蘇州号に乗って(大阪〜上海)
朝7時に目が覚めた。豪華?客船、『蘇州号』に乗って2日目。
雑魚寝状態の2等客室の窓から外を見てみたが、青い海と船がたてる白い波しか見えないので、東シナ海へと入ったのだろうか?
昨日、船は昼もだいぶん過ぎた頃、大阪南港フェリーターミナルを出発し、明石海峡大橋をくぐり抜け、島々が点在する瀬戸内海を通り、九州を右手に望みながら、東シナ海へ。
そして東シナ海を西に進み、中国随一の大都会、上海を目指していた。
申し訳なさそうに雲がひっそりとしている青空の下、
俺は、甲板に出て、近くにあるベンチに座り、煙草に火をつけようとしたが、強風のため、煙草になかなか火がつかず、風邪を遮るように体をかがめ、やっと火をつけることに成功した。
「フッーー!」と一服していると、船内と甲板を仕切る重い扉が開き、wan君が隣に座った。
昨日はヒマでヒマでしょうがなかったが、今朝からは、同室の旅人達の何人かと話をするようになり、運賃に含まれている朝食を食べに、彼等と一緒に、船内のレストランへ。
wan君もその中にいた一人であり、初の海外であったため、緊張と不安が入り交じった時間を過ごしていた。
「ishidaさんは、中国へは行ったことがあるのですか?」
「いや、東南アジアは行ったことがあるが、中国は初めてで。」
中国、いや上海はどんなところなんだろうか?
彼ほどではないが、俺も少しばかりの不安を抱いていた。
朝食を食べているときに、上海に上陸したらどうするのか?
俺達4人は、みんな上海が初めてだったため、旅の好奇心よりも不安が先走り、一人よりも誰かと同じ宿に泊まり、安心できる状態をつくり、旅の出鼻をくじかないようにしたいと思っていた。
どうやら俺を含め、みんな最初は、浦江飯店と言うバックパッカー御用達のホテルに行くらしい。
俺も内心、みんなと別れることなく、浦江飯店へ行けることに”ホッと”していた。
上海、どんなことが待ち受けているのでしょうか?
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蘇州号2等Bの客室の様子
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船内には、俺達のような旅行者もいれば、ビジネスのために上海へ行く人達もいる。
そして団体旅行で日本へ行き、帰国をする中国人旅行者もいた。
そんな中国人団体客の荷物の量は、半端ではなかった。
段ボールを十数個も抱えた一団やら、はち切れんばかりのカバンの数々。
いったい、みんな日本へ何を買いに行ったのでしょうか?
旅人もビジネスマンも中国人達も上海へ行く。と言う目的以外は、それぞれ目的が違うが、この2泊3日の船旅において共通していることが一つあった。それは、みんな時間を持て余している。
ヒマだと言うことだった。
俺も話しをする人が何人かは、出来たが、やはり一人で過ごす時間の方が長かった。
船内のロビーでは、いつしか卓球が始まり、乗客の日本人、中国人の数人で日中卓球対決なんてことをしましたが、それも多くの時間を費やすことは出来ず、30畳くらいはありそうな2等客室へ戻り、初日に自分の荷物を置いた場所へ行き、横になったり、ガイドブックを眺めたりしながら、時間が経ち、船が上海へ着くのを待つしかなかった。
3日目。目が覚めると船はもう長江(揚子江)に入っていた。
窓から見える景色も海ばかりから、倉庫などが建ち並ぶ工業地帯へ変わっている。
更に、長江の支流の黄浦江へ入ると、岸沿いには、高層建築がいくつも建ち並び、船はまるで、黄浦江と言う、巨大な道路を走っている、とてつもなく大きな車のような感じだ。
「いよいよ上海へ着く。船はもう飽きた。早く陸に降りたい。」
出発当初かかえていた不安も、あまりにも長時間の船旅だったため、俺の心の中では、すっかり影を潜め、ただ早くこの船旅を終わらせたかった。
やがてテレビなどで上海を紹介するときに必ず登場する、中国・上海高度成長期を象徴するTV塔が姿を現したが、霞がかっていて、上部は全く見えず、下半分の球体しか見えません。
「いよいよ到着だな。」俺は、上海の乱立する、ビル群の景色を甲板から眺めていたが、踵を返し、2等雑魚寝部屋へ戻り、すでにまとめている荷物を背負い、ロビーへと向かった。
「やっと、この状況から、抜け出すことが出来る。」
ロビーには帰国を待ちわびている中国人の団体客が集まっている。
今回、中国へ行くのに船を使ったのは、出発することになったのが急だったためだ。
日本では、ちょうどゴールデンウイークに突入していたので、飛行機は安くならないと思い、たっぷり時間はあるが、金がない俺は、安い船で行くことにした。
2泊3日の船旅は、もうウンザリですが、今回は蘇州号に乗って良かったです。
時間がたっぷりあったおかげで、たくさんの人と知り合えたし、ゆっくりと旅のテンションも上げていくことが出来た。
そのおかげで、俺はこれから行く、上海がとても楽しみになっていた。
やっと、旅が始まるゼ!
そろそろ蘇州号が国際フェリーターミナルに到着する。
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