3/5 Wes Montgomery interviewed by Jim Gosa
Jim: いずれにせよ、世間は一般的な事として考えてしまう傾向にあるようですね。    知っていると思いますが、12年ほど前・・ジャズ・ミュージシャンはヤギのような髭をはや し、変な帽子を被って品の良くない会話ばかりしていると見られていましたよね。でもそう じゃなく、教養があり礼儀正しく温かい心の持ち主が、個々の才能によりジャズ・ミュージ シャンになった人も沢山いるということ。あなたのいうほんの一部の悪い事がジャズ界全体 に悪い影響を及ぼしていると言うのは、実に残念なことです。    ところで、あなた自身のことを話してくれません? インディアナポリスでのことから、有 名ジャズ・ミュージシャンになるまでの数々の苦労話か何かを。 Wes: 人は生涯のある期間一定の仕事をするが、僕は自分のしたい事を早い時期に決めたけど先の 事まで考えていた訳じゃない。    昼間は誰しも同じ仕事をしていたが夜は運良くバンド・マンとして好きな仕事にも就けた。 そんなインディアナポリスでのある晩、キャノンボール、レニー・トリスターノ、それに大 物のカウント・ベイシ等のビッグ・コンサートがあったんだ。    当時僕は3つの仕事をしていたが、連中はコンサートを終え一晩中演っているクラブ (訳注: "ミサイル・ルーム" ) に遊びにきたんで、一緒にジャムったんだ。 僕はキャノンボールと演ったんだが、彼が「レコードを作る気はあるのか?」と聞いてきた ので、当然だよと答えたら「俺のレコード会社を紹介するから」と言われたのが、リヴァー サイドだったんだ。 3日後、オリン・キープニュースから電話があって「キャノンボールが熱心に君のことを薦 めるもんで」といいながら、僕のこともよく知らないのにレコーディングしようって言うん だ。結局それが僕の最初のレコードとなった《ウェス・モンゴメリ・トリオ》でね、リヴァ ーサイドには5年 (訳注: 足掛け5年) いたが年に3枚 (訳注: リヴァーサイドで13枚、そ の他で4枚) 出したよ。     Jim: あなたがインディアナポリスにいた頃、兄弟たちは既に西海岸で活動していたんですよね。 Wes: そう "マスターサウンズ" を結成し、モンクがベース、バディはヴァイブ (彼はピアノも演 るがこの時はリチャード・クラブトゥリーが弾いていた) そして、ベニィ・バースがドラム スだった。    僕は自分のファースト・アルバム (訳注: リヴァーサイドのこと) とともにレコード業界へ 入ったんだがね。 Jim: そして昼間の仕事を辞めたんですね。 Wes: そうじゃない。2枚目のアルバムを録るのにNYへ行く事になり、その時は休暇をとっただ けなんだ。それから辞めて兄弟たちで "モンゴメリ・ブラザーズ" を結成し、カリフォルニ アへ行ったんだ。 Jim: サン・フランシスコですか? Wes: そう、2年ほど活動したが、みんなもう忘れているんじゃないのかな。 Jim: 覚えていますよ。私はシスコであなた達を観ました。 Wes: よく "マスターサウンズ" と演っていたと勘違いしている人がいるんだ。 Jim: あなたがプロになる以前、既に "マスターサウンズ" は売れていましたよね。 Wes: その通り、本当に素晴らしいグループだった。僕も好きだったね。 Jim:  "MJQ" にも劣らないグループでしたが、フェンダーのベースだけが違っていましたね。 Wes: そう、確かに。同じ楽器編成なんだけど、モンクがヴァイブじゃなくベースだった。 (訳注: 両リーダが担当する楽器の違いを言っている) それから、 "モンゴメリ・ブラザー    ズ" はやむなく解散に追込まれてしまったがね。東海岸へも遠征したし、最初の仕事は1千    マイル(1600Km)も移動したことがあったよ。 Jim: 新しいグループを結成するとき、必ず問題になるんですね。 Wes: そうだね。 Jim: 仕事について話していただけます? ただプレイするというだけでなくゲットするという点    について。 Wes: 仕事を請け続けるうえで大事なことは、多く出演して知ってもらうということなんだ。    当時、僕はリヴァーサイドと契約していたが、同時に "モンゴメリ・ブラザーズ" として (    訳注: ファンタジィ) も契約していた。お互い競い合っていたが、助け合うということは無    かったね。    知ってのとおりリヴァーサイドも・・ "モンゴメリ・ブラザーズ" とは止めてくれ・・とは    一切言わなかったよ。  Jim: あなたは昼間の仕事を辞めてジャズ一本で稼ごうとした時、不安に思ったり疑問に感じたこ    とがありましたか? Wes: いつも不安に思ってるよ。というのは、音楽界だけでいうと成功している人もいれば報われ    ない人も大勢見てきたが、たんに才能だけの問題じゃないと思う。    チャンスがあるか無いか、それに・・。 Jim: ・・どう掴むかということですね。 Wes: そう。それにいつもあるわけじゃないから・・そう言う意味では僕の場合チャンスすらなか    ったね。 Jim: 確かにあなたの言うとおり、才能だけではどうすることもできません。 Wes: ハリウッドの映画スターみたいなもんだよ。 "コネ" が無ければどうしようもないんだ。 Jim: そんな彼等がこのロスで20年、ストゥリート (訳注: 街頭ミュージシャン) 演ってもチャン    スは無いもんですよ。 Wes: だろうね。