25)場立ち        99.5.1

 4月30日、東京証券取引所の立会場が廃止され、独特の手サインで注文をやりとりする場立ちが姿を消した。 大阪証券取引所では、一足先に97年12月、場立ち=写真=が姿を消しており、株の世界の象徴でもあった風景がなくなってしまった。

 北浜の立会場は私の人生にとっては忘れられないところだ。社会人の第1歩を踏み出した証券界には、わずか4カ月しかいなかったが、研修で場の中をウロウロして、あの喧噪、あの雰囲気を肌で感じた一瞬は忘れられない。転じて新聞社に入って、また経済部記者として立会場に戻ってくるとは思わなかった。

 立会場には、コンピューター取引では決して味わうことのできない人と人とのドラマがある。「大番」「買い占め」など株の世界を描いた小説は大好きだが、コンピューターだけの世界ではドラマにならない。メモと鉛筆を片手にさまよった場の中で、相場観を毎日毎日語ってくれた証券マンからは、今でも年賀状を頂く。きっと、複雑な思いでTVニュースを見ていたことだろう。