フルハウス駐在員の松崎和之氏よりウィリアム・アッシュのライヴ・レポートを紹介します。
今回は全国28箇所のツアーと聞きましたが、12月10日の "Bflat" では宮之上貴昭氏をゲストに
迎えるほど人気と実力があったのか? 松崎氏のレポートを拝見しよう。
“ウエス・モンゴメリ・フェスティヴァル“
出演: William Ash(G) 宮之上貴昭(G) Brent Nussey(B) 小林陽一(Dr)
場所: "JAZZ LIVE SPOT Bflat" 東京都港区赤坂6-6-4 赤坂栄ビルB1
日時: 2003年12月10日(水)19:30〜
1st Stage 1.Full House
2.Twisted Blues
3.Old Folks(宮之上さんのソロ)
4.Parker’s Waltz(Williamのソロ)
5.Road Song
6.S.O.S. 〜ending
2nd Stage 1.Bock To Bock
2.Cariba
3.Jingles
4.Day Dream
5.Sunset Street
6.Caravan〜ending
アンコール Summer Time〜4on6
開演時間19:30を少し過ぎて "赤坂B♭" に到着。
もう演奏は始まっていると思っていたが、ぎりぎりセーフ。
入り口でチャージを支払い席に着いた。フロアはとても広い。客席が100以上ある。
PAの装置も完備されている。今回のライブには相応しい感じがする。
ドラムスの小林陽一さんからも以下のメールを頂いていました。
「William Ash(G)のジャパン・ツアーも28本すべて無事に終わりにさしかかっております。
最後のライブが赤坂 "ビーフラット" で宮ノ上貴昭氏(G)をゲストに行なわれます。
是非おいでください。」
小林さんのMCとともに最初の曲がスタート。なんと一発目から〈Full House〉である。
イントロの出だし、Ashと宮之上さんとのユニゾンが心地よい。いやちょっとエロティック。
Ashのソロは繊細だ。サウンドはやや硬質でシャープな感じがする。
使用ギターがGibsonL5CESナチュラルのウェス・モデル。製作年は多分90年代だろう。
ソロの展開は圧巻である。シングルトーンはウェス同様親指の腹でアップストロークもダウンス
トロークもこなす。
パッセージが早くなるとアップストロークで人差し指も使う。杉本篤彦さんもこのスタイルだ。
オクターブソロに移行。そしてコードソロ。ここからが素晴らしい。コードソロでメロディを感
じさせる。そして間がある。
ソロを終え、宮之上さんにバトンタッチ。相変わらず凄い。この人は常に進化している。
一音一音に説得力がある。音が太く温かいのだ。爪弾く音ではなく肉声に近いサウンド。
だから聴いている側の心を包み込んでしまう。
曲の合間、宮之上さんにマイクが渡された。ウィリアム・アッシュとは今日初顔合わせであるこ
と。
一時間程度のリハですっかり心が通い合ったとの事。アッシュは17歳でデビューし天才という名
を欲しいままにした。
現在32歳。自分は5歳の時に神童とよばれたが、現在は50代の親父です(一同爆笑)MCも一級品
だ。
1st.ステージが無事終了。二言三言宮之上さんと会話を交わす。
師と知り合って12年経つ。相変わらず若々しい。
プレイがそのまま出ているようだ。隣に座っていたお客さんが「宮之上さんが出ると他のギタリ
ストが添え物になるなぁ・・」と言っていたが、Ashにはかなり光るものがあると思う。
ただ今夜は宮之上さんのペースに巻き込まれて目を白黒させている感もあるが(笑)
2nd.スタート。
私の大好きな曲〈Bock To Bock〉を2ギターのデュオでスタート。
脳内の快感物質が駆け巡り、まさに恐悦至極の境地に陥る。
最後の〈Caravan〉に至るまで感動ものであった。
エンディングが終わっても拍手なりやまずアンコールへ。静かなスタートで〈SummerTime〉を2
人で紡ぎ出す。
やがてアップテンポになり曲はご存知〈Four On Six〉へ。?って顔してる人多かったが、コー
ド進行は一緒なのだ。
ウェスはこのコード進行から〈Four On Six〉をかいたのだ。その辺の経緯を熟知した宮之上さ
んならではのパフォーマンスだった。
「音楽は協調のなかで生まれる」。かのマイルス・デイビスの自伝の中で読んだ記憶がある。
まさに今夜はベテランと才能あるプレーヤーとのサウンドの融合。
お店のエントランスのポスターで「●WILLIAM ASH vs YOSHIAKI MIYANOUE●」って書いてあった
が、VS=ヴァーサスってどういう意味?って感じた。音楽ってK1とかプロレスと同類か?
