字源的アプローチによる 新解釈

 

はじめにお読みください


 


 

                  『老子』 第四十五章


大成若缺
其用不幣

大いに完成したものは、どこかがかけているかのようだが、それを用いても、破損することはない。





缺は「缶(ほとぎ、土器)+音符夬」。夬とは、コ型のくぼみに手をかけてえぐるさまで、抉(えぐる)の原字。缺は土器がコ型にかけて穴のあくことを示す。



敝の字の左側の部分は「巾(ぬの)+八印二つ」の会意文字で、八印は左右両側にわける意を含む。切りわけた布のこと。敝ヘイは、破って切りわける意。幣は「巾(ぬの)+音符敝」で、所用に応じて左右にわけてたらし、または、二枚に切りわけた布のこと。




大盈若沖
其用不窮

大いに満ち溢れているものは、どこかで突き当たるかのようだが、それを用いても、いつまでもつっかえることがない。





「水+音符中(なか、片よらない、中和)」。
むなしくする。むなしい。心をむなしくする。また、中がむなしい。
すっとまっすぐに高くあがる。つきあたる。



「穴(あな)+音符躬キュウ(かがむ、曲げる)」で、曲がりくねって先がつかえた穴。



 

大成若缺 其用不幣
大盈若沖 其用不窮


*
大いに完成したものは、どこかがかけているかのようだが、それを用いても、破損することはない。大いに満ち溢れているものは、どこかで突き当たるかのようだが、それを用いても、いつまでもつっかえることがない。



 


大直若屈
大巧若拙
大辨若訥

大いに真っ直ぐのものは、屈折しているかのようであり、大いに器用なものは、つたないかのようであり、
大いに雄弁なものは、口下手であるかのようである。





右側の字(音コウ)は、曲線が上につかえたさまで、細かく曲折する意を含む。巧はそれを音符とし、工を加えたもの。
たくみ。細工や技術がじょうずであるさま。手のこんだわざ。



出は、足が凵印の線からでたさまで、標準線より前にでたこと。逆に、後ろにでたのを屈という。拙は「手+音符出」で、標準より後ろにさがって見劣りすること。
つたない。見劣りがする。まずい。


辨弁
辨は「辛(刃物)二つ+刀」
理屈めいた議論をする。わける。わかつ。わきまえる。けじめをつけてわける。


「言+音符内(中にこもる)」。
話し方がなめらかでない。どもりである。口ごもる。にぶい。



 


躁勝寒
静勝熱
清静為天下正

さわぐと寒さに勝ち、静かだと熱さに勝つ。清らかで静かであれば、天下を正すようになる。





右側の字(音ソウ)は、がやがやさわぐ、せかせかしてあせるとの意。躁はそれを音符とし、足を加えた字。



出は、足が凵印の線からでたさまで、標準線より前にでたこと。逆に、後ろにでたのを屈という。拙は「手+音符出」で、標準より後ろにさがって見劣りすること。
つたない(ツタナシ)。見劣りがする。まずい。



「一+止(あし)」で、足が目標の線めがけてまっすぐに進むさまを示す。征(まっすぐに進む)の原字。
ただす。まっすぐにする。また、誤りを道理にあうように直す。



大直若屈 大巧若拙 大辯若訥
躁勝寒 静勝熱 清静為天下正


*
大いに真っ直ぐのものは、屈折しているかのようであり、大いに器用なものは、つたないかのようであり、 大いに雄弁なものは、口下手であるかのようである。さわぐと寒さに勝ち、静かだと熱さに勝つ。清らかで静かであれば、天下を正すようになる。




 

 

 

 

▽ ちょっとシンプルな解釈!? ▽

大成若缺 其用不幣
大盈若沖 其用不窮
大直若屈 大巧若拙 大辯若訥
躁勝寒 静勝熱 清静為天下正


大いに完成したものは、どこかがかけているかのようだが、それを用いても、破損することはない。大いに満ち溢れているものは、どこかで突き当たるかのようだが、それを用いても、いつまでもつっかえることがない。大いに真っ直ぐのものは、屈折しているかのようであり、大いに器用なものは、つたないかのようであり、 大いに雄弁なものは、口下手であるかのようである。さわぐと寒さに勝ち、静かだと熱さに勝つ。清らかで静かであれば、天下を正すようになる。




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