ニュース速報 No.39(2002.2.27号)


青春Go-Go(55歳)切符物語 3/3
2月16日(土)晴れ: 青木氏とは10時にホテルで待ち合わせだったが、早く目覚めたことから大通り公演付近を散策、 昨晩はよく飲んだが素晴らしい杉本氏のステージに二日酔いもなかった。 「おはようございます」と愛車をホテル前に横付けされ、早速市内観光に案内された。 やはり車がないと不便なところだが、横浜でいちばんの別荘地である山手界隈にある外国人墓地 や港の見える丘公園を見学した後、いま梅の見所となっている三渓園に走らせたが晴天白日につ き入口まで渋滞が続いていたため取りやめ、昼食タイムに変更した。 その後、青木氏の自宅にお邪魔し、彼の愛器L5CESフローレンタイン・カッタウェイを拝見 「これが《ムーヴィン・ウェス》のギターですか」いいな・・欲しいな・・欲しいが弾けない・ ・買ってもただの装飾品になりかねない・・でも凄いな。 昼からの予定は渋谷のギター専門店 "ウォーキン" に訪問し、そのまま今夜開催される "フル・ ハウス" で "OGD" の出演を観に行くことが今回の青春55切符物語最大の目的である。 青木氏と私は電車を利用し小岩まで駆けつける事にし、奥様に桜木駅まで送っていただいた。 奥様はそのまま買い物に行かれるとのことで、車を降りたあとここでハプニングが発生「あっ、 SP盤など入った手荷物をトランクに置いたままだ」と私が叫んだ。 青木氏は車のあとを追いかけたが、信号のとおりがよく走り去ったあと、運わるく携帯電話も不 所持のためつながらなかった。 とりあえず自宅に連絡したあと、「連絡がつくまで私が子供の頃から通った "ちぐさ" へ行きま しょう」、ということになり歴史あるかの有名なジャズ喫茶へ行く事にした。 私のど忘れからとんだ迷惑をかけてしまった。「歳かな?ボケかな?済みません青木さん」、彼 は「何の何のおかげ様でまた名所をひとつ紹介できましたよ」、と寛大なるお許しを頂いた。 コーヒーを注文したら早速リストを見せられ「リクエストは?」と尋ねられた。 素直にウェスとは言えず、いつまでもリストを見ていたらまた「リクエストは決まりました?」 と言われ「《バグス・ミーツ・ウェス》お願いします」と反射的に応えていた。 やはり音響装置がいいのか「自宅では聴こえないサウンドが再現されていますね」と〈Stairway To The Stars〉の良さを再確認された青木氏は「この曲を練習したいな」と何処までもその情熱 ある語り口で説明された。 片面のレコードが終わる頃、奥様より連絡があり手荷物を受け取ったあと "ウォーキン" に向か ったが、私の失態から着いたのが4時を回っていた。

ただ救われたのは渋谷駅前に店舗があったことで、「初めまし て」と紹介されたのは若いオーナーの西村氏であった。 彼はウェスの【ウエモン】のコーナーでも協力いただき既にメ ールではやり取りしていましたが今日は彼が99年3月ごろにイ ンディアナポリスへ行ったという話を聞くのが目的であった。 "ウォーキン" へのアクセスはここから



