5/5 Wes Montgomery interviewed by Jim Gosa
Jim: 私は家庭で毎週やっている事があるんです。ジャズをかけたくて家族に問い掛けるのです。 「ジャズを聴きたい?」と聞くと「聴きたくない」とかえってくるが、「これがジャズなん だ」とは言わずとにかくかけるんです。    すると、「これは誰なの」と質問してくるので、「世界で最も素晴らしいピアニスト、ビル ・エヴァンスだよ」と答えると、「これがジャズだなんて信じられない」と聴いてくれるの です。 Wes: 君が「これがジャズなんだ」と言うと、家族は聴きもせず止めてくれっていうかも知れない ね。 Jim: このように多くの人々は聴きもせずに "食わず嫌い" になっているんです。色々と聴いたが ジャズは聴く気にならなかったという信じられない人も中にはいるのですが、聴ける部分も 存在するのです。 Wes: 時々、前衛派というものについて考える事があるが、何が起こっているの?もとの形から何 かが変化し、また別の新しいものへと進化していると思うんだ。音楽的に変化をもたらし、 将来的には何らかの役割を果たすのであろうが、よく解らなくて。     Jim: 解りませんね。何曲か聴いてみましたが理解できません。私は専門に音楽を勉強したわけで はないのでその個人的な考え方まで解りませんがとくに訴えるものは感じませんでしたね。 知的に聴く事ができないのです。 Wes: 仮に僕が素人であっても解らないのは、僕にセンスが無いのかぴったりこないんだ。 他の人が感じる事にどうのこうのとは言わないが明らかに今のミュージシャンは何かを感じ ているんだろう。僕にはサッパリだけどね。 Jim: 個人的に馴染めないのは彼等の社会的なところでなんです。民族的なところも含め怒りや反 発的なものは感じるのですが、私が求める音楽ではないので自然に避けてしまうのです。 Wes: 僕はそこから聴く人それぞれが違うコンセプトを抱くと思うんだ。よく解らないれど、個性 のきつい人や自分で全ての流れを変えたいと思っている人を思い浮かべるね。 Jim: いますぐにでもという感じですか。 Wes: 「俺が全てを変えた人間なんだ」みたいな。 Jim: といっても彼らは自分の事にしろ音楽にしろまだそこまでいってないと思います。 Wes: そう思うよ。ここ2年間、僕が見てきた変化のひとつなんだ。    ところで、君はリーダになりたがっているサイドメンが多い事と、逆に全てを取り仕切りた がるリーダが多いこと知ってるだろ。誰しもそうしたいと思うのは解るが、誰かがサイドメ ンにならないとね・・みんなリーダになりたがるんだ。 Jim: そうですね。先週、私はチャーリー・パーカーにのめり込んでいました。彼に関するものを 毎日聴いたり読んだりするうち感じたことなんですが、音楽を変え音楽に影響を及ぼした人    物が別に世界中にまで火を点けようとしたわけでもなく、他の音楽を隅に追込もうとしたわ    けでもない。 彼等は正しいと思った方向に懸命に取組んだだけなのです。それにパーカーやガレスピィの ように音楽全体を変えようとしたわけでもない。正しいとおもって演ったことが、結果とし て理解されたのです。    恐らく、新しいプレイアー達は変えようと試行錯誤を繰り返すがまだできないのでしょう。 Wes: チャーリー・パーカーも自分を到達させることができなかったと思うんだ。      Jim: それが悲劇なんですね。自分を完成させることができなかったことが。 Wes: でも他のミュージシャンとは比べものにはならないがね。というのはそれほど進んだことを 演っていたからなんだ。実際には進みすぎて、彼が偉大であるとは思われず受入れられなか ったんだね。僕は多くのミュージシャンが前衛派についてこんな風に感じていたと思う。 「チャーリー・パーカーも迷いながら、自分の進むべき道を探し当てるのに何年もかかった    じゃないか」ってね。     Jim: 音楽を変え、この世代の先導者になりたいと思っているミュージシャンを抑えつけることは できません。 Wes: 音楽の中にあまりにも意味のない多くの事を持ち込み過ぎるよね。 Jim: それに正当でないことを演リ過ぎています。 Wes: 連中は正しいと信じているようだが、信じるのも良いが現実が何であるか教えてくれるよ。 Jim: 先ほどの話じゃないですが、ステージに立ったときの自分自身で築いてしまう障害によく似 たことですね。アンプの調整が悪いとかドラムスがうるさ過ぎるとか、全てのことを考えて いたらプレイに集中できなくなってしまう。 Wes: そう、その通りなんだ。僕は楽しい人生を過ごしたい。それが分かれば結構楽しいもんだ。 そう悪いことばかりじゃないからその時は他のことをすればいいんだ。だからステージに上 がるまでにプレイの事に集中させておき、それ以外は練習もしないんだ。何故って、音楽一 本でやって行くつもりも無いし他にもやることがあるからなんだ。    もし僕が音楽だけで生活していたら生活すること自体見失ってしまうことになるから、生活 の一部としてやっているだけなんだ。 Jim: そうですか。音楽はいわば生活を価値あるものにするわけですね。 Wes: そう、単なる趣味だから、それが他の事に邪魔にならないようにしなくてはね。 Jim: 音楽は天職であるまえに、趣味なんですか? Wes: だからこそ、そこから抜けようと心掛けているんだ。音楽を引きずることになればそれが全 てになってしまうから、べつに広く目立たなくてもいいそんな奴がいるな程度でいいんだ。 Jim: ウェス、お話しができ光栄です。あなたの考え方や精神を聞かせていただいた気持ちです。    あなたがこれからどの道に向かって歩き、そして人生と音楽との係わりに何を求めているの かよく解りました。    ジャズ界には誤った考えを持っている人が多いのですが、あなたのように正直な人もいると いう事が分かり安心しました。最後に音楽に関して最終的な目標か何かを考えていますか? まだ演ったことのない何かを・・? Wes: うーん特に無いが、今していることを素直に続けるだけだ。一生懸命にね。プレイしている ときはただ演っているというだけで、何のごまかしもハッタリもしないといことが大事なこ となんだ。 ステージに立てばベストを尽くしプレイするだけで、最終的な目標というのは考えたくない ね。人が目指す方向には色んな道があるが、ひとつを選んで進みたくとも周囲の人に違う道 へと導かれる場合もある。そこに試練があるわけで惑わされず自分の道を選ぶべきなんだ。    僕はあらゆる道で、何にでも順応していきたいね。 Jim: 素晴らしいですね。こうしてあなたとお話しすることができただけで感激です。 どんなに楽しかったか。どの分野でもホンネで温かく話してくれる人はそう滅多にはいませ ん。本当に光栄です。 Wes: とんでもない、ありがとう。