ウェスへの再インタヴュー
1961年、ウェスへのインタヴューで、ラルフ・グリーソンは次のように回想する。
『ウェスに話しかけることはたやすいが、マイクを意識させると別人になるんだ。だから、気付かれず
録るために私のリビングに隠しマイクをセットする、というアイディアを思いつかなかったことに後悔
している』。
1963年、ラルフ・グリーソンは61年のインタヴューが納得のできるものでなかったため、再びインタヴ
ューを行なっている。
しかし、内容的に61年と同じインタヴュー記事が含まれているので、その部分を削除し記載することと
する。尚、付記すれば"ギター・プレイヤー誌"で（その他にも古くは "ジャズ・ギタリスト／ジャズラ
イフ誌 "や《Wes & Friends / Milestone M-47013 》のライナー・ノーツ）掲載の原稿は63年要約され
たものである。
この時に録ったインタヴューでは、私自身も 彼はいつも、15年前はもっと上手く弾けたとい
気が付かなかったことが明らかにされている。 っていた。そして彼はどのアンプからも自分の
ウェスは自分のプレイに関して大きな不安を抱 好むサウンドが得られなかったらしく、何千ド
いており、夜ごとソロの順がくると思うように ルもの大金をエレクトロニクスに注ぎ込んだ。
弾けなくなるといっていた。 それは、プロとして活躍してからいま現在にい
コルトレーンに仕事を誘われたときも、自分の たる総てと言うのには私には想像もつかない話
実力に自信がなかったらしく、それは何も金銭 である。
の問題ではなくその分野で思うように発揮でき 彼のフェンダー製アンプに対する注文や、他の
るとは想像すらできなかったからである。 関係者はそのことできっと振り回された事であ
ろう。
◆あなたはギターで何をしたいのですか？又ど ◆今までにセゴヴィアのようなクラシック・ギ
の様な方向に進みたいのですか？ タリストに会ったことがありますか？
★そのことに関して何度も考えてきたが、僕の ★会ったことはないが会いたいとも思わない。
能力には限りがあるんだ。オクターヴ奏法も というのは我々の存在を脅かすからね。
偶然の一致で思いついたものなんだが、他に ギターに違いがあるわけじゃないけど、余り
も試みていることがある。 にも多くのことを演ってのけるんだ。
例えば、オクターヴを使ってピアノのブロッ もし、君がクラシックを聴いたあと我々と比
ク・コードのような弾き方とか、やるべきこ 較したら、『何を演ろうとしているんだ？ず
とはたくさんあるが、それぞれの分野は独立 いぶん違うじゃないか！』、とでも言いたく
しているので、前にも言ったようにあらゆる なるだろね。
テクニックを磨くにはすごく時間がかかるっ 彼等はそういったことでプレッシャーをかけ
てことなんだ。 てくるかも知れないがそんな権利は誰にもな
例えばメロディクなコード弾きができるまで いと思うよ。
に、どれほどの時間がかかるのか僕には全く まぁ、僕も逆の立場なら同じように見えるん
解からない。以前、僕はオクターヴをプレイ だろうけどね。しかし、クラシック・プレイ
する度に頭が痛くなってね、というのも余分 ヤーも本当にいいジャズ・プレイヤーに対し
な緊張からなんだけど、プレイが終わるとな ては認めざるを得ない筈だよ。
んともなくなるんだ。
さぁ、どうしてか解からないが習慣みたいに ◆ギターってそんなに魅力があるのですか？
なっていたようだ。しかし、それが逆に僕を ★勿論だよ。だが昔ほどではないが…僕がハン
刺激していい方向へ前進させてくれたという プと一緒に演っていたときが最高のフィーリ
訳なんだ。 ングを持っており、率直に自分のスタイルで
今はそんな極端なことにはならないが、緊張 弾いていたと思うんだ。
が起こっても暫くすると和らぐがね。何故っ というのは、周りを気にせず自分なりのやり
て？、そりゃ慣れてしまったからだよ。 方に専念できたからなんだ。
でも君は、今の僕に対してほんの少しだけス
