4/5 Wes Montgomery interviewed by Jim Gosa
Jim: ウェス、ビル・エヴァンスが2〜3週間前、丁度このマイクの前でこういってました。    「コルトレーンとキャノンボールも同じグループで、マイルスと演ったときの事なんですが その頃のジャズ界はいわゆる "新人なぶり" といった風潮があり、外れたことを演らせてお いて、彼等は "ビル・エヴァンスをもっと連れて来いよ、面白いだろ?" と遊ぶんです」、 とふざけたものなんです。    そんな陰口を聞かされて、ビルは勇気をだして抗議したそうですが、それ以来相手にしなか ったので人間として、アーティストとして成長出来たと思うのです。    あなたの話しに戻りましょう。クリード・テイラーとヴァーヴ・レコードがどうしてこの2 〜3年に並外れたアルバムをプロデュースし、ジャズを商業的に成功へと導いたのか話して ください。    ロックでは新しい成功が無くともアーティストには多くの報酬をもたらしていますよね。  Wes: 僕の考えじゃ、音楽はあくまで音楽に過ぎなく、2、3あるいは4つに、あるいは40に分類 されていようとも同じだと思う。やっと解ったことなんだが、レコードは比較できるよう並 べられていてこそ買う人がどんなプレイを求めているのかが理解できるというもので、避け る事の出来ない事実なんだ。商業的に考えればね。    《ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド》《ムーヴィン・ウェス》がそれらによって成功 したものだし、《バンピン》もよく売れたと思うよ。 Jim: 確かに、ロスで数週間ベスト・セラーになったアルバムばかりですね。 Wes: なかでも《・・アウト・オブ・マイ・ヘッド》は特別だったね。 Jim: あれは、現在のところ最も成功したものです。 Wes: そう。それで、どうしてなのか考えてみた。やっぱりアルバムの中に1曲は好まれたものが あるからだと思って、自分でも選んでみるんだが、たとえば《ムーヴィン・ウェス》からだ と〈ウエスト・コースト・ブルーズ〉、別に自分の曲だからと言うんじゃないが、よくでき ていると思うし、《バンピン》だと〈・・レイニィ・デイ〉、それに《ゴーイン・アウト・ オブ・マイ・ヘッド》なら〈オ・モロー〉なんだけど予想はいつも外れっぱなしなんだ。   Jim: 自分で選んでもあまり意味がないと思います。私も今まで結構レコードを扱ってきましたが 当たったことがありません。勿論あなたが言うように何かを選んで買うのですが、売れてる 曲というより自分の好きなものを選びますね。 Wes: いや、何も自分の好きなものを選んでるんじゃなく、商業的に一般受けするものを言ってる んで、どの曲も分かり易くバラエティに富んでいてるところが好きな理由でもあるんだ。 商業的な目的がはっきりとしていたからね。中でもそういう曲にいち番近かったのが〈ボス ・シティ〉で、流行のボサ・ノヴァ風が良かったと思う。 Jim: そして、これからも人気が続くであろうと思います。 Wes: それが〈オ・モロー〉を選んだわけで、同じようにボサ・ノヴァだったからなんだ。本当に いい曲だった。テンポもいいし、何か味わい深い曲だと思わないかい。 Jim: どのような理由でヒットするかというのは分からないものですね。 Wes: あぁ、よくわかるよ。 Jim: 〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉はストレートで良いブルーズ・スウィングをし ていると思いますが、それがどうと言う深い意味はなく、他にもよく似た曲は沢山あるわけ ですから、ヒットを予測するのは不可能といえます。    レコード会社に是非いいたいことがあるのですが、どこのレコード会社の経営者にしろひと つヒットすれば同じような内容のものを3曲ぐらい次のアルバムにも入れるでしょ、またヒ ットするだろうと思って。 Wes: 実際アルバムが出てみてヒットしそうな曲は分かるが、誰かのヒット曲によく似ていると思 う事があるね。    