ニュース速報 No.75(2005.8.27号)


まだあったオランダ収録

1965年4月にオランダのアムステルダムに到着したウェスは同月2日の夜、近郊の街ヒルヴァー サムのヴァーラ・ラジオ(Vara-Radio)でのスタジオ録音が予定されていた。 これは、後にオランダよりリリースされたクラーク・テリーと地元ミュージシャンのバックによ る、《Wes Montgomery-Clark Terry/Vara Radio-1965/Varajazz 8219》のアルバムであり、日本 でも徳間ジャパンの《Straight No, Chaser/Wes Montgomery/32JDB-136》として既に多くのファ ンも承知のことである。 そして最近判明したのが、同じヒルヴァーサム(Hilversum; オランダ読みでヒルフェルスムと言 うらしいですが、一般的にはヒルヴェルサムともよばれておりアムステルダムから車で30〜40分 くらいの閑静な旧い街)にあるオランダ公共放送組織のヴィプロ(VPRO)のスタジオで、リハーサル 風景ごと捉えられた大変貴重な映像が発見された。 おそらく、ヴァーラ・ラジオは夜から収録されたという記録があるので、昼間におこなったもの でクラーク・テリーが参加していないセッションとなった。 WES MONTGOMERY QUARTET Wes Montgomery(g) Pim Jacobs(p) Ruud Jacobs(b) Han Bennink(dr) VPRO-Studio, Hilversum, Holland; Apr.2,1965 Bluse Nica's Dream 特筆すべきはホレス・シルヴァーの〈ニカの夢〉、これはウェスの多くあるレコーデイングにも 見られない初めて聴く曲で、〈ラウンド・ミッドナイト〉などにも見られる彼の特徴あるテーマ からアドリブに入っていく低音部でのサウンドがたまらなくこの曲に融合している、本当に素 晴らしい。 ここでオランダの公共放送について述べますが、組織は複雑で現在テレビ3局ラジオ5局がオラ ンダ放送協会(NOS)と、95年にNOSから独立したオランダ番組協会(NPS)により運営されている。 そして、番組を制作し放送する加盟団体は宗教組織や政党でほとんどが占められており、例えば ヴァーラ・ラジオはもともと労働党系の政治団体であったり、ヴィプロは自由主義プロテスタン を表明していた、というものである。 写真は現在ヒルヴァーサムにあるメディアパークの建物に、VPRO, VARA, RVU, NPSの4加盟団体 が集結している。 3と言うのは恐らく【Nederland 3】ネーデルランド3チャンネルで制作活動しているという意味 だと思う。

余談ではあるが、ドラマーのハン・ベニングは当時引っ張りだこの売れっ子だったらしく、ジャ ズ通なら好き嫌いはともかく1964年6月、エリック・ドルフィーの死の直前のオランダ・ツアー での、かの有名な《ラスト・デイト》の収録にも加わっている。 しかも、場所はウェスと同じヒルヴァーサムのヴァーラ・ラジオのスタジオであった。 オランダでの滞在中、ウェスもドルフィーもロッテルダムにあるクラブ "B-14" にも出演したが ウェスについての詳細は不明である。いずれ判明するであろうが、ウェスがインタヴューで応え ていたように「目的地に着いたら、休む間もなく次々と出演が決まっているんだ」というから、 こういった収録テープがのちに発掘されるのでしょう。