第U期の締め括りとして話はいっきに進む 『かって私がプロデュースしたウェスのテー
がウエスト・コースト・ジャズの凋落と共に プを、君の才能で蘇らせたいんだ』、とこの
60年半ば、ワールド・パシフィックはリバテ 様にしてボックのプロデュース、ウィルソン
ィに吸収合併され、レス・マッキャンを経営 の編曲指揮によりオーヴァー・ダビングされ
陣に迎えた。 再リリースされたのが《ア・ポートレイト・
リチャード・ボックは今までのように独自で オブ・ウェス・モンゴメリ/World Pacific
プロデュースできる立場でなく、雑役的な仕 Jazz ST-20137》である。
事に追われていた。
一方、マッキャンはジェラルド・ウィルソン このアルバムについてジョン・ハーディは
やブッカー・アービンといった黒人ジャズの 『近年ウェスの鋭いギター・サウンドは、オ
レコーディングを中心とする方針を固めてい ーケストラ編成の中に地位を固めている。
た。 このアルバムのプロデューサーