セドリック: でも、それはある者にはいいかも知れないがほんの断片的な比較でしかないじゃない
      か。

ウェス  : その通りだけど、こういった意味もあるんだ。
      例えば、君と僕が同じ知識と考えを持っていたとしても、お互いが習得できる技術的
      なアプローチは違うはずだ。
      で、それら活用できるもの全てを比較すると、たぶん僕の指の方がよりコントロール
      され適応性もあるだろう。そこはいい点なんだけどほんの一部にしか過ぎないんだ。
      たぶん、僕の考えは少し違っていて、みんなと同じくらいの知識でもちょっとばかり
      敏感なんだろう。それに感情も加わっているしね。
      でも、感情をどうやって評価しようっていうんだい。できっこないさ。
      そんなわけで、限界というものがあるはずなんだ。たぶん才能や素質と結びつけて、
      それでよしとしてあまり深く追究しないようにしている連中もいるんだろう。

アイク  : コード・ソロを弾くのに、ラインをプレイしているよね。
      それは練習したんだろうか、それとも自然に出てきたの?

ウェス  : なにも僕が発展させたものではないんだが、まだ完璧じゃなくてね。でも知ってるだ
      ろうけど、そのための練習方法はないんだよ。

アイク  : ただプレイするたびごとに少しずつ巧くになっているのだろうか?

ウェス  : まぁ、必ずしもそうではないが、巧く演る以上にぶち壊している部分もあるからね。
      思いつきはいいんだが、まだこなしきれていないだけさ。
      オクターヴを演り始めた時のことを覚えているよ。16小節ぐらいのソロなら難なくプ
      レイできるんだけど、そのまま続けると指が痙攣して動かなくな ってしまうんだ。
      やめて放しても、指がオクターヴの形のままになっているんだ。
      2コーラスを演ろうとしたら、全部がめちゃくちゃになるだろうしね。こなせるよう
      になれば2〜3コーラスは演れるだろうれど、時間もかかるよね。
      でも、オクターヴを練習したことはないんだ。
      コード・ソロはもっと難しくて、カナダのモントリオールで会ったネルソン・サイモ
      ンはプレイアーがラインを弾くのと同じぐらい速くコードが弾けるんだ。 
      どのように練習したのか、それとも全く練習してないのかは知らないけど。

セドリック: 楽器のことを話題にするが--何年ものあいだ私はギターやアンプを買い換えて置く場
      所に困るぐらい恐怖症になってるんだけど--こちらのミュージシャンの多くがバー・
      ビックアップを使っていて、昔のクリスチャン風のサウンドに凝っている。
      君はどんなギターでも同じサウンドが出せるのかい?

ウェス    : 知っての通り、アンプはそれぞれが違った増幅機能や音飾装置を持っているが、それ
      が僕のエレクトロニクス嫌いの理由の一つでもあるんだ。
      例えばピックアップをコントロールするには抵抗器まで付けることになるだろ。
      ひとつのことを気にしだすと限がなくなるからね。とくにサウンドに凝りだすと、ホ
      ント、 困ったことになるよ。
      自分の求めるサウンドを探し、しかも適度な幅を利かすんだから。
      先ず、自分に合ったギターを見つけ出さなくては、これはアンプよりも大事なことな
      んだ。手に馴染まなくてはならないからね。ピックアップに関してはアンプに繋いで
      からチェックすればいい。
      でも大事なのは楽器に関することだけじゃないんだ。それらに時間をかけることもな
      いし、ピックアップがあれのこれのということばかりいっているようじゃ、目標から
      はどんどん遠ざかってしまうよ。 
      要は、いいものを聴いていいものを創り出すことが先決なんだ。それ以外はあとでや
      ればいいのさ。
      そりぁ、少しはアンプにも気を使っているがやっぱりプレイの方が大事だと思うよ。
      楽器は普通のものばかりだ。特別なものなんて欲しいとも思わないが、手に入る限り
      できるだけ普通なものがいいんだ。
      つまり、落として壊れても誰からでも借りれるからね。もし別注のアンプを使ってい
      てそれを床に落としてしまっにら・・失業だよね。
      誰もがチャーリー・クリスチャンに魅せられているとしても、彼の楽器は故障だらけ
      でコントロールやテールピースがずれ落ち、それをテープか何かでくっ付けたりして
      いたと聞いた事があった。
      そんなことは誰も望まないが、あまりにも可愛そすぎるよね。でもそんな状況でも彼
      のプレイは聴けたんだから。

ジャック : しかし、あらゆる音質が君には重要だという点で、非常にサウンドを意識するプレイ
      アーだと思うんだけど。

ウェス    : あぁ、そうだね。それがいかに大切なことかを説明しよう。
      ある晩アンプの調子が悪くなってしまってね、どんな状況か想像もつかないだろうけ
      ど繋いでみて直ぐ判ったのは、サウンドに響きや深みがないということだった。
      それで全てのラインを何度も何度も弾いてみたが、やっぱり駄目なんだ。
      『無意味な装飾音を入れる』何のために。じゃあ、『何か他のことをしてみる』何の
      ために。これじゃアンプを使う意味がないし、理由もなくプレイしているようなもの
      だ。コードだけでプレイできる訳じゃないし、ずっとそんなふうだった。
            まぁ、素人には違いが解からないだろうね。もし、僕のアンプの調子が悪いままプレ
      イし終った後3人程に尋ねたら、恐らく『素晴らしい! グレイト! 』って言ってただ
            ろうね。違いを聴いてないんだから。
      でも別のステージで巧くできたところを聴いていたら、彼らは違いに気付いただろう
      けどね。
      結局、我々とはサウンドに対しての感じ方が違うので、彼らよりももっと微妙なこと
      へ耳を傾けてしまう。このことが素人にミュージシャンの悩みが解かってもらえない
      理由だと思う。何故って、彼らはプレイすることがないんだよ。
                                                            = Crescend   July 1965= 参考

 
次にウェスに対しての多くの賞賛記事が観られるので順次紹介する。