ニュース速報 No.90(2008.1.22号)


あった!! ウェスの未発テープ
ウェスの未発テープ・・やはりアメリカは広い・・ありました。 しかも、1958年のワールド・パシフィック時代の未発録音である。 かつてリリースされたことのない、これぞマニア垂涎の的超弩級お宝品です。 過去、オフィシャルとしてリヴァーサイドやヴァーヴ録音は何度となく発掘されてきた経緯 はあるが、この未発テープの所有者はオレゴン州セーラム在住のアメリカ人と言うこと以外 詳細は不明である。 しかも、驚いていいのか悲しんでいいのか、その未発テープをオークションに出品しており 9千9百ドルからのスタートで即決ならば2万5千ドルとこれも超破格な金額である。 ★出品者の宣伝話をまとめると------------------------------------------------------ ウェス・モンゴメリの失われたマスターテープ唯一のコピー! ウェス・モンゴメリの55分間の未発表レコーディングこれらのテープはリヴァーサイドと契 約する以前の1958年の終わりに録音されたものです。 コレクターがこれらのテープの唯一のコピーに支払う金額は5万ドル以上かもしれません。 この唯一のコピーでは、最低価格を非常に低く設定しました。 このマスターテープは1990年に入手したものです。 入手後、私はAES(Audio Enginnering Society conventions)に参加し、再生困難な状態の マスターテープを修復しトランスファーする技術を勉強しました。 作業工程は長く、難しいものでしたが、最終的にサンプリング周波数48kでDATにトランスフ ァーすることができました。 その結果は素晴らしいものでした。数年後、オープンリールのマスターは火事に遭い、消失 したり、消防のホースで水浸しになりました。 私は、すでにこれらのテープをトランスファーしたものを安全で湿気の少ない場所に保管し ておいたことを喜びました。 これらのトラックを修復しトランスファーする作業に、私は200時間以上を費やしています。 どのテイクにおいても、ウェス・モンゴメリは最高の演奏を繰り広げています。 唯一の例外は〈アフター・アワーズ〉で、遅い時間のナイトクラブにおけるお遊びの状況を 聴くことができます。 どうやらここではL5のバック側ピックアップに切り換えてブルースを演奏しているようです。 これらの録音には3つのセッションが含まれています。 (1) ピアノ、ベース、ドラムスを加えたスタジオレコーディング。 (2) オルガン、ドラムスとのスタジオレコーディング。 (3) カルテットによるライブレコーディング。 1.〈Diablo's Dance〉素晴らしい作品。アレンジも良く、ピアノとのユニゾンによる美しい パラレルラインと圧倒的なソロ。ウェスはこの曲を他では録音していない。 2.〈'Round Midnightオルガン、ドラムス、ギター。 3.〈Nica's Dream〉カルテット。素晴らしいギターのライン。この曲におけるソロを聴くと、 改めてウェスが最高のジャズギタリストであることがよくわかる。 4.〈Straight No Chaser〉カルテット。ウェスとピアニストによるフォーバース。 5.〈Body and Soul〉カルテット。いつものようにウェスは快調。 6.〈Misty〉カルテット。とてもスウィートなソロ。 7.〈Take the A Train〉クラブでのライブ。エキサイティングなソロ。 8.〈Darn That Dream〉オルガン、ドラムス、ギター。ウェスはいつものように美しい。 9.〈After Hours〉夜更けの楽しいセッションの様子。 落札者が手にするもの: ・サンプリング周波数48Kで記録された2本のDATテープ(他には存在しません。) ・2枚のCDマスター(他には存在しません。) ・私がコピーを持っておらず、他人の手にも渡っていないことを示す文書なお、私はすべての ウェス・モンゴメリのリソースをサーチしましたが、これらのテイクのコピーはどこにも存 在しませんでした。また〈Diablo's Dance〉の録音はどこにもありませんでした。 メモ: ・各試聴サンプルの最後で音が繰り返されますが、これは私のMP3コンバーターの問題です。 マスターにはこのような問題はありません。 ・試聴サンプルでは、トラックごとのボリュームバランスがノーマライズされていませんが、 最終のマスターCDではノーマライズされています ★出品者のディスコグラフイをまとめ【試聴】すると---------------------------------- 3-recordings were from three different sessions: WES MONTGOMERY QUARTET Wes Montgomery(g) unknown(pf) unknown(b) unknown(dr) unknown Studio Recordings; 1958 Diablo's Dance  【試聴】 private tape Nica's Dream   【試聴】 - Straight No Chaser【試聴】 - Body and Soul   【試聴】 - Misty       【試聴】 - WES MONTGOMERY TRIO Wes Montgomery(g) probably: Melvin Rhyne(org) unknown(dr) unknown Studio Recordings; 1958 'Round Midnight 【試聴】 private tape Darn That Dream 【試聴】 - WES MONTGOMERY QUARTET Wes Montgomery(g) unknown(pf) unknown(b) unknown(dr) unknown Live Recordings; 1958 Take The A Train 【試聴】  private tape After Hours 【試聴】 - -------------------------------------------------------------------------------- この3つのセッションで特に特にに気にかかるのが、トリオでの〈ラウンド・ミッド・ナイ ト〉である。 