伝言

 

 

 

 

 

 

 

かくも淀みなく流れる麗しき大河
思わずせき止め 写し取る…
それがいったい何の役に立つというのか

「何かの役に立つ」…?
とんでもない! 何の価値もないばかりか
むしろ一種の罪づくりにすぎないのか

けれども、その麗しさはその一瞬でしかない
あまりの美しさにこれを何かに刻まずにはいられないのだ

切り取った一粒の水滴をそっと写し取ったと思うやいなや
水滴は手の中から消えている
それは大河に戻ったのだろうか

残された一枚の水滴の絵を
いつか誰かが見つけてくれるのだろうか

けれど、美しかった瞬(またた)きも
写し取られて刻まれたものの上では色あせて見える

いつかどこかで誰かが見つけ
潤いを与え
あの麗しき大河を思い出してくれるのだろうか