Full House(Transcribed by GIBSON BOY)
ギブソンボーイさんによるトランスクリプションも9回目を迎えました。
今回紹介します一曲はウェス・ファンのみならず多くのジャズ・ファンから支持を得る
リヴァーサイドのライヴ盤《フル・ハウス》の挿入曲からウェスの自作〈フル・ハウス〉です。
が、国内外の採譜本ではすでに見られることから視点を変えDVDでリリースされた
《WES MONTGOMERY Live In '65/JAZZ ICONS 2.119003》のロンドンのTV出演でプレイしたテイク
から採譜された、おそらくギブソンボーイさんが初めての試みと思います。
特にこの〈フル・ハウス〉は全てのアルバムにおいてアドリブにある特徴がみられるとのことで
その解析もされています。プロもアマもこれからレパートリーにされる方はたいへん有効な資料
となります。
さて、〈フル・ハウス〉ですがオフィシャル映像で観られたのが1994年パップよりレーザー・デ
ィスクとVHSでリリースされた《Wes Montgomery Quartet/Jazz625》で、当時「動くウェス」と
評判され彼の弾く姿はなおさらのこと指使いに興味が注がれた。
司会者は〈フル・ハウス〉で「お子さんは7人居るそうで、また噂好きの友人によると、もう
お孫さんまでいるとか・・(ウェスに向かって、お爺さんですか?)・・(突然振られて慌てた様子
で、そうです)・・隠居の心配はありません、彼はまだ42歳です。
次は大家族にピッタリの曲〈フル・ハウス〉です。」、と紹介する。
この〈フル・ハウス〉の命名について、ウェスは生涯5人の子供(男子2名、女子3名)に恵まれた
ことからトランプ・ゲームのポーカーの役のひとつフル・ハウス(同一数字カード3枚と同一の
数字カード2枚)と同じことから〈フル・ハウス〉と命名されたという。
ただ、1962年ライヴ・ハウスのツボで演奏したときは曲名がなく、満員の客席だったことに因んで
後から付けられたという説も聞いたことがあります。では見ていただきましょう。




この〈FULL HOUSE〉はFmキーで56小節(16+16+8+16)の構成で出来ており、サビ8小節を除いて、
[Fm7-Bb7]の[U-X]形態のコード進行中心の流れである。
さて、RIVERSIDEの《FULL HOUSE》やJAZZ625(DVD)でのアドリブ、そして今回採譜した65年
ロンドンのTV出演でのアドリブなど、いずれを聴いても『あれ??[Fm7-Bb7]の[U-X]のフレーズ
に聴こえないなぁ』と感じた箇所があり、これは何んなんだろう、ということがきっかけで採譜を
始めた。
それでRIVERSIDEの《FULL HOUSE》とロンドンのTV出演での《WES MONTGOMERY Live In '65》の
ソロフレーズを幾つか抜粋し、比較検証してみた。


ピアニストは、|[Fm7-Bb7]|[Fm7-Bb7]|でコードを弾いてますから、通常ならアドリブ奏者も
このツー・ファイブ形態でアドリブをとるのが一般的です。
が、案の定・・予測はしていましたが・・ウェスはDナチュラルの音(F-DORIANの長6度の音
=特性音)を多用しており、まさにこのDナチュラルの音こそ[ドリアンスケール]として特徴付け
られるものである。
(まぁ、Bb7の3度の音と解釈してしまえば、それまでであるが、アドリブフレーズのラインからは
ドリアンの音、そのように感じられる箇所が多々ある。)
つまり、ウェスはアドリブに入ってから[Fm7-Bb7]のコード進行はとらず[F-DORIAN]のスケール一発
の発想で演奏していたのです。
このD音が頻出することで明らかに音の響きが違いこの3拍子のラテン風のリズムにグルーヴ感
満載に演じたウェスの才能がここに余すなく発揮されて、名演名曲となった。
GIBSON BOY
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