ジャンルを超えた "トリビュート・トゥ・ウェス" そのV
アルバム名 : GUITAR LEGENDS/SHIN-ICHI FUKUDA
アルバム番号: Denon COCO-80634
リリース国 : JAPAN
リリース年月: 8/1997
メディア : CD
最後にクラシック界からの "トリビュート・トゥ・ウェス" だ。
その筆頭に挙げたいのがジャズ・ファンであっても名前は聞いたことがあるかと思いますが、ギ
タリスト福田進一氏である。
「大阪生まれの彼は・・・
78年パリ・エコール・ノルマル音楽院にて、A.ポンセにギターを学び、また音楽学、和声楽、
楽曲分析をN.ボネに師事する。
80年イタリア・キジアーナ音楽院にてO.ギリアに学び、最優秀ディプロマを受賞する。
81年パリ国際ギターコンクールで優勝。
一躍注目を集め、さらに内外で輝かしい賞歴を重ねた。すでに、ほとんど全ての欧米各国の主要
都市に招かれリサイタルを開催。
デュトワ指揮NHK交響楽団などのメジャー・オーケストラとの協奏曲、ジャズの渡辺香津美氏
などジャンルを超えた一流ソリストとの共演はいつも話題を集め、絶賛を博している。
19世紀ギター音楽の再発見から現代音楽まで、福田氏のボーダレスな活動は世界的な評価を獲得
している。」
その彼が、97年8月に《GUITAR LEGENDS/ Denon COCO-80634》サブタイトル "福田進一ギタリス
ト伝説/ジミ・ヘンドリックス賛歌" なるCDをリリースしていた。
一見ヘンドリックスだけかと思われたが、きっちりギタリストとしてのケジメを心得ておられる
のかウェスも含めジャンゴやルイス・ボンファ等へのトリビュートも忘れていなかった。
ウェスに言及すると〈SUA COSA op.52 "To the memory of Wes Montgomery"〉邦題〈スア・コー
ザ op.52 "ウェス・モンゴメリの思い出に"〉と言う曲は、イギリス・ギター界の重鎮であるジ
ョン・デュアート(John W.Duarte) が作曲したものを、クラシックの人とは思えない鋭いリズム
感とビートで、福田氏は「最後の2小節はウェスを讃える気持ちで親指のみで弾いてみました」
と語っている。
デュアートはセコビアに捧げた "イギリス組曲" 等のクラシカルな佳品を多く書いているが、元
来ジャズの分野でも活躍したギタリストでもあり、現在は作曲家・教育者としての活動に専念し
ているようである。
彼はクラシック・ギターの為のジャズ・バラッド、〈スア・コーザ〉を若くしてなくなったウェ
ス・モンゴメリへの賛歌として72年に作曲した。ちなみに〈スア・コーザ〉とはイタリア語で彼
の流儀という意味で流儀とはウェスのオクターヴ奏法を指している。
ここまで説明すると、ピンときましたね。
そう、ウェスの曲で〈Mi Cosa〉と思った人はエライ!
〈Mi Cosa〉はイタリア語で〈ミ・コーザ〉と発音するらしく、私の流儀という意味である。
つまりウェスからすると私の流儀とはオクターヴ奏法を主張したものである。
〈スア・コーザ〉は中間部でリズムを変え〈ミ・コーザ〉を間奏風に織り込んでいる。
これが何とも言えぬコンビネーションで全く違和感がない。
そしてもう一作品、やはりクラシック・ギタリストの柴田杏里(ANRI SHIBATA)氏の
《エル・メスティーソ/Fontec FOCD3450》での〈スア・コーザ〉も熱演しているので是非とも
聴いて頂きたいと思う。
アルバム名 : EL MESTIZO/ANRI SHIBATA
アルバム番号: Fontec FOCD3450
リリース国 : JAPAN
リリース年月: 5/1999
メディア : CD
その他にも下記のアルバムで〈スア・コーザ〉が聴ける。
・Neil Smith Plays Duarte/GUITAR MASTERS GMR-1006
・Ernest Bitetti/Hispabox HHS10-450
・Vladislav Blaha/Americana-Works by John W.Duarte
・Arne Brattland/VEPS 013-87
・Masayuki Kato(加藤政幸)/Discocenter 6622130
・Vladimir Mikulka/日本コロンビア OX-1253-S
・Alexander Tchekhov/Faraway-Popular 20th Century Music/kreuzberg KR-10013
情報提供:「GUITAR & MYSTERY HOMEPAGE」の山崎治氏
|