ムーヴィン・ウェスのL5

ギター・マガジン2008年1月号の補足
ギター・マガジンのスペシャル・プログラム "ジャズ・ギタリスト進化論" で第六回に登場
したのがウェス・モンゴメリである。
記事的には目新しい事実が掘り起こされたと言うわけではありませんが【ウェスの関連機材】
の項でもう少し突っ込んで説明を加えたいと思います。
先ず、"ハートのL5" で「現在はインディアナポリスのメリディアン・ミュージック社で保管
されている」とありますが、これは当サイトの "ニュース速報 No.88(2007.12.1号)ハートの
L5・・哀れ" でも説明したように、現在は販売目的として日本人の手に渡っています。
この63年に製造された全ギターはシリアル番号“61450〜64222”までの物で、2年後の65年
にウェスに贈られたL5Cは“62876”にハートのインレイが施さたカスタムメイド・ギターで
ある。
また、ギター・マガジンに掲載されている"ハートのL5" は限定50台のレプリカですが、テー
ルピースの部分にも "WES MONTGOMERY" と彫られていますが本物には彫られていません。
次に "ポインテッド・カッタウェイのL5" ですが、最も印象深いイメージとしては《フルハ
ウス》(注: 表ジャケットよりも裏ジャケット見てくださいね)よりは、ヴァーヴの《ムーヴ
ィン・ウェス》に使われたジャケット写真ですね。これについては驚きの事実が隠されてい
ました。
先ずは、ウェスが生涯のうち4本のL5を使った訳ですがその二番目に使用したのがこの通称
"L5フローレンタイン" (写真の通りハートのL5とは違い切り込まれた部分が尖っている物)は、
1997年リットーミュージックより出版された、小泉清人氏著/監修の【偉大なる巨匠たちの軌
跡/ウェス・モンゴメリ】に書かれてある通り、ウェスから譲り受けた??とされるジェリー・
バードが所有していたことであります。
これは1992年、彼がフレディ・コール(ナット・キング・コールの弟)のサイド・マンとして来
日したおり、小泉氏が偶然にも彼と出会いそのギターを持たせて頂いたという貴重なショット
で確認できます。
その後、不確かな情報として・・ジョージ・ベンソンの手に渡ったという噂話が聞かれた。
この話は、ギター・マガジンにも書かれているが、分かることではなくその通りで、彼が手に
したときそのギターは一部穴が空き、ピツクアップは緑青を帯びていたと言われます。
ところがところが、最近になって横浜特派員がネツトサーフインで驚きのサイトにたどり着き
ました。
オークションサイトのSkinners, Inc.で、オーナーのベンソンが出品していたのです。
これでベンソンが所有していた事実は判明したものの、そのオークションは既に2007年11月24
日に開催され、落札予想価格 "$20,000〜$30,000" に対して "$41,125" で落札されたというも
のです。
え゛ーー衝撃的で信じられない・・何故なんだベンソン・・あ゛ーーでも現実です。
"The 1961 Gibson L-5 CES" という文章と、シリアル番号“38024”が確認できます。
ギブソンのシリアル・リストで調べると、1961年の全製造は“100〜42440”となり、ここに記
されている“38024”は61年製であることを示しています。
ウェスがレコーディングで使った62年の《フルハウス》から64年の《ムーヴィン・ウェス》ま
で使ったギターに違いありません。
写真で見る限り、各部の仕様もまったく同じです。
こんな悲しい事実が二件も続き、しかもウェスのギターと言うだけで、何とも言えない寂しい
気持ちになりました。
2012/4/1 追記
"$41,125" で落札したのは、パツト・メセニーという話があります。
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