字源的アプローチによる 新解釈

 

はじめにお読みください


 


 

               『老子』 第七十九章 


和大怨
必有餘怨
安可以為善

大きな怨みを和解させようとしても、必ず余った怨みがあるものだ。(それで)どうして善いことを為したといえようか。





上部の字(音エン)は、人が二人からだを曲げて小さくまるくかがんださま。怨はそれを音符とし、心を加えた字で、心が押し曲げられてかがんだ感じ。いじめられて発散できない残念な気持ちのこと。




是以聖人
執左契
而不責於人

是を以って聖人は、左の約束のわりふをしっかり握って、人を責めるようなことはしない。




上部は棒(|)に彡印のきざみ目をつけたさまに刀を加えた字で、刃できざみ目を入れること。契は、もとそれに大(大の字にたつ人の姿)を合わせて商の始祖をあらわしたが、のち上部の字のかわりに用いる。
わりふ。約束のしるしをきざみ、二つに割って片方ずつ保管し、照合しあって約束を確かめる手形。


【左券】
契約を書いた木の札を二つに割った左半分。左右の一片ずつを契約したそれぞれの人が持ち、後日あわせて証拠とする。『左契(サケイ)』



朿(束ではない)は、先のとがったとげや針を描いた象形文字で、刺シ(さす)の原字。責は「貝(財貨)+音符朿」で、貸借について、とげでさすように、せめさいなむこと。債の原字。



和大怨 必有餘怨 安可以為善
是以聖人 執左契 而不責於人


*
大きな怨みを和解させようとしても、必ず余った怨みがあるものだ。(それで)どうして善いことを為したといえようか。是を以って聖人は、左の約束のわりふをしっかり握って、人を責めるようなことはしない。




有徳司契
無徳司徹

徳の有るものは、約束のわりふを司り、徳の無いものは、税金を司る。





育は「子の逆形+肉」よりなり、お産のとき頭から赤子がうまれるさま。胎内からするりと抜け出ることを示す。また、攴印と彳印は手と足の動作を示す動詞記号。徹は「彳+育+攴」で、するりと抜け出る、抜きとおすなどの動作を示す。
周代の租税の制度。十分の一の税率。また、その税率で租税をとる。




天道無親
常与善人

天道は、(特定のものと)親しむことはない。常に、善人と組する。





辛は、はだ身を刺す鋭いナイフを描いた象形文字。親の左側は薪の原字で、木をナイフで切ったなま木。親はそれを音符とし、見を加えた字で、ナイフで身を切るように身近に接して見ていること。じかに刺激をうける近しい間がらの意。



有徳司契 無徳司徹
天道無親 常与善人


*
徳の有るものは、約束のわりふを司り、徳の無いものは、税金を司る。
天道は、(特定のものと)親しむことはない。常に、善人と組する。



 

 

 

 

▽ ちょっとシンプルな解釈!? ▽

和大怨  必有餘怨  安可以為善
是以聖人 執左契 而不責於人
有徳司契 無徳司徹
天道無親 常与善人


大きな怨みを和解させようとしても、必ず余った怨みがあるものだ。(それで)どうして善いことを為したといえようか。是を以って聖人は、左の約束のわりふをしっかり握って、人を責めるようなことはしない。徳の有るものは、約束のわりふを司り、徳の無いものは、税金を司る。天道は、(特定のものと)親しむことはない。常に、善人と組する。




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