25/05/03 Le Puy 雨

 昨日、15: 00パリのリオン駅を出発し、TGVでLyon Part Dieuでローカル線に乗り換えSt Etienneを経てLe Puyへ着いたのが19:40。駅前のホテルに行ってみたが満室だのこと。すぐに見つかるだろうとたかをくって雨で薄暗い街へホテルを探しにでる。5軒目もだめだった。石畳の坂をだいぶ登らなければならないが、一昨年泊まったことのあるGite d'etape de St-Francoisを訪ねてみる。ここも満室だ。翌日は空室があったのでとりあえず予約をする。受付のお嬢さんが”another place"と聞いてくれたときはほっとした。地図を持ってきてくれてGITEを2軒教えてくれる。万一の場合を考えキャンプ地も教えてもたった。2軒目でOKをもらって部屋に落ち着いたのが21:10。部屋代7ユーロ、朝食代3.2ユーロ。おじいさんが案内してくれる。部屋は2段ベッドが2つ。トイレは別。食堂は1階、シャワー室は地下。今回は泊まり場所で何かありそうな予感がする。

 6時過ぎに目が覚める。外は雨が降っている。Le Puyには2年前に来たことがあるので特に感慨はない。地下のシャワー室の一角に干していた洗濯物を取りに行ったついでに雨を確かめに外へ出てみる。やっぱり雨だ。近くで教会の鐘の音が聞こえる。雨の中をカッパを着た青年がパンを抱えてもどってきた。あいさつを交わす。しばらくして、その青年と彼女はリュックを背負って、ポンチョをかぶり出発して行った。彼らの巡礼の旅の無事と成功を祈る。
 われわれはもう一泊ここで泊まり、明日出発だ。3時にカテドラルで2年前の下見のときに友達になったFarvacqueさんご夫妻との再会の時間までGite d'etape de St-Francoisに荷物を預けて街の散策に出かける。雨にぬれた石畳の坂はすべりそうでこわい。目指すは街中心の小山の頂に立っている巨大なマリアの像だ。鉄で出来ていて中は空洞で先端までせまい螺旋階段がついている。Le Puyの街を展望するのにとてもいい。眼下に雨にぬれた赤い屋根屋根が美しい。すぐ近くにとんがった岩山とその先端の教会が目にはいる。
急な長い階段を上がったところにカテドラルがある。入り口のところで左手に長い木の杖を持ち、右手に毛糸の帽子のようなものを持ち、大きな犬をつれた女性が立っていた。近くによると小さな声で歌っているようだ。賛美歌のように聞こえる。物乞いではなさそうだ。すがたは正に巡礼者だ。しばらくすると雨の中を雨具も着けずに立ち去っていった。
 2時半にGite d'etape de St-Francoisに行くと昨夜応対してくれた女性が、もうFarvacqueさんご夫妻が来られているという。Farvacqueさんの宿泊場所は聞いていなかったので驚くやらうれしくなるやら。わたしたち部屋は受付の女性の配慮か、隣室になっていた。GITEはカテドラルの裏手にあり、古びた石造りの建物である。案内されて4階の広間にあがると懐かしい顔がいる。フランス語はもちろんのこと英語の単語もなかなかでてこない。しかし、共通の話題で会話ははづむ。グルーノーブルにお住まいで車で2時間ほどの距離だそうだ。あすは、私たちに同行して歩いてくれるという。そのため、車に自転車を積んで来ていた。今日、雨でなければ車で明日歩くところまで行き、自転車でここまでもどってくるつもりだったとのこと。Farvacqueさん達は一昨年はここLe Puy〜Figec,昨年はFigeac〜Moissacを歩き、来年はMoissac〜St-Jean-Pied-de-Portまで歩く予定だそうだ。
 夕食は"COMMEA LA MAISON"でご馳走になった。店の名前の意味はHouseではなくHomeという意味だと教えてくれる。大きな古い木でできたとても雰囲気のあるお店で料理もワインもデザートもとてもおいしかった。市川さんも妻も満足げである。Farvacqueさんご夫妻が食事中の話題にいろいろ気を使ってくれるのですが、ここでも英語の単語がでてこない。Farvacqueさんがピレネーにつく頃にはフランス語がぺらぺらになっていますよ、となぐさめてくれる。
 外へ出るとまだ雨が降っている。ライトアップされたカテドラルを見上げると、灰色の石と石と石との間に塗られている白との対比がとても美しい。21:10
 明朝7:00からカテドラルで巡礼者のためのミサが行われるとのことで、Farvacqueさんご夫妻とはそこで落ち合うことにしてそれぞれ部屋へ。