徳井:で、どんな目的で行かれたのですか? 西村:ウェスの愛器でダイアのL5がチルドレン・ミュージアムに展示してあるというので、是 非見たかったのです。 徳井:エイドリアン著の【ウェス・モンゴメリ】にも掲載されていましたね。    でも、ただそのギターだけを見たさにですか?  西村:そうです。 徳井:変な聞き方をして申し訳ありません、でも本当に好きなものはその目的を果たすのに手段 もかけ引きも損得もないですよね。? 西村:ところが残念にも観れなかったのです。そのときは私も分からなかったので、聞く宛もな く帰りました。 徳井:評論家の成田氏が98年6月、未亡人のセレーンを訪問したとき、そうSJ誌に掲載された 記事なんですがそれによると孫がそのギターを引き取りに来ると説明していましたが、そ うすると随分早くから展示場から引き揚げていたのですね。 それで、お墓でも参ったのですか? 西村:そのときは墓のことも知らずに帰りました。他にあの周りって何もないんですね。 徳井:それは残念でしたね。 西村:私はあのギター観たさに、それ一心でしたから。 ギターが本当に好きなんですね。彼の熱弁からも分かりましたが店内はビンテージもののギブソ ン・ギターがところ狭しと並べられていました。 徳井:ここではどのギターが高いのですか。このハートのL5ウェス・モデルですか? 西村:いえ、非売品なんですがジム・ホールの愛器(注)ダキストの "ジム・ホールモデル" で    す。 徳井:えっ、ジムが本当に持っていたギターですか。 西村:そうです。展示してありますが門外不出です。 徳井:驚きました。ここでこんな偉大なギターに出会えるなんて。 西村:徳井さんはギターできるのですか? 徳井:よく聞かれるのですが、とっくに諦めました。でもウェスのL5は欲しいですね。 西村:気に入ったギターありましたか。 徳井:考えておきます、とりあえず写真を撮らせてください。で、景気はどうなんですか? 西村:ホームページを開設してからネットで申し込まれる方もおられ、まあまあですね。 徳井:頑張ってください。いいお話聞かせていただき勉強になりました。    私も出来ればインディアナポリスに行きたいのでたいへん参考になりました。
(注)についての西村氏の説明: 意外なことに、こちらのモデルには正式名称がございません。強いて言えば、 資料等には "Electric Hollow" と記載されていることが多い用です。 ちなみに先日ご覧頂きました "Electric Hollow" は70年代後期から80 年頃までに製作された初期タイプのもので、ボディのみハグストローム(確 か、スウェーデンあたりのメーカーだったような・・・)製の外注品で、ネ ック製作、組み込み、塗装を含むその他一切はダキストの手によるものとさ れております。 なんの変哲も無い合板ボディのアーチトップ・ギターなのですが、なぜあの
ようなサウンドが出るのかは、全くもって不思議であります。(多くのプロ・ギタリストの方に もお試し頂きましたが、みなさん口々にこちらのギターを絶賛いたします。ジム・ホールの生き 霊が乗り移っているのではないかという説も・・・)ちなみにペグはグローバー製でピックアッ プはダンカン製でした。 参考までに "ウォーキン" に展示してある1本は前期タイプのものであり、現在ジム・ホールが メインで用いている後期タイプとは別物になります。 ちなみにこの前期タイプは、アルバム《サークルズ》等のジャケットに用いられ、1980年の来日 時にも使用されております。察するに70年代後期、或いは80年代前期〜中期頃に至るまで、氏に 使用されていたのではないかと思われます。 物腰の柔らかい西村氏は、開店記念のキィ・ホルダ(既にない取って置きのひとつ)を私にくださ り、今後ともよろしくと挨拶を交わしたあと "フル・ハウス" へ向かった。 「やはり装飾品となりかねないギターにうん十万はもったいないですね」、などと青木氏と話し ながらも小岩駅に着いた。 "ウェスと共にTwo Days" のとき佐藤氏が開演に遅刻したというレポートで、歩道を占領する自 転車と分かりづらい入口によけい迷ったという道程を検証をしながら「確かに見過ごすのは仕方 ない」などと、半間のドアを開けた。 間口は狭いが、奥行きがありカウンター席を過ぎると左右にボックス席があり、突き当たりがス テージと思われる。 楽器はセッティングされていないのかなと見渡していて・・あれっ・・タイガースのテナント? ・・と思うや、横から「ここのマスター "トラキチ" です」と聞えた。それは "フル・ハウス" の常連、松崎氏であった。 青木氏の紹介を受けながら「初めまして、ウェス・ファン倶楽部の徳井です」、ありきたりの挨 拶ではあるが、とにかく私は全てが初めてなんでこれしか言いようがないのだ。 「フルハウス駐在員としてお世話になっています」、そしてその横におられたフルハウス記録員 としてお世話になっている渡邊氏を紹介された。 「 "OGD" の貴重な音源ありがとう御座います」と挨拶すると「今晩も心配いりませんよ」と 指を上向きにされた。 みると、衣紋掛けに指向性マイクがステージに向けてセッティングされてある。 「このボックス席はいちばんバランス良く聴ける位置なんですよ」と松崎氏がいうが、満席にな ると若干ステージが観にくい所でもあった。 私が来る前に"OGD" のメンバでいちばん早く入店していたのがドラマーの山口氏であった。 名刺交換しながらやはり同じように挨拶、ステージでは若手ながらアメリカにも修業したことの ある経験豊富なテクニックを披露してくれた。 次に来店されたのが大のウェス・ファンで、オートモーヴィル・アーチストでお馴染みの牧田氏 彼の素晴らしい版画でぜひウェスを彫ってくださいと挨拶しているうちに、本日のメイン・ギタ リスト小泉氏が登場、話はプレイの事で更に盛り上がり彼は本日松崎氏のフェンダー・ツイン・ リヴァーブを借りてプレイする事となった。 開演15分前になって慌しく大きなセットを持ち込んだ高野氏、早速オルガンのセッティングに取 りかかった。 挨拶もそこそこのうち、1stステージの開演時間になっていた。

