字源的アプローチによる 新解釈

 

はじめにお読みください


 


 

                  『老子』 第六十四章


其安易持
其未兆易謀

そのじっと落ち着いているうちは、持続しやすい。そのいまだ兆しがあらわれないうちは、手をうちやすい。





「宀(やね)+女」で、女性を家の中に落ち着かせたさま。



亀甲キッコウ・獣骨がぱんと割れてできたひびを描いたもの。ひび割れの形を占いのしるしに用い、それから兆候の意を派生する。兆は、二つに割れる意を含み、挑発の挑(二つに仲をさく)・桃(ぱんと二つに割れるもも)・眺望の眺(左右両方をながめる)などに音符として含まれる。
きざす。きざし。そうなりそうな勢いがあらわれる。物事のおこりはじめ。



某は、楳(=梅)の原字で、もと、うめのことであるが、暗くてよくわからない、の意に転用される。謀は「言+音符某」で、よくわからない先のことをことばで相談すること。
はかる。はかりごと。わからない先のことをどうするか考える。うつ手をさぐる。また、その計画。




其脆易泮
其微易散
為之於未有
治之於未乱

そのもろいうちは、分かれ易く、
その微細なうちは、分散し易い。
まだなんでもないうちに、これを為せば、まだ乱れないうちに、これは治まる。




「肉+音符絶(ふっつりときれる)の略体」が本字。
もろい(モロシ)。ぽろりとこわれやすい。



「水+音符右の字」で、とける。わかれる。つつみ。



其安易持 其未兆易謀
其脆易泮 其微易散
為之於未有 治之於未乱


*
そのじっと落ち着いているうちは、持続しやすい。そのいまだ兆しがあらわれないうちは、手をうちやすい。そのもろいうちは、分かれ易く、 その微細なうちは、分散し易い。 まだなんでもないうちに、これを為せば、まだ乱れないうちに、これは治まる。



 


合抱之木
生於毫末

ひとかかえの大木も、毛ほどの細さのものから生える。





【合抱】
ひとかかえの太さ。また、それほどの大木。


【毫末】
毛の先端。ほんのわずかであること。



九層之台
起於累土
千里之行
始於足下

九層もの台地も、土を積み重ねて出来上がる。
千里の旅行も、足元(の一歩)から始まる。





上部はもと田三つで、ごろごろとつみかさなったさまを描いた象形文字(音ルイ・ライ)。それを音符とし、糸を加えたのが累のもとの字で、糸でつなぐように、つぎつぎと連なってかさなること。




為者敗之
執者失之

為す者は、これをだめにして、
固執する者は、これを失う。





貝は、二つに割れたかいを描いた象形文字。敗は「攴(動詞の記号)+音符貝」で、まとまった物を二つに割ること、または二つに割れること。六朝時代までは、割ることと割れることの発音に区別があった。
やぶる。物事をだめにする。やりそこなう。



「手かせ+人が両手を出してひざまずいた姿」で、すわった人の両手に手かせをはめ、しっかりとつかまえたさまを示す。
とる。手にしっかり握る。



合抱之木 生於毫末
九層之台 起於累土
千里之行 始於足下
為者敗之 執者失之


*
ひとかかえの大木も、毛ほどの細さのものから生える。九層もの台地も、土を積み重ねて出来上がる。 千里の旅行も、足元(の一歩)から始まる。為す者は、これをだめにして、 固執する者は、これを失う。




是故聖人
無為故無敗
無執故無失

是故に聖人は、何もなさないが故に何もだめにせず、固執しないが故に何も失わない。






民之従事
常於幾成而敗之

人民が仕事に従事する時、常に完成に近づいて、これの失敗をしてしまう。





幺二つは、細くかすかな糸を示す。戈は、ほこ。幾は「幺二つ(わずか)+戈(ほこ)+人」で、人の首にもうわずかで、戈の刃が届くさまを示す。もう少し、ちかいなどの意を含む。わずかの幅をともなう意からはしたの数(いくつ)を意味するようになった。




