ダウンビート誌の読み物のひとつとして、毎号レオナード・フェザーがひとりのミュージシャン
にスポットを当てブラインドフォールド・テストをしている。
1967年6月号ではウェスが特集になっているので紹介したい。テストの曲については何の情報もあ
たえていないとの記載があった。
WES MONTGOMERY BLINDFOLD TEST / by LEONARD FEATHER
test1:ジョージ・ベンソンの《The Geroge Benson Cookbook/Columbia》より〈Benny's Back〉を
かけて。
「新鮮な曲だね・・オルガンのバック・グラウンドがあるようで・・際立って表にはでず・
・終わりのほうは少しインパクトに欠けるが自然とギター・ソロが浮かびあがっているね。
ジョージ・ベンソンのようなサウンドだね。うーん3ツ星ものだと思うよ。
トロンボーンはアル・グレイ(訳注: 本当はベニー・グリーン)に似ていると思うんだけれど
・・よく判らないな。
メンバーは、バリトン、オルガン、トロンボーン、ギター、エレキ・ベース、そしてドラム
スかな。
君も知っていると思うが、エレキ・ベースは段段とポピュラーになってきていると思う・・
ロックン・ロールの世界から抜け出てジャズ界へとね。
特にこのメロディが気に入ったよ・・新鮮でエキサイトなところはジョージ・ベンソンによ
く似ているよ。多分、彼のプレイだね。」
test2:ローランド・カーク《Here Comes The Whistle Man/Atlantic》より〈Makig Love Afterh-
ours〉をかけて。
「うん!これはローランド・カークのグループだね。
もし彼が使っている二つのホーンを用いて、彼が演っているパートを他の二人に演らせても
全く違ったものになるだろう。同じ楽器でもアプローチが違うということだね。
とにかく彼がポップ・マーケットにも進出するために演ったという意味はよく解るし、いい
ことだと思う。
もし、君がジャズに関して言うならさっき言ったように評価せねばならないが、ジャズ的な
ことばかり言ってもだめなんだ。まあ、彼には3ツ星が妥当だと思うよ。
いいトラックだ・・今のマーケットに受けるものだし・・だから彼に賞賛を贈るよ、3ツ星
が相応しいね。」
test3:ジョー・パス《Simplicity/World Pacific》より〈Sometime Ago〉をかけて。
「これは判らない・・けど綺麗だね。誰が演っているかということよりこの曲に聴きいって
いるから・・美しい!
全ていいね・・メロディも、フレーズも・・それにトーンもいいし、なによりまとまってい
る、文句なしに4ツ星だね。」
test4:グラント・グリーン《The Latin Bit/Blue Note》より〈Blazil〉をかけて。
「勿論スタイルからしてグラント・グリーンだってすぐ判ったよ。ピアノはホレス・シルヴ
ァーの雰囲気だがよく判らない。
この曲のインパクトからすると・・バックがすこし合わないように思うけど・・少し物足り
ないかな。グラントじゃないのかな・・でも、まあいい曲を演っているし、いいリズムだ、
3ツ星ってとこかな。」
test5:スタンレイ・タレンタイン《Joy Ride/Blue Note》より〈A Taste Of Honey〉をかけて。
「オリヴァー・ネルソンのアレンジにスタンレイ・タレンタインのようだか。 (訳注: さす
がオリヴァーは外さないね) 今流行りのものかな?ビック・バンドをバックにフィーチュア
ものって・・それにしてもいいアレンジだね。いい演出で、いいリズムだし、エキサイティ
ングで。
少しブルーズよりだが、ならばジョー・ヘンダーソンの方がいいと思う、というのはジョー
の方がよりジャズっぽいといえるからなんだ。
スタンレイはブルーズ色が濃いんだ。どっちのほうが解りやすいかな・・まあ、レコードが
リリースされているから、彼の努力に対して3ツ星をつけなきゃならないね。
他のメンバに関しては判らないが・・オリヴァー・ネルソンのような感じがするだけで。」
test6:ガボール・ザボ《Gypsy '66/Impulse》より〈Walk On By〉をかけて。
「これは、ガボール、ガボール・・ガボール何て言ったっけ・・ガボール・ザボ!・・そう
だよね。
ユニークなスタイルで・・ちょっと違うんだ・・けど全ての曲がエキサイティングなものだ
とは思わないし、リズム・セクションは特に目を引くものでもないし、全体に何か足りない
ように思う。
ただソロイストとしてのガボールに対しては3ツ星をつけるよ、いや3ツ星半かな。
けど今聴いた曲は格下げの2ツ星。曲名?、〈ウォーク・オン・バイ〉だよ。」
test7:ハワード・ロバーツ《Something's Cookin'/Capitol》より〈Cute〉をかけて。
「このギターはハワード・ロバーツだと思う。とてもいいアレンジだね。誰がアレンジした
かわ判らないが、いいサウンドだね。
ただ長いだけじゃない・・アレンジのポイントを掴んでいるし・・百%出しきっているよう
にみえるけど、上手く調整している。ほんと、4ツ星に匹敵すると思う。
ハワードだとどう説明すればいいのか・・彼の創り出す流れかな・・彼は多くの新しい "流
れ" を創りだすんだ。
その流れはクリーンなものばかりではなく、少し変わった感じのものも持っているからね。
それに少し挑戦的なところもあり・・鋭いラインから複数のラインへと移り、もとのライン
へと戻り、コードも複雑化させている。とても素晴らしいパターンだね。」
レオナード: 君が5ツ星をあげてもいいなと思うレコードはありますか?
ウェス : ギター・アルバムで?それとも全てを含んでのこと?そうだね、今まで2〜3聴いた
ことあるけれど、そのアルバムのタイトルもミュージシャンも分からないんだ。
おかしな話しだろ。
そうだね。特に5ツ星を付けられるレコードはないように思うんだが、そうそうマイ
ルスの《マイルス・スマイルズ/Columbia CL-2601》があったよ。彼の作品は本当に
素晴らしい。
常に新しいことを演っているが、だからといって全力を尽くしているようにも思えな
かったがね。
それにウェイン・ショーターのプレイはまた違うんだ。上手いね。ジョー・ヘンダー
ソンも5ツ星を付けてもいいと思うぐらいの技量を持っている。
というのは、ジョーの演リ方にあると思う。彼とマッコイ・タイナー、エルヴィン・
ジョーンズ、リチャード・デイヴィスなんかがそうだね。
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