26/05/03 Le Puy(7:00)〜St-Privat-D'Allir(14:08) 22km 雨のちくもりのち雨

 外へ出ると雨が止んでいる。部屋を出るまで降っていた雨がうそのようだ。カテドラルの中にはいるともう50人ほどの人が座っている。3分の1ほどの人が巡礼の服装をしている。その中のひとりが台に上がってしゃべっている。フランス語で意味が分からないが、たぶん、巡礼の決意と神への感謝と加護を祈っているのだろう。牧師の説教がつづいているが、天候のことも気になるので15分ほどいて、われわれは出発する。Le Puyの街をでて坂を登りきり、振り返ると思ったより近くに大きなマリアの像と赤い家並みがかすんで見える。
 巡礼路は赤と白のペンキの目印どおり進んで行くと迷うことはない。街をでると牧草地と畑が交互にある。Le Puyの街から峠(1200m)まではなだらかな登りである。2時間ほど歩いたとき、市川さんが遠く前方の山道からFarvacqueさんご夫妻がこちらの方へ来るのを見つける。今日の宿泊地の近くまで自動車で行き、そこからこの近くまで自転車で来てわれわれを迎えてくれたのだ。手袋をしていなかったので手がこごえたそうだ。
ご夫妻は道中にある教会のいわれや古い道具のことなど教えてくれる。奥さんのCatherineさんは花を摘んでわれわれに教えてくれる。「水仙」がフランス語もナルシスでとてもいい匂いがするのをはじめて知った。エスカルゴもつかんでわれわれに見せてくれた。写真の教会の前で昼食をし終わったとき、3人連れの自転車のグループが止まった。ことばはドイツ語だ。
 涼しい気温のせいもあり、3人ともあっけなく峠を超え、予定の時間にSt-Privat-D'AllirのGITEに到着。そこでCatherineさん手作りのケーキをいただく。3時半にFarvacqueさんご夫妻の車を見送る。

27/05/03 St-Privat-D'Allir(8:22)〜Sauges(14:25) 17.5km くもり一時雨 

 早速ミスをしてしまった。前のアベックに気をとられ、彼らが立ち止まったにもかかわらずどんどん進んで行った。左の大木に黄色の×印が一瞬目にはいったにもかかわらずである。結果的には、近道をしたわけだが、巡礼路からはずれRochegudeの教会跡をパスしてしまった。
 きょうは、300m下方のMonistrol-d'Allier(585m)まで下り、そこから1時間半ほどで500m登り、あとは牧草地を3時間ほど進むと本日の宿泊地Sauguesだ。         Monistrol-d'Allierからの登りの途中、道路の左手に大きく切り立って方形状の岩を積み重ねた巨大な岩石に驚かされる。しばらく登ると右手に岩石にへばりついて教会がある。いまも使われているのだろうか?
 牧草地には牛や羊が草を食んでいる。馬もいる。このあたりで出会う犬はいずれも大きい。
 今朝のこともあって、土地の人と出会うと念のため道を聞く。「ドロワ」「ドロワ」と教えてくれる。なんとなく、分かったことにする。道中、出会う巡礼者は大人数のグループは少ない。せいぜい4、5人だ。2人づれはペアが多い。単独行もいる。女性も多い。服装は2、3泊用のリックを背負ったハイキングスタイル。靴は登山靴がおおい。ホタテ貝リュックにくくりつけているひとも見かける。
 きょうははじめてのキャンプ。一昨年、Sauguesのキャンプ場に来た時はとてもにぎわっていたが、いまはシーズン・オフで大部分の施設が閉鎖されていた。食事はキッチン、暖炉のある集会所で3組のグループと食事をともにする。妻は老夫婦と娘さんのグループからきっちりメロンをせしめてきた。フランス語も英語もしゃべれないのになんと言ったのだろう?
 このグループとは、その後、何回と出会い、世話を焼いてくれる。奥さんが車に荷物を積んで走り。娘と父が軽い荷物で巡礼路を歩く愉快な家族である。