それが賢いやり方だと思うかい?そうじゃないだろ。そりゃ、真相を確かめたわけじゃない から本当のところは分からないけどね。 Jim: よく知っているのはリスナーだけですか。 Wes: そう、受け留めかたの問題であって受け留める方法や好みなんてものは解らないもんだよ。 Jim:  "ティファナ・ブラス" というポップ・バンドをバックに使うのは今では12人以上知ってい ますが、こんな連鎖反応は音楽ビジネスには本当によくないことだと思うのですが。 Wes: 全くだね。 Jim: ハーブ・アルバートも "ティファナ・ブラス" を使ったことで評価を落としてしまい、 "テ ィファナ・ブラス" の方に人気がいってしまった。 Wes: それは言えるね。 Jim: 例えば、47人のミュージシャンが自分のレコーディングでアルバートの真似をしても創作力 には欠けるし、サイドとして演ってもろくにパートもこなせなければ、レコード会社側の想 像力もなくなるでしょう。 Wes: そう、何もアルバートを真似なくとも自分のスタイルで演れることがあるだろう。 Jim: それに、チェット・ベイカーのアメリアッチ (訳注: マリアッチというメキシコ音楽をアメ リカ流に変えたもの) にも言える事ですが、アルバート同様アーティストとしての自分の個 性を他にもっと発揮できたと思うのですが。 Wes: そうだね。 Jim: なのにベイカーがアルバートを真似るなんて最悪ですね。 Wes: 経営者は絶えず流行をみながら、どの専属アーティストに演らせるのかを比べながら確実に 売れるものを出すんだよ。 Jim: 誰もが演らせて欲しいと思ったでしょう。ボサ・ノヴァはそのいい例なんですが、芸術的発 展性からいうと必ずしも高いレベルとは言えないです。解りますよ、経営者もレコードが売 れてこそビジネスなんですから、でもレコード会社は創作力に富み、才能ある献身的な人達 の集まりだと認識しています。 Wes: 確かにね。だけど会社の経営方針に関して言うと僕がヴァーヴと契約したとき、「君はアー ティストとして会社の方針に従いなさい。」そして、「君は今まで多くの仕事をしてきたが 売れるというものではなかった。」と言ったんだ。    もっと商業的な話しをすると、多くのレコード会社が個人のスタイルを尊重しながらにもコ マーシャルなアルバムを作るだろう。 一時はジャズだけだった会社も今は見かけない状況なんだ。  Jim: えぇ、パシフィックがそうなんです。ディク・ボックはリバティに会社を売り渡したあと、 少しはジャズをプロデュースしているが殆どはコマーシャル向けのジャズばかりですね。 Wes: そうなんだ。でもジャズには違いないがね。 Jim: まだ救いようがありますか。 Wes: まぁ、そういう風に変わってきているからね。例えば、ロスではジャズが一般的でそれがレ コードの売れ行きを良くしていることなんだが、東部のほうでは一部のFMやAM局がジャ ズを扱う程度だから廃れるのも当り前なんだ。    もっと関係者が宣伝を流すのと同じぐらい番組を考えて、我々が自由にジャズを演れるよう になれば自然とジャズも解ってくれファンも増えると思うんだ。 Jim: その通りですね。ロックのラジオ番組であなたやバド・シャンクのレコードがつなぎ的にか けられているのを聴くと何を考えているのか解りません。あなたたちはロックはできなくと もジャズ・プレイアーとして立派に成功しているのですからね。 Wes: そうなんだ。 Jim: だけど、ラジオ局は売れているレコードに固執しているんです。 Wes: 何でも出来ればいいんだが、ほとんどがロックからジャズへ転向した連中はもう戻れなく耳 自体が受け付けなくなっているんだ。    ロックの番組で何曲かジャズをかけるのは我々を逆に転向させようと混乱させているんだ。 Jim: なるほど。 Wes: 誰にでも好きなものを聴く権利はあるがその前に全てが公平じゃなくてはいけないと思う。    芸術としてジャズを流してくれたら、多くの人に理解され楽しめること間違いなしなんだが ね。