《Wes Montgomery & The Wynton Kelly Trio/Maximum Swing: The Unissued 1965 Half Note
Recordings/Resonance HCD-2067》の2枚組CDが11月22日、3枚組LP《Resonance HLP-9067》が
4000枚限定で11月24日にリリースされた。
今回は、直輸入盤はなく日本の代理店キングインターナショナルが日本語解説のブックレットを付
属させリリースしたことで、より分かり易く理解できると思う。
詳細はこのブックレットに書かれてある通りですが、ここでは裏話に徹したいと思う。
ウェスとケリーの出会いについて:
最初にケリーとつながりがあったのは、バディ・モンゴメリと思われる。
バディはマスターサウンズの一員でありながら、1960年1月11日から21日にかけてマイルス・デイ
ヴィス・セクテットの一員としてシカゴのサザーランド・ホテルでその初演を飾っている。
メンバーはマイルスのリーダにジョン・コルトレーン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チ
ェンバース(b)、ジミー・コブ(dr)という錚々たる顔ぶれにヴァイブで参加したのである。
一方ウェスは既にリヴァーサイト・レコードと契約しており1月25日から28日にかけて、ナット・
アダレイの《ワークソング》に参加し、自身2作目のリーダ・アルバム《インクレディブル・ジャ
ズ・ギター》をニューヨークで掛け持ち録音していた。
これらの活動が落ち着いたあと、モンクとバディは1960年1月末を持ってサンフランシスコにある
ジャズ・ワークショップとの出演契約を終え2月1日をもってマスターサウンズを解散させた。
同時に、モンゴメリ・ブラザーズをウェス・モンゴメリ(g)、バディ・モンゴメリ(p)、モンク・モ
ンゴメリ(b)、ローレンス・マラブル(dr)、のメンバーで結成させ、サンフランシスコのハングリ
ー・アイで活動を始動させた。
ところが、バディはマイルス・デイヴィス・セクテットの一員として3月上旬まで参加した経歴が
あるものの、その謎めいた行動はともかくとして、バディとケリーの関係はこのとき築かれたもの
と思われる。
1961年12月、ウェスの大ファンであったバグスことミルト・ジャクソンの熱い要望を請けて念願だ
ったレコーディングが行われた。
そのレコーディングでのウィントン・ケリー、サム・ジョーンズ、それにフィリィ・ジョーンズの
リズム・セクションは一部のモンゴメリ・ファンにより仕立てられたという噂もあるが、キープニ
ュース自身、「私にとっても好きなリズム・セクションとウェスを組ませることで最高のものにな
ったよ」、ということからキープニュースの仕立てにより、ウェスとケリーは出会ったことになる。
ウェスとハーフ・ノートの出演について:
1960年のダウンビート誌のコンサート情報に、11月30日から12月5日までハーフ・ノートにウェス
・モンゴメリ・クウォーテット出演とある。
1961年のダウンビート誌のコンサート情報に、※月※日から6月4日までハーフ・ノートにウェス
・モンゴメリ出演とだけある。
いずれもウェスはモンゴメリ・ブラザーズ結成中ではあったが、他のクラブ情報ではモンゴメリ・
ブラザーズ出演とあることから、それ以外のミュージシャンということになる。
1964年のダウンビート誌のコンサート情報に、6月19日から7月2日までハーフ・ノートに出演と
だけある。
8月13日号による推測では、Wes Montgomery(g) Mel Rhyne(org) Sam Jones(dr)と思われる。
以下、ディスコグラフィによる記録では:
【A】Wes Montgomery(g) Harold Mabern(p) Arthur Harper(b) Jimmy Lovelace(dr)
B'Cast WABC-FM, "Half Note", N.Y.C.; Feb.12,1965
Caravan [8:36] Beppo BE-KOG 14800
'Round Midnight [10:10] −
Four On Six [10:33] −
Here's That Rainy Day [7:19] non-label j100
West Coast Blues [1:07] private tape
【B】Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Jun.25,1965
Surry With The Fringe On Top [5:20] Verve V6-8765, Verve 314 521 690-2
note: 314 521 690-2, original from reconstructed version [6:12]
same personnel: plus unknown brass and woodwinds, arr. by Claus Ogerman
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Jun.25,1965
Willow Weep For Me [7:42] Verve V6-8765, Verve VE-2-2513
Portrait Of Jennie [2:45] − −
note: VE-2-2513, original form without brass and woodwinds
【C】Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(dr)
Live at "Half Note", N.Y.C.; Jun,1965
