ギターマガジン10月号
ギターマガジンがウェスの特集を取り扱い、しかも表紙にも飾られるのは1993年8月号以来2回目と
なった。
やはりいつまで経ってもウェスの存在がギター界においては必要不可欠な人物であることを認めざる
を得ない、もちろんジャンルを超えてのことである。
「ウェス・モンゴメリの生涯」については、ウェスについての知識や奏法に至るまでご存じの小泉清
人氏がこと細かく説明されている。
ただ編集部が記載した「ウェスが愛した機材」で若干の異論を感じたので説明させて頂く。
○まず、「このほかにもナチュラル・フィニィッシュの "L-5CES (〈フルハウス〉のジャケットに写
っているギター)" も所持していたようだ」、とある。
◎が、これはコマーシャルように撮られたものでウェスのギターでないのは以前から当サイトでも説
明してきたことである。
○それから、「ギブソン "ES-175" 、掲載の写真から判断できないが、このギターはフレットがひと
つ少なく19フレットで、"P-90ピックアップ" がひとつマウントされた55年以前のモデル、それ以
降は20フレット、ハムバッカーが搭載される、60年初頭には、ウェスはギブソン社の宣伝にも登場
している、この写真はもしかしたら、 "ES-175" の宣伝用に撮影されたのだが、ウェスの持ってい
た "ES-175" は55年以前というスペックであるため、最終フレットやピックアップを隠すようにし
ていたのかも知れない」、と言う下りですが・・。
◎仮にこの写真(〈インクレディブル・ジャズ・ギター〉のジャケット写真)がギブソンのプロモ用に
撮影されたとするならば、最新の "ES-175" を使わないはずありません。
つまり"P-90ピックアップ" もフレットも隠すことなど必要ないはずです。
写真からしてギタリストが抱える自然なポーズだと思います。
まあ、考えられないこともないでしょうが、ギブソンが古いタイプなので隠して欲しい? なんて
いいますかね?ギブソン社のプロモ用でしたら最新の機種を用意するでしょう。
あと、19フレットと20フレットの分かれ目は1955年のようですが、ピックアップは1956年までが
"P-90ピックアップ" で1957年から "ハムバッカー" が登場します。
このギブソン "ES-175" は〈インクレディブル・ジャズ・ギター〉の他にもナット・アダレイのリー
ダ作〈ワーク・ソング〉でもウェスのサウンドが聴ける。
まだ検証は取れていないが、この5ヶ月後のキャノンボールのリーダ作〈ポールウィナーズ〉もその
可能性が含まれており、推測するならウェスはこの時期ロード用に "ES-175" を購入していたのかも
知れない。
そして〈インクレディブル・ジャズ・ギター〉のジャケット写真は明らかにジャケット写真をイメー
ジして撮られたものと思われ、ギブソンのプロモ用に撮られたとは考えにくいことである。
今回の特集も珍しい写真に感動しました。なかでも1961年1月23日、とあるクラブでモンゴメリ・ブ
ラザーズの演奏とあるのは、この時期頻繁に出演していた「ファイブ・スポット」と思われる。
最後に重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、「アルバム・ガイド」の中で〈ネイビー・スイング〉
の放送音源がEPとなっているが、正しくは海軍のリクルートを目的とした放送用の12インチ・ト
ランスクリプションLPであることを言明しておく。
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