編成は59年ウェス初のリーダ・アルバム、リヴァーサイドよりの《The Wes Montgomery Trio/A Dynamic New Sound/Riverside RLP 12-310》と同じで、しかもこの〈ラウンド・ミ ッド・ナイト〉を演奏しているギターやオルガンのサウンドが大変酷似していることである。 当サイト内の【時代別アルバム】【リヴァーサイド録音】から紹介している記事にも関連性が 認められそうな、当時オリン・キープニュースが書き残した録音メモを見て頂きたい。   'Round Midnight(take1)・・・出だしミスと記入してあるが消失        'Round Midnight(take2)・・・要保存と記入してあるが消失          'Round Midnight(take3)・・・これが恐らくオリジナル・テイクと思われる この録音メモからすると・・ひょっとして・・(テイク1)か(テイク2)ではなかろうか? もしそうであったならば世紀の大発見(大げさ)かも知れません。 彼の録音メモでは他にも〈ウィスパー・ノット〉take1消失、〈アディオス〉消失、〈ミーン ・トゥ・ミー〉消失とあるが〈ダーン・ザット・ドゥリーム〉の記載はない。 では何故いまごろどうして・・【消失】とはどのような意味が含まれているのか・・ミステリ です。 カルテット演奏のメンバーはよく分かりませんが〈Nica's Dream〉は昨年DVDでリリースされ た《WES MONTGOMERY Live In '65/JAZZ ICONS 2.119003》で初めて聞いた曲でしたがこの頃既 にレパートリになっていたのですね。 他にも初めての曲がありますが、レイ・ブライアントやフィニアス・ニューボーンJRのレパ ートリーでお馴染みの〈After Hours〉というブルーズ演奏はニュース速報 No.36/2002年1月 1日号でお知らせしました「1958年、ウェスがロックン・ロールのバンドでレコーディングし ていた事実を君は知っていたか?」と言う記事を覚えておられるかと思いますが、正にそれを 証明するが如きの演奏であおられてウェスも乗っているのか乗らされているのか何度も笑い声 が聞こえるライヴならではの珍曲です。 ここで、ギタリスト小泉清人氏からの見解を戴きました。 ★小泉清人氏の見解-------------------------------------------------------------------- 【試聴】を何度か聴いてみましたが、どうも1958年というのに疑問の演奏が多いです。 以下に僕の推測を。 ●〈Round Midnight〉間違いなく "失われたテイク" だと思います!! そして〈Darn That Dream〉もこのときの演奏に違いありません。   サウンドが全く同じですから。 ●〈Nica's Dream〉これは《Movin' Along》のセッションでしょう。   ベースが間違いなくサム・ジョーンズですし、ウェスのギターが例のベース・ギターのよ   うです。ただし、エコーが強めなのは何故でしょうか。 ●〈After hours〉ウェスは思いっきりアーシーに(というより下品に)おふざけ的に演奏して   います。最初は、これはウェスではないな、と思ったのですが、オクターブの弾き方で、 やはりウェス、と思いました。   出品者は「L5のバック側のピックアップで」と書いていますが、ギターは誰かのを借りて   いるように思います。L5ではあそこまで下品な音は出ないように思います。 ●〈Take The A Train〉はリヴァーサイド以前の音ですね。  〈After hours〉も合わせて、むしろ《Five others》のころの音に近いですから、1957年   かも。 ●〈Misty〉と〈Body and Soul〉これらは《Grooveyard》の音に近いです。   少なくとも、バックはモンクとバディのように思います。   《Grooveyard》の〈If I should loose you〉と〈Misty〉を聴き比べてみてください。   なんとなく雰囲気は似ていませんか?   あくまでも推測です。 ●〈Straight No Chaser〉これも60年代と思いますが、わかりません。 -------------------------------------------------------------------------------------- 小泉さん、ありがとうございました。 と・・・なりますと、リヴァーサイドそのもののテープが見られる・・これはどう理解すればい いのでしょう。 これら9曲の持つ重要性からすると出品金額が妥当なのかという議論はありますが、余裕があれ ば買いたいという気持ち、全て聴いて見たいという気持ち、しかし前述の消失したテープがもし 盗品と言う言葉も含まれるならば買えないという誠に複雑な心境もしかりです。 でもその重要性ということにおいては、前にも話したことがあったかと思いますがこの1958年頃 の録音テープが当時インディアナポリスで共演活動していたアロンゾ・ジョンソン(ts)もまたプ ライベートで所有しており、評論家の成田正氏からレコード発売を勧められたが公に発表したく ないとのことで陽の目を見ていない事実もある。 ウェスがメジャー・デヴューしてからあるインタヴューで「僕は今より以前インデイアナポリス で演っていた頃のほうがもっと巧く弾けていたんだ」と語っているが、これらの【試聴】を聴く 限りストレートな彼の良さが滲み出ているプレイでその存在が分かっただけに、早くオフィシャ ルなリリースを切望したい。 待ち望んでいるファンとしては【眼前の人参】を追う馬の如き悲し〜い出来事である。