慎終如始
則無敗事

始めのように終わりも慎重にすると、
すなわち、事をだめにすることが無い。





眞(=真)は、欠けめなく充実したこと。愼は「心+音符眞」で、心が欠けめなくすみずみまでゆきとどくこと。



是故聖人 無為故無敗 無執故無失
民之従事 常於幾成而敗之
慎終如始 則無敗事


*
是故に聖人は、何もなさないが故に何もだめにせず、固執しないが故に何も失わない。人民が仕事に従事する時、常に完成に近づいて、これの失敗をしてしまう。始めのように終わりも慎重にすると、 すなわち、事をだめにすることが無い。




 


是以聖人欲不欲
不貴難得之貨

是を以って聖人は、欲をもたないことを欲し、得がたいような財貨を貴いとしない。





「動物を火でやき、かわかしてこちこちにするさま+隹(とり)」。鳥を火であぶることをあらわし、もと燃ネン(もやす)と同系のことば。やけただれる火あぶりのようにつらいことの意から転じて、つらい災害ややりづらい事などをあらわす。


 


学不学
復衆人之所過

学ばないで学び、大衆の人々が過ぎてしまうところをもとにもどらせる。





咼は、上にまるい穴のあいた骨があり、下にその穴にはまりこむ骨のある形で、自由に動く関節を示す象形文字。過は「辶+音符咼」で、両側にゆとりがあって、するするとさわりなく通過すること。勢い余って、行きすぎる意を生じる。



 


以輔万物之自然
而不敢為

こうして万物が自ずとそうなるようになるように力添えをする。しかし、敢て為しているのではない。





甫は、平らな苗床のことで、平らにへばりつく、ぴたりとくっつくの意を含む。圃ホの原字。輔は「車+音符甫」。車にくっつけたそえぎ。
たすける。そばにひたとくっついて力をそえる。



甘は、口の中に含むことをあらわす会意文字で、拑(封じこむ)と同系。敢は、古くは「手+手+/印(払いのける)+音符甘」で、封じこまれた状態を、思い切って手で払いのけること。
あえて。思い切って。はばからずに。



是以聖人欲不欲 不貴難得之貨
学不学 復衆人之所過
以輔万物之自然 而不敢為


*
是を以って聖人は、欲をもたないことを欲し、得がたいような財貨を貴いとしない。学ばないで学び、大衆の人々が過ぎてしまうところをもとにもどらせる。こうして万物が自ずとそうなるようになるように力添えをする。しかし、敢て為しているのではない。




 

 

 

 

▽ ちょっとシンプルな解釈!? ▽

其安易持 其未兆易謀
其脆易泮 其微易散
為之於未有 治之於未乱
合抱之木 生於毫末
九層之台 起於累土
千里之行 始於足下
為者敗之 執者失之
是故聖人 無為故無敗 無執故無失
民之従事 常於幾成而敗之
慎終如始 則無敗事
是以聖人欲不欲 不貴難得之貨
学不学 復衆人之所過
以輔万物之自然 而不敢為


そのじっと落ち着いているうちは、持続しやすい。そのいまだ兆しがあらわれないうちは、手をうちやすい。そのもろいうちは、分かれ易く、 その微細なうちは、分散し易い。 まだなんでもないうちに、これを為せば、まだ乱れないうちに、これは治まる。ひとかかえの大木も、毛ほどの細さのものから生える。九層もの台地も、土を積み重ねて出来上がる。 千里の旅行も、足元(の一歩)から始まる。為す者は、これをだめにして、 固執する者は、これを失う。
是故に聖人は、何もなさないが故に何もだめにせず、固執しないが故に何も失わない。人民が仕事に従事する時、常に完成に近づいて、これの失敗をしてしまう。始めのように終わりも慎重にすると、 すなわち、事をだめにすることが無い。是を以って聖人は、欲をもたないことを欲し、得がたいような財貨を貴いとしない。学ばないで学び、大衆の人々が過ぎてしまうところをもとにもどらせる。こうして万物が自ずとそうなるようになるように力添えをする。しかし、敢て為しているのではない。




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