2/5 Wes Montgomery interviewed by Jim Gosa
Jim: 多分、楽譜を覚えるというのはそのような気持ちになった時か、覚えなければならなくなっ た時点で身に付くものなのでしょう。今のところは、あなたの耳と天性が唯一のより所と言 ったところでしょうか。 Wes: その通りだよ。ビッグ・バンドと一緒に演っている仕組みは、例えば・・編曲者は全てのパ ート譜を書かなければならないが、僕は大抵弾いてみせ調子を決めてから彼がイマジネーシ ョンを駆立て僕が好みそうなアレンジに仕立てるって訳なんだ。    それでスタジオに入ると、調子を合わせた後リハーサルなしに直ぐ始めるんだ。「コンボで の4小節のイントロのあと君が2小節、そしてここで2コーラス半を演る」、という風に支 持を与えてくれる。全体の流れを説明され僕が了解すると・・時には1テイクで終わること もある。これで自分のパートとのつながりが理解でき、バックのことに気を取られず自由に インプロヴィゼーション演れるって訳なんだ。 Jim: バックに気を使うことが無くなってこそ、プレイに集中できるということですね。 Wes: 少々無責任な言い方をすれば、もし譜面が読めれば全てを検討した上で色んなアイディアを 採り入れプレイするだろうね。    もちろん、アレンジにも手を出しただろうし・・そう、トラブルをなくすためにも・・僕の 考えと違うものまで採り入れなれけばならないので、かなり厳しい状況になるだろうけど。 聴きながら同時にプレイするというのは、どちらかと言えば負担になることが多いだろうし 気になって集中できずリラックスできないだろうね。・・角から角まで・・全てを把握しな ければならないんだ。 Jim: そうじゃなくても、あなたはうまくいっているじゃないですか。 Wes: あぁ、それが驚くことだね。ストリングスとか・・全ての事が・・上手くいったみたいなん だ。 Jim: ストリングスと演るのは好きですか? それともコンボがいいですか? Wes: そうだね、どちらともいえない・・って言うのが僕の悪い癖なんだけど、どちらをとってみ てもその仕事をするために公平で片寄りの無い姿勢をとろうとしたら、何事においても逆ら えなくなるだろうね。    クラブでも同じことで、プレイする連中はきっとこう言うと思う。「俺はどこどのクラブが 好きだ。セットアップが最高なんだ」ってね。 言いかえれば嫌いなクラブでは真剣に演らないっていうことだけど、なっちゃいないね。 Jim: クラブについてあなた自身はどう思っていますか? あなたにとって演りやすい空間、それ ともファンが集まってくれる所、どうでしょう? Wes: 大事なことは、例えばしもし君がクラブに出演したとすると、先ず何よりも仕事を優先させ ることを頭に、クラブの環境もサウンドのように色々あるということを考えなくちゃいけな い。これらのバランスに一晩中かかることもある。    「俺はこのクラブが、」あるいは「姿勢が気に入らない」、という連中の気が知れないね。 こんなこっちゃバンド・プレイの足をひっぱるだけだ。こんなナンセスは客にとっては全く 迷惑な話しで、お金を払って聴きに来てくれてるんだよ。 「ドラムスの音が聴こえない」とか、「ステージが狭い」などの不満を聴きに来たわけじゃ ないんだ。だから僕は何事も先を見通したうえでやるようにしている。    それが仕事というものだよ、ほんとに。 Jim: 多くのプレイアーが時々忘れていると思うのですが。 Wes: 立派なプレイアーでも自分本意になり客のことは全く頭にないんだ。大事にしなくちゃね。 Jim: 同感です。お客様が入場料、あるいは1〜2ドルの飲物代を支払うということではなく、真 に音楽を聴きに来られているのですから。 Wes: そう、コミュニケーションなんだ。何かを伝えようとするなら、最善を尽くすべきだろう。 Jim: それをコミュニケートできなかったとして、彼等はクラブ側に押し付けるんですね。 Wes: そういったところだ。僕の知ってる奴もステージに上る前に1〜2杯引っ掛けるのがいるが いいことじゃないよ。    客の前でプレイする心構えがないんだ。僕の場合客が来るからこそ大事にするが、つい緊張 してしまってね。 Jim: あなたは上がり症なんですか? Wes: あぁ、そうなんだ。5年ぐらい前まで結構コンサートがあって、大勢の観客の前に出ると全 てのことが僕から抜けていくような感じがするんだ。平常心が無くなってしまうと言うか、 集中できなくて・・まあ、そのうち克服できるだろうがね。  Jim: みんながコンサートやクラブであなたが温かみのある好人物であると知ったら、きっとあな たも彼等の温かさを感じ不安にも打ち勝つことができると思います。 Wes: なるほど。でも反面このプレッシャーがいいことでもあるがね。 Jim: えぇ、麻薬か何かによるものではなく、自然な緊張感からのものは健全な精神状態からくる ものです。    酒や薬などに溺れれば精神的にも肉体的にも悪影響を及ぼすだけではなく、その人自身を狂 わせてしまう事になります。    そのようなトラップ状態に陥るという事は非常に嘆かわしいことですね。 Wes: 全くそのとおり、落とし穴なんだ。誰にでもある人生の落とし穴だね。 Jim: 今まで築いてきたキャリアが酒と薬のため、一変に信用がなくなる訳です。そればかりか、 それはそのひと個人の問題だけではなく音楽界全体に影響してしまいますが、ビジネスマン の場合ジャンキー(麻薬中毒患者)がいても他のビジネス業界の全ても悪いとはなりません。 Wes: とかく世間じゃ音楽界は偏見視されがちで、プレイアーが悪ければ音楽界も悪いと見られる からね。 Jim: そのように見られるのが実に憂鬱です。不幸にも世間は個人的な問題として扱ってくれない ことが、よけいに評判を悪くしているということです。 Wes: 世間じゃ、悪い事はすぐジャズに結び付けてしまうが、間違ってるよ。まぁ、多少否めない こともあるが、ジャズだけではないはずだ。一部に悪い奴がいたからといってジャズ・ミュ ージシャン全部がジャンキーってことにはならないよ。