タイルを変えただけと思うかも知れないが、
遊んでたわけじゃないんだ。だからよく『あ
なたのギター・スタイルを完成させたら？』
といわれるんだけどもうトシだよ。
◆あなたの性格からいってフレディ・グリーン（カウント・ベイシー楽団のギタリスト）のようなコー
ドをメインとしたプレイはどのように思いますか？
★まぁ、それもいいが僕はたくさんのコードを知らないし、もし知っていたらどこかの楽団にでも入っ
ていただろうけどね。
彼はただコードを弾いていたんじゃなく、コードをプレイしていたんだが、それは僕の目指すものじ
ゃない。
僕は何のトラブルもなくあるラインから別のラインへ移ることができる。例えばメロディ・ラインや
カウンター・ポイント或いは他の楽器とユニゾン・ラインをとろうとするなら、ある程度まで弾いて
休みそしてフレーズやコードを弾く、場合によってはオクターヴ奏法などもとりいれ色んなバリエー
ションを持つことができるんだ。
でも一番重要なことは、それらを自分でコントロールができるかということで、僕が気にしているの
は絶えずフィーリングを失ってはいけないということなんだ。多くのミュージシャンがプレイ中にフ
ィーリングを無くしそれを取り戻そうとする、その変化がはっきりと判るのは残念なことだ。
◆最近ギターを弾く人が少なくなってきた原因 ◆まるでプール・ゲームをするようなものです
はどうしてだと思いますか？ ね？
★つまりビギナーがギターに興味を持って10ド ★そのほうなら僕もちょっとしたプール・プレ
ルか12ドルぐらいのギターを買って練習して イヤー（ビリヤードが彼の唯一の趣味）だけ
みると言うことになると、触ってから１〜２ どね。
週間すると指の先にピンが刺さっているよう まぁ、ギターという楽器はそう簡単には扱え
な痛みに襲われるんだ。 ないものでね、一般にビギナーは上手いプレ
そこで止めると痛みは治るが、殆どの人がこ イヤーのテクニックは見習おうとするが、キ
れを乗り切らなければ上達できないと言うこ ャリアまで学ぼうとはしないだろ、だから簡
とが判ってないんだよ。 単なラインすらできなくて落ち込んでしまう
そして実際弾くにあたって考えなくちゃいけ んだ。
ないのは何にでも挑戦しなければならないん 努力して演って見せると言うんだけど、半年
だが、いかに優れた先生でも総ては教え切れ たってもできないということが判ってくると
ないから、そこは自分で積極的に練習しなけ 自分は駄目な奴だと言う気になってしまう。
れば駄目だよ。 本当の意味でのプレイヤーを目標に持ってる
メロディ・ラインやコードが弾けるためには 奴は、できるようになるまで練習することを
何日間もかけなれればできないこともあるが 全く気にしていないんだ。解かるだろ。
しかし、自分の未熟なところも考えて弾かな こうすればビギナーも自分の練習の中にちょ
ければならないこともある。例えば、スラー っとした違いを見つけ、わずかでもインスピ
で上の音をならしたいならあらかじめその箇 レーションが展開し上達するのがはっきりと
所を覚えておいてからプレイするようにすれ 解かるんだ。
ばいいと言うことだよ。 もっとも大きな問題は、どうやって上手くな
こうしたことがとても大事なことだから、全 るかということなんだが他人のプレイを聴く
く上手くいかなれば落ち込んでしまうだろう とみんな自分より上手くおもえて面白くない
ね。 よね。
そのうち誰かが、『どうしてやり遂げてしま
わないんだ。何もできてないじゃないか』、
と言い出すがでもそんなこと言われてもしょ
うがないさ、とにかく上手くなるまでわね。
結局、誰も援けてくれないんだ。自分でやる
しかないんだよ。まぁ、初めは援けてくれる
人もいないがある程度までやれば援けてくれ
る人がいる事に気づくだろう。
＝Guiter Player Jul./Aug.1973＝参考
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