No Blues [13:00] Verve V6-8633
If You Could See Me Now [8:21] −
【D】Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Aug.13,1965
Four On Six [9:29] Verve V6-8765
same personnel: plus unknown brass and woodwinds, arr. by Claus Ogerman
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Aug.13,1965
Oh! You Crazy Moon [5:27] Verve V6-8765, Polydor J28J 25117
note: J28J 25117, original form without brass and woodwinds
【E】Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Sep.17,1965
Impressions [5:01] Verve V6-8765
West Coast Blues [1:02] private tape
same personnel: plus unknown brass and woodwinds, arr. by Claus Ogerman
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Sep.17,1965
Misty [6:45] Verve V6-8765, Verve VE-2-2513
note: VE-2-2513, original form without brass and woodwinds
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以上のように1965年2月12日から9月17日まで出演の記録は【C】以外は全てポートレイト・イン・
ジャズ・ショーとして"WABC-FM"よりライヴ放送され、エア・チェックされた音源である。
その【C】こそ自由奔放、縦横無尽に弾きまくったウェス最後のストレート・アヘッドなジャズの名
盤《Smokin' at The Half Note/Verve V6-8633》である。
そして、ここから今回リリースされた1965年のハーフ・ノート・ライヴとなる、ウエス・モンゴメリ
&ウイントン・ケリー・トリオ / マキシマム・スウィングてある。
CDは2枚に分けられ次のような収録となっている。
レゾナンス・レコードの前に書かれてあるレコード番号は既にリリースされているという意味です。
これについては後程説明するとして、全17曲が未発表音源というものである。
Resonance HCD-2067 TOKO WM94-12 JAZZ on JAZZ 244555
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【CD1】
Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Sep.24,1965
1) Laura [6:53] TOKO WM94-12 Resonance HCD-2067
2) Cariba [8:49] TOKO WM94-12 Resonance HCD-2067
3) Blues (Closing theme) [3:04] JAZZ on JAZZ 244555 Resonance HCD-2067
【CD1】
Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Ron Carter(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Nov.5,1965
4) Impressions [6:11] JAZZ on JAZZ 244555 Resonance HCD-2067
5) Mi Cosa [3:34] JAZZ on JAZZ 244555 Resonance HCD-2067
6) No Blues (Closing theme) [5:45] JAZZ on JAZZ 244555 Resonance HCD-2067
【CD1】
Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Larry Ridley(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Nov.12,1965
7) Bik's Works [5:35] TOKO WM94-12 Resonance HCD-2067
8) Four On Six [8:24] TOKO WM94-12 Resonance HCD-2067
9) The Theme (Closing theme) [1:26] JAZZ on JAZZ 244555 Resonance HCD-2067
【CD2】
Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Herman Wright(b) Jimmy Cobb(dr)
B'Cast, "Half Note", N.Y.C.; Nov.19,1965
1) All The Things You Are [6:44] TOKO WM94-12 Resonance HCD-2067
2) I Remember You [7:27] TOKO WM94-12 Resonance HCD-2067
