字源的アプローチによる 新解釈

 

はじめにお読みください


 


 

                 『老子』 第三十章


以道佐人主者
不以兵強天下
其事好還

道を以って、主人をわきから助ける人は、兵を以って、天下を強めるようなことはしない。
その事は、(めぐってはね)還るのを好むからだ。





左は「手+工」の会意文字。工作のさい右手にそえてささえるので工印を加えた。右は物をかかえてかばう働きをするみぎ手のこと。のち、左は、ひだり、右はみぎという単純な意味に專用されるようになったので、佐と佑の字で、その動作を示すようになった。佐は「人+音符左」。
たすける。わきから手を添えてささえる。




師之所処
荊棘生焉

師の所におれば、いばらの木がはえてくる。





「艸+音符刑(刑罰)」。刑罰のむちをつくる木のこと。


「手かせ+人が両手を出してひざまずいた姿」で、すわった人の両手に手かせをはめ、しっかりとつかまえたさまを示す。
いばら。木の名。刑罰で、むちうつときに用いる杖ツエをつくるのに用いた。



刺の字の左側の朿(とげでさす)を二つ並べたもので、とげで人をひやひやさせるいばらの木。


以道佐人主者 不以兵強天下
其事好還
師之所処 荊棘生焉


*
道を以って、主人をわきから助ける人は、兵を以って、天下を強めるようなことはしない。 その事は、(めぐってはね)還るのを好むからだ。師の所におれば、いばらの木がはえてくる。




大軍之後
必有凶年

大きないくさの後、必ず、災いの年になる。





「車+勹(外側をとりまく)」で、兵車で円陣をつくってとりまくことを示す。古代の戦争は車戦であって、まるく円をえがいて陣どった集団の意。のち、軍隊の集団をあらわす。
いくさ。軍隊を用いるたたかい。



「凵(あな)+×印」。落とし穴にはまってもがく意を示す。吉(充実する)の反対で、むなしい意から悪い意となった。
悪いさま。災い。不吉なこと。


 


善者果而已
不敢以取強

善き者は、果たすと、そこで止める。
敢て、それ以上強さを取ろうとはしない。





木の上にまるい実がなったさまを描いたもので、まるい木の実のこと。


坐は、人が足腰をおりまげて地上にすわること。挫は「手+音符坐」で、途中でぎざぎざの折れめを生じさせて折ること。
くじく。くじける。



墮が正字で「隋(おちる)+土」で、土壁がくずれおちることを示す。
くずれる。くずす。やぶれる。やぶる。



 


果而勿矜
果而勿伐

果たしても、誇りとしてはならない。
果たしても、てがらをひけらかしてはならない。





さまざまな色の吹き流しの旗を描いたもの。色が乱れてよくわからない意を示す。転じて、広く「ない」という否定詞となり、「そういう事がないように」という禁止のことばとなった。


 


果而勿驕
果而不得已
果而勿強

果たしても、おごり高ぶってはならない。
果たしても、やむを得ずしたこととせよ。
果たしても、強がってはならない。





「馬+音符喬キョウ(高くのびて先が曲がる)」。背の高い馬。また、高く上に出て、他を見さげること。
おごる。背のびして、人の上に出る。おごり高ぶる。また、おごり高ぶって見くだすさま。



 

大軍之後 必有凶年
善者果而已 不敢以取強
果而勿矜  果而勿伐
果而勿驕 果而不得已 果而勿強


*
大きないくさの後、必ず、災いの年になる。善き者は、果たすと、そこで止める。 敢て、それ以上強さを取ろうとはしない。果たしても、誇りとしてはならない。 果たしても、てがらをひけらかしてはならない。果たしても、おごり高ぶってはならない。 果たしても、やむを得ずしたこととせよ。 果たしても、強がってはならない。





物荘則老

物は勢いが盛んであっても、すなわち老いるものである。





「艸+音符壯(すらりと長い)」で、草のたけが長くおいたつことで、細長い草ぶきの納屋。また、いなかの農家のこと。転じて、形が整って勢いが盛んである意。



年寄りが腰を曲げてつえをついたさまを描いたもので、からだがかたくこわばった年寄り。



是謂不道
不道早已

是は、「道ではない」と謂う。
道ではないことは、早く終わってしまう。






物荘則老
是謂不道 不道早已


*
物は勢いが盛んであっても、すなわち老いるものである。是は、「道ではない」と謂う。 道ではないことは、早く終わってしまう。




 

 

 

 

▽ ちょっとシンプルな解釈!? ▽

以道佐人主者 不以兵強天下
其事好還
師之所処 荊棘生焉
大軍之後 必有凶年
善者果而已 不敢以取強
果而勿矜  果而勿伐
果而勿驕 果而不得已 果而勿強
物荘則老 是謂不道 不道早已


道を以って、主人をわきから助ける人は、兵を以って、天下を強めるようなことはしない。 その事は、(めぐってはね)還るのを好むからだ。師の所におれば、いばらの木がはえてくる。
大きないくさの後、必ず、災いの年になる。善き者は、果たすと、そこで止める。 敢て、それ以上強さを取ろうとはしない。果たしても、誇りとしてはならない。 果たしても、てがらをひけらかしてはならない。果たしても、おごり高ぶってはならない。 果たしても、やむを得ずしたこととせよ。 果たしても、強がってはならない。物は勢いが盛んであっても、すなわち老いるものである。是は、「道ではない」と謂う。 道ではないことは、早く終わってしまう。




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