"ジャスト・ジャズ・ギター" のレヴューでエイドリアン・イングラムは、「驚くことにリズ・セ
クションは、ハロルド・メイバーン、アーサー・ハーパー、ジミー・ラヴレイスのヨーロッパ・ツ
アーで編成されたメンバーではなく、 "ロニィ・スコット・ジャズ・クラブ" へ出演のためにウェ
スが集めた英国人メンバーだった。
この新メンバーはTV番組BBC625では起用されなかったとはいっても、英国最高のピアニス
トの一人、スタン・トレイシはセロニアス・モンク風のロング・ソロで見事に役割を果たし、一方
リック・レアードやロニー・ステファンソンらは真剣にウェスをサポートした。
リスナーにとって最も衝撃的なのは、非常にリラックスしたモンゴメリ・サウンドそのものとそう
した彼の演奏振りであり、彼がいかなることも実に容易かつ自然に演っている点だ。
あらゆるフレーズとリズム的陰影に対して彼は、直感的に伝わるようなブルーズの情感を付与して
いる。
それは以前に聴いたレコードからは事実上一度もなかったものだ。」

Montgomery The Magnificent / Crescendo May, 1965
壮大なるモンゴメリ
 ウェス・モンゴメリ、この非凡なギタリストはロンドンのジャ ズ・シーンに、多大な影饗を与えた。 ロニー・スコット・クラブに行くと、今まで見た事も聞いた事も ないような熱狂的な群衆に出くわす。彼の演奏のピークには、文 字通り歓喜に沸き上がるのである。
魅力あるギター・プレイアーをひとめ観ようと観客の間では、毎晩どのステージを観るかで数通り の選択があるが、だいたいはスウィング色いっぱいの一晩3ステージとも聴き通している。 その観客の多くは、受けた感動を十分に表現する事ができないほど感極まっているようだ。 レイ・デンプシは、「言葉でいい表わせないほど彼のコード・ワークが素晴らしい。何もかもがフ ァンタスティックなんだ。」という。 また、ジョージ・キッシュはこう言っている。「彼は天性の才能がある。僕が今までにもこれから 20年後先にも聴けないようなものを持っている。間の取り方は実に巧くて、曲づくりにおけるコン セプトは最高だよ。聴くたびごとによくなっていくんだ。ウェスはどんな曲でも自分自身でこなし ていくような聰明な男だと思うよ。」 ジム・サリヴァンの言葉にこんな一節があった。「最高の仕事をやってのけたウェスを支えるサポ ータにもその功績を讃えるものであるが、ウェスひとりで十分なんだ。 彼はただそこに座ってプレイし、ひとりで素晴らしい空間を創り上げることができるんだよ。 彼は潔癖な感覚を持っており間違た音を並べたりはしないし、そのテクニックは誰にもマネできな い事なんだ。 彼は自分自身のキャラクターから生まれてくるフィーリングをプレイするだけ。そして、明確なの は聴衆と同じように彼自身をも圧倒してしまっているという事だ。 私は、ウェスの親指のスピードが信じられないが、確かにこの目で観たんだ。」 他のプレイアーらも同様に、「彼のテクニックはレコードでは正確に伝わって来ないんだ。」とい う感想が多く聞かれたが、 ハリィ・ソーサは言う。「彼のプレイに関しては実にグルーヴィだと思うし、人間的にも思ってい たよりもずっと気さくで優れたプレイアーだよ。 でもいかに優れたプレイアーでも、普通はホーンを打ち負かす程のパワーは持っていない、がしか しウェスは違ったね。」