3) No Blues (Closing theme) [2:45] Resonance HCD-2067
【CD2】
Wynton Kelly(p) Wes Montgomery(g) Larry Ridley(b) Jimmy Cobb(dr)
Live at "Half Note", N.Y.C.; Late 1965
4) Cherokee [10:39] Resonance HCD-2067
5) The Song Is You [16:18] Resonance HCD-2067
6) Star Eyes [15:31] Resonance HCD-2067
7) Four On Six [10:45] Resonance HCD-2067
8) Oh! You Crazy Moon [4:27] Resonance HCD-2067
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【CD1】と【CD2】の3曲目までは、やはりエア・チェックされた音源を元に商品化されたものに違
いはないが、【CD2】の最後の5曲は当ファンクラブがレゾナンス・レコードのゼブ・フェルドマン
の要請に応じ提供したものである。
この5曲はエア・チェック音源ではなく観客かスタッフがテープ・レコーダをセットし録音したも
のと思われてきたが、実際サウンド修正したマシュー・ルータンスはライナー・ノーツで「観客が
テーブル席に持ち込んだポータブルなテープ・レコーダーで録音したという程度のものではなく、
2本の無指向性マイクをステレオ・トラックになるよう少なくとも4-5メートルの間隔てセットし
たことから、ある程度知識のある人が携わったとものと思う」と、説明している。
それで、私の提供した音源は少なくとも3度ほどダビングされたのちのもので、その修復とマスタ
リングに何週間もの時間を費やしたらしく、「修復は過去最大の難易度であったが非常に遣り甲斐
のある作業に満足している。音質やバランス的にすべて修復できなかったが、ウェスとケリーの演
奏が素晴らしく、ファンの皆様に楽しんでいただけることを願っている」、と説明している。
確かに、提供した音源は良くなかったのですが、修復されたものと聴き比べると歴然と改善されて
いることは明らかだ。
実は、1985年頃アメリカのコレクターとコンタクトするうち、"WABC-FM"よりライヴ放送されたエア
・チェック・テープを全て入手したが、リストにこの5曲があることに気づいたということです。
2016年ゼブ・フェルドマンとはあるパーティで紹介されたとき、彼は私が以前に自費リリースした
CD《Smokin' Guitar/Wes Montgomery/TOKO WM94-12》を知っていたらしく「ハーフ・ノートの音源す
べてコレクションしているのですか」と聞かれ、持っていると答えると「コピーを貸してくれない
か」と言われ、すべてのコレクションを彼に預けました。
1年ほど経って返していただきましたが、2022年になって「ハーフ・ノートのウェスとケリーの
コンプリート盤のリリースを計画している。改めて"あの5曲"を提供してほしい」との要請を受け
たという経緯である。
その最初の計画ではヴァーヴの権利を持つポリドール・レコードからリリースしたいということも
あったが、交渉は決裂したようである。原因は話の流れから聞くと私の音源が初めての録音でない、
つまりマスターではないということらしいです。
それで、彼なりに全米のコレクターを含む関係者たちに、5曲のマスター・テープの存在を聞き
まわっていたと思われるが、結果的にダビングされたものですら探しきれずプロデューサを通じて
私に提供の依頼があったということです。
私が"その5曲"を入手したのも40年ほど前のことですから、失礼ながらコレクターも亡くなって
その存在すら忘れ去られていたことだったと思う。
それで、その40年の間に、先ほど説明した《Smokin' Guitar/Wes Montgomery/TOKO WM94-12》を
1994年12月にジャスラックに申請し自費で500枚リリースしました。
その数年後、"その5曲"を再びリリースしようと・・タイトルは《Cherokee/Wes Montgomery》と
まで決めマスタリングも行い、ジャケット写真の使用料もレイモンド・ロスに支払いライナー・
ノーツまで出来上がっていました。
そしてジャスラックに連絡したところ「演奏者の音源も死後70年間は保護されていますが、許可
をいただいてください」とのことです。前回の申請では言われなかった案内です。
それで、リリースできずそのまま放置していたというのが事実です。
ちなみに、著作権は、コンテンツを創作した者(=著作者)に認められる権利で、これに対して
著作隣接権は、コンテンツを公衆に伝達する(流通させる)者に認められる権利とのことです。
僅か数年の間に事情が変わったということです。
私はウェス・モンゴメリのディスコグラファとして遵守している事が在ります。
掲載の第一条件は、世界で一番早く一番最初にリリースされたものだけを掲載しています。
後続のものを掲載していくと・・もちろん人によっては全て掲載しているが・・切りがないこと
で書き切れなく絶えず更新していかなくてはならい、ましてその作業は大変なことです。
勿論、著作権・著作隣接権は守らなければなりませんが、そのこととディスコグラフィとの関連
性というか結合性は必要はないものと考えていますし、ディスコグラフィとは切り離して考える
べきと思います。
あえて、いま自サイトで掲載しているディスコグラフィを修正することは現時点では考えていま
せん。今後も"事実のみお伝えします"
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