三十輻共一轂
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三十本のやが、ともに一つの轂(こしき)についている。
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輻
や。車の轂(こしき)と外輪との間をつらねささえる木。車のや。
轂
「車+音符殻コク(かたい外わく)の略体」。真ん中に心棒をとおす穴があり、周囲のわくがかたくしまって、殻状をしている車のこしきのこと。
当其無有車之用
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その(中心の)無いのに当たって、(はじめて)車の用いようがある。
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当
當は「田+音符尚ショウ」。尚は、窓から空気のたちのぼるさまで、上と同系。ここでは単なる音符にすぎない。當は、田畑の売買や替え地をする際、それに相当する他の地の面積をぴたりと引きあてて、取り引きをすること。また、該当する(わく組みがぴったりあてはまる)意から、当然そうなるはずであるという気持ちをあらわすことばとなった。
埏埴以為器
当其無有器之用
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粘土をこねのばして、もって器を為す。その無いところに当たって、(はじめて)器の用いようがある。
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埏
不明。「土+廷」の意味と推察する。
【廷】は左側の部分(音テイ)は、人がまっすぐたつ姿を描き、その伸びたすねの所を一印で示した指事文字。廷はそれを音符とし、廴(のばす)を加えた字で、まっすぐな平面が広く伸びたにわ。
埴
「土+音符直(まっすぐたてる)」で、草木の苗を植えてふやすのに用いる水持ちのよい粘土。また、土器や陶器をつくるのに用いる。
三十輻共一轂 当其無有車之用
埏埴以為器 当其無有器之用
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三十本のやが、ともに一つの轂(こしき)についている。その(中心の)無いのに当たって、(はじめて)車の用いようがある。粘土をこねのばして、もって器を為す。その無いところに当たって、(はじめて)器の用いようがある。
鑿戸牖以為室
当其無有室之用
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戸口や明かりとりのまどの穴をつくって、もって室を為す。
その無いところに当たって、(はじめて)室の用いようがある。
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鑿
上部の字(音サク)は「ざくざくとして不斉一なさまをあらわすしるし+つきこむしるし+臼(うす)+殳(動詞の記号)」の会意文字で、きねを臼ウスにさしこんで、ざくざくと米をつくことをあらわす。鑿はそれを音符とし、金を加えた字で、金属ののみをさしこんで、ざくざくと穴をほること。
牖
甫は、博(開く、広がる)の意を示す。牖は「片(いた)+戸+甫」。板で小さい戸型のまどをつくり、開いて明かりをとることを示す。壁を抜いて作った小さい明かりとりのまど。
故有之以為利
無之以為用
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故に、これが有って、もって利を為すようでも、これが無くて、もって用を為すものだ。
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利
「禾(いね)+刀」。稲束を鋭い刃物でさっと切ることを示す。一説に畑をすいて水はけや通風をよくすることをあらわし、刀はここではすきを示す。すらりと通り、支障がない意を含む。転じて、刃がすらりと通る(よく切れる)、事が都合よく運ぶ意となる。
鑿戸牖以為室 当其無有室之用
故有之以為利 無之以為用
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戸口や明かりとりのまどの穴をつくって、もって室を為す。
その無いところに当たって、(はじめて)室の用いようがある。故に、これが有って、もって利を為すようでも、これが無くて、もって用を為すものだ。
▽ ちょっとシンプルな解釈!? ▽
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三十輻共一轂 当其無有車之用
埏埴以為器 当其無有器之用
鑿戸牖以為室 当其無有室之用
故有之以為利 無之以為用
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三十本のやが、ともに一つの轂(こしき)についている。その(中心の)無いのに当たって、(はじめて)車の用いようがある。粘土をこねのばして、もって器を為す。その無いところに当たって、(はじめて)器の用いようがある。戸口や明かりとりのまどの穴をつくって、もって室を為す。
その無いところに当たって、(はじめて)室の用いようがある。故に、これが有って、もって利を為すようでも、これが無くて、もって用を為すものだ。
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