj7−B7♭5を弾き切ってい る。                                       GIBSON BOY