おいおい、いい加減にしろよ。意味違うだろう、と独り言を呟きながら家路についた。
フルハウス駐在員 松崎和之
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ウィリアム・アッシュ、1971年8月22日ニューヨーク生まれと言うから現在32歳ですか。
彼の存在を知ったのは、92年驚異の天才ギタリストとして若干17才でキング・レコード企画のウェ
ス・トリビュートのアルバム《ウェス・モンゴメリに捧ぐ Vol2/プロジェクトG7/KING-KICJ 131》
でプロ・デビューを果たしたときだった。
このアルバムでの〈Finger Pickin'〉はまさしくサウンド、テクニックともウェスそっくりという
印象が強かった。
むしろ若くてよくここまで研究しているなということと、特にサウンドについてはパシフィック時
代の雰囲気をよくだしていると感じた。
それから、彼のリーダー・アルバムを探し続けたが見つからず、これほどの天才ギタリストを何故
アメリカは放置するのかと疑問に感じていたが時間とともに忘れ去っていた。
今年にになって宮之上氏の元お弟子さんで現在は農業の傍ら、
自宅に持つ本格的レコーディング・スタジオで02年8月にドラ
ムスの小林陽一氏のアルバム《スキヤキ/小林陽一/What's New
Records WNCJ-2115 》をリリースしたので買ってくださいと連絡
がはいった。
ご存じの方もおられるかと思いますが、秋田にあるレコーデイング
スタジオの河内氏で、「このアルバムにはウィリアム・アッシュが
参加している」とのことで早速買い求めた。
〈キャラバン〉はもう弾きこなしている感じも受けたが、オクター
ヴにおけるポジション移動にややもたつきを感じた。
そして01年3月にアッシュ・トリオがニューヨークでレコーディン
グし、日本国内だけにリリースされた《ムーンライト・アンド・ス
ターズ/ウィリアム・アッシュ/Polystar Jazz Library MTCJ-1033》
を先日購入し、聴いてみた。
やっぱりオクターヴにおけるポジション移動にもたつきを感じただけ
でなく、少し切れ味も悪い。
しかし、シングルトーンにおけるフレーズはなかないい味を出してい
る。
そう・・ウェスと言うより・・ファーロウ風のフレーズなんですね。
彼の経歴を見ると、「華々しいレコーディング・デビューを飾ったが
その後、ベーシストに転向。ふたたびギタリストとしてカムバックを
果たした」と書かれてあった。
これで謎が解けた・・つまり私が彼のアルバムを探したが見つからな
かったのはこのことが原因だと直感した。
ま、よくある話ですね。同じ弦楽器なので持ち替えやすいことから。
で、推察はまだ続きますが、このベースに転向したことでオクターヴ奏法によくない結果をもたら
したと考えられませんか。
確かに早い動きのポジション移動・・よくないですね。
いっそのこと彼に提言したいのですが、単にピック奏法でファーロウのようにシングルトーンに徹
する方がいいのではないかな、本当にシングルトーンは綺麗ですよ。
いくら天才のオクターヴ奏法と言っても、既に日本では宮之上氏を始め多くのオクターヴ奏法者が
活躍されていますから、今のスタイルではいつまで続くか・・。
それにしても、アッシュに宮之上氏と共演した感想を聞きたかったですね。
少し辛口の評価でした。
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