ジャズギターの変遷
1920年代初期、ジャズとダンス・バンドの しかし、逆説的に言われている革新の中心と
世界において、最も注目させられるものとして なった人物に、ベルギー人のジャンゴ・ライン
バンジョーの鳴り響く音があった。 ハルトが掲げられる。
しかし、それはまだ大衆音楽として認められる 彼のプレイは"ジプシーの血筋"による、華麗
ことなく、ドラマーはテンプル・ブロックでパ ではあるがどことなく哀愁をおびており、しか
タパタとヴォーカリストはハンディ・サイズの もドラマチックに色濃く反映されている。
メガフォンを通して小声で唄っていた時代のこ 特にブルーズの即興演奏では、デルタ・カント
とであった。 リよりもカマルグ(フランス南部のカントリ)
ギターもこういった類のアンサンブルの中の一 によりちかいようなサウンドであり、それが彼
つで殆ど聴こえることがなかったが、ただブル の持味とされるジャズ・ギター・プレイの領域
ーズ・ギターは20世紀始まって以来ずっと活躍 の広さである。
し、初期のニューオリンズ・バンドのいくつか レコードとして聴ける中で、初めてギターをア
で使われていたと言うのも事実である。 ンプに接したのはエディ・ダーハムであったが
その後オクラホマの若きミュージシャン、チャ
そのような状況も、マイクの出現とチューバ ーリー・クリスチャンに最も影響を及ぼした。
に変わるコントラバスにより、ジャズ・バンド しかも、エレクトリカルに増幅されたギターに
のギタリストも徐々にソロが演れるようになっ そのボキャブラリーやステイタス、それにニュ
てきた。勿論、まだアンプのない時代でスティ ー・ファンクションを植えつけ第一人者となっ
ール弦を使ったアコースティック・ギターでの たのはクリスチャンであった。
ことである。 彼はギター・トーンの古いコンセプションを捨
この頃、最も隆盛を極めた2人にロニー・ジョ て自分なりのアンプリファイド・サウンドを築
ンソンとエディ・ラングがいた。ジョンソンは き、ソロ・プレイにおいてはサキソフォニスト
本来ブルーズ・プレイヤーであったがルイ・ア のプレイに相通じるものを伺わせた。
ームストロングやデューク・エリントンとのレ それは、レスター・ヤングに若干似ており、後
コーディングを通して腕前を上げたミュージシ のジャズ革新の前兆となりえるなんらかの要素
ャンであった。 を含むものであった。事実、彼は16分音符から
イタリア系アメリカ人のラングはフィラデルフ 成るシングル・ラインのスタイルを形成し、そ
ィアで育ちニューヨーク・セッション・マンと れがモダン・ジャズ・ギター・プレイの基礎と
して1933年の亡くなるまで当地で過ごした。 なったのである。
ラングのサウンドは幻想的でシンプルで、その
シングル・トーンは繊細で洗練され尽くされて =The Genius Of Wes Montgomery=
いた。 ライナー・ノーツ参考
このように、2人のミュージシャンは1930年代
のジャズ・ギタリスト達に多くの影響を及ぼし
た。その中でも際立ったギタリストに、テディ
・バンや気ままなファッツ・ウォーラーの伴奏
を努めたアル・ケイシィなどがいた。
|