28/05/03 Sauges(8:22)〜Le Sauvage(15:07) 19km くもりのち晴れ

 昼前から晴れ間が出てきた。少し遅れがちな妻を市川さんがよくサポートしてくれる。今の時期、牧草地に黄色や白やムラサキそしてピンクの花が咲き乱れてとても美しい。市川さんはしきりに花の写真をとっている。空がはれると巡礼者同士も気分よく挨拶を交わすようになる。出発前に頂いたフランス語、英語の電子辞書が役にたつ。フランス人が翻訳機を取り上げ入力し見せてくれる。
 きょうは、巡礼の道を馬で行っているグループに出会った。どこまで行くのだろう? うらやましさより「たいへんだな。」という気持ちが先にたつ。
 きょうの泊まりは、昨年Farvacqueさんにお世話になったLe SauvageのGITEだ。40分ほど遠回りになるが牧草地の中の石造りの一軒家でとてもすばらしい。この周りにも一昨年来たときには見かけなかった草花が一面咲き乱れている。ただし、ここには食事がなく、かすかに期待していた農作物の販売もなく、わずかなパンを分け合って早めの夕食をすませた。
 9時過ぎの日没までベッドでうとうとしながら放牧地から戻ってくる羊の群れの鈴の音を聞いたり。寝るのに飽きてくると外へ出て日向ぼっこをしたり。夕日の時間まで外にいた。部屋には10人分のベッドがあり清潔に管理されている。各階に暖かいお湯の出るシャワー室、トイレ、洗面室がある。
 例の愉快な家族とも同室になった。

29/05/03 Le Sauvage(8:40)〜St-Alban-Sur-Limagnole(13:15) 15km 晴れ

 森の中に入るといろんな種類の鳥の声が聞こえる。巻き舌のように聞こえると言ったのはだれ?
 距離は15km,高度は1250mから1013mへとなだらかな下り気味の道である。4日目もなると顔見知りの人も多くなる。追いつかれたり追い越したり、その度に挨拶を交わす。
 とうとう聞かれたくない質問にであった。「あなたはクリスチャンですか?」「ノン、仏教徒です」。「なぜ巡礼の道を歩いているのですか?」「スポーツ」と一言答えた。彼女には、日本からなぜ?という疑問が残ったと思う。この巡礼の旅のおわりには『スポーツ』以外の何かが発見できるのでしょうか?
 Alban-Sur-Limagnoleの小さな街をGITEを探して歩いていると、例のおばさんが一人でリュックを担いでいるのにであった。車で早く着いたのだろう。GITEを探していると言うと、街の人に聞いてくれる。フランス語なので分からないが話がとにかく長い。世間話でもしているのだろう。どうも空きベッドのあるGITEはなさそうだ。最後は、彼女の車まで案内して地図を取り出し、自分たちは7kmはど離れたところにあるGITEの泊まるが、車で送ろうかという。明日は下見の時に知り合ったこの街の小さなお城の職員に会う約束があるので、お断りした。
 ホテルも満室だったが、ホテルの主人に頼み込んで自宅の部屋を貸して頂いた。旅にでるとあつかましくなるもんですね。夕食、朝食込み、3人で104ユーロ。

30/05/03 St-Alban-Sur-Limagnole(11:00)〜Aumont-Aubrac(14:12) 晴れ

 Chateauの外庭で待っているとmadame Catherineが車でやってきた。まっすぐにこちらの方にやってくる。顔を覚えてくれているか心配だったが杞憂におわったようだ。なつかしさがこみあげてくる。
 鍵を持ってきて普段はしまっている部屋を明けて見せてくれる。管理状態はあまりよくないようだが2階の部屋でには絵画がかけてあった。「王様の部屋は?」と聞くと、どうも普段は住んでなかったみたい。外に回って案内してくれる。今はないが、巻上げ橋があったことや敵が攻めてきたときにお城の上から油を流すことや城の壁に細長いすきまがありそこから矢を放つことなど、説明をきいていると、まるで、映画の一場面を見ているような気がした。
 このあと、事務室で30分ほどコンピュータを使わせてもらいホームページのはじめてのアップロードができた。この間、市川さんと妻は日本から土産に持っていった折り紙の実演をしている。途中、飲み物をすすめられ、コーヒーとかジュースとか「パ...??」をすすめられ、最後のものによく分からず「ウイ」と言うと、前回も頂いた例の水を入れると濁る強い酒だった。
 きょうは日差しが強い。あまり高低差がないのに汗だくで歩く。
 Aumont-AubracでもGITEは一杯だった。私は今夜の列車でパリまで妻を見送りに行くが市川さんの泊まるところが見つける必要がある。4件目にやっと見つかる。三星で高そうだ。
 夕食までの間、街を散歩する。ここにも、立派な教会がある。牧師さんらしい人をを見かけたので、お願いし、「巡礼の道」通過の証明をもらう。18:00からはじまるミサにも参加した。40分ほどのミサの最後に、牧師さんが、この中に「巡礼の道」を歩いてサンチアゴ・デ・コンポステラまで行く日本人が3人いると(フランスでしたがここだけは分かった)紹介していただき、参加者いっせいに私たちを見て会釈を送ってくれた。別れ際にはわざわざ私たちのところに来て挨拶をしてくれる人もいた。

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