"OGD" :小泉清人(g)、高野正一(org)、山口新語(ds) 「さて、何を演ろうかな」などと小泉氏の半分口癖のようにも感じとられる間を持たせながらも 「今日はこれだけのウェス・ファンがが集まっているのだからウェスを演るしかないでしょう」 と先に青木氏から釘をさされていることを承知していたはず、見渡すとボックス席はほぼ満席、 あとから聞いた話ですが久々の満員だったとのこと。 ウェスの命日でもないのに結局ウェス特集となってしまった。 「高野さん、お疲れさま、徳井です」、と高野氏とようやく面会できた。「今日は生徒が多く来 てくれまして」と改めて見渡すと幾つか空いていた席も埋まりウエイトレスがオーダーを受けて てんてこ舞いしていた。 「やっと念願の "OGD" を観ることができました。いつになく素晴らしいですね」、と彼のお 客様が多かったせいかあまり話せなかったが多才なテクニックを聴かせて頂いた。 ここで先ほどより話し相手の牧田氏と版画の話題から抜けられず、多くの人と話せないまま2nd ステージが始まった。 しかしながらウェスの版画を彫ってくださるとのことで楽しみが増えた。 元来、あがり症でどちらかというとあまり話し上手でない私は「控えめにして下さいね」、と事 前に青木氏や小泉氏に自分から言っていたにもかかわらず、盛り上がりを高めるためメンバ紹介 の役目を願い出た。 「控えめにといっていたので、言いませんでしたがそれならお願いしますよ」、と小泉氏の言葉 に甘えたが何を紹介したのかあまりよく覚えていない。 突然のハプニングに観衆の方々がかえって迷惑でなかったかな、やっぱり止めとけばよかったか なと反省していたら「今夜の小泉さん冴えてますよ。難しいテクをガンガン演ってますね」、と 松崎氏が解説されていた。 私も今までに頂いた録音から聴き比べても同感てある。終わってから「今日は今まで以上に乗っ てましたね」と尋ねると、小泉氏は「いつもと一緒ですよ」と極控えめと言うか平常心であるこ とを強調された。 い−や、今日は確かに乗っていたと誰もが絶賛していた、本当に興奮した。 あっという間にステージも終わり午前零時は回っていたにもかかわらず "OGD" の興奮話が各 所でいつまでも聞えていた。 そこへ突然「今年のウェス命日特集、6月8日に決定しましたので、是非来てください」、と松 崎氏が伝言に来られ「えっ、もう決まったんですか」、とあまりの早さに驚いた。 「今日の入りにマスターが上きげんなんですよ」、となにか阪神タイガースが勝利した時のよう な嬉しさでしたよと言うのです。 「徳井さんその日も必ず来てください」、さらに「ファン・クラブの会長なんだからやっぱり年 に一度は上京していただかないと」、と駄目を押され、「是非来させていただきます」と返答し ながら気難しそうなマスターの顔を見ると本当にニコニコ顔だったので「今度きたらタイガース ・グッズ持ってきますよ」との言葉に話題は野球へと変り、タイガース・ファン以外はどうのこ うのへと展開したが、ネタも尽きたことで三々五々家路へと向かわれお開きとなった。 このあと、小泉氏は阿佐ヶ谷にある "MANHATTAN" のオール・ナイト・ジャム・セッシ ョンにベーシストとして参加されるというので、小泉氏のファンである高橋氏と同行することと した。 明日には帰阪するが、どうせ今からホテルへ泊まって寝るだけなら彼のベース・ランニングも聴 いて観たかったので、それならと言うことで好都合となった。 駅前にあったこの店のオーナーもアコーディオンを弾かれるとのことで小泉氏から紹介を受けた あと、10人ほどしか入らない小さなクラブにミュージシャンも合わせて何人ぐらい入っていたの だろう? とにかくジャム・セッションだから2曲ほど演ってはミュージシャンが入れ替わるので、客より ミュージシャンの方が多かったような気がした。 1時間ほどするとまたミュージシャンがやって来た、もう寿司詰め酸欠の状態が5時頃まで続き 身動きひとつ出来ない。 完全にプロと言える、また勉強中と判るミュージシャンが入り乱れてのセッション、こんな場所 が必要なんですよ、関西にはこんな場所がないので勉強中ミュージシャンが本当に可愛そうだな とひとり呟きながら夜明けのコーヒーをすすったあと小泉氏と別れた。 「もう東京行きの始発が出ているので」と案内され青春Go-Go(55歳)切符物語は終着駅となった。 駅のホームにあがりベンチに腰掛け、その充実感に浸されていた。



やっぱり上京してよかった、念願の名所に行けたし、"OGD" のメンバ、"フル・ハウス" の常 連さんにも、そう杉本氏にも会えた、そしていちばんお世話になった横浜特派員の青木さん、さ ぞお疲れのことと察します「ありがとう」、みなさんまたお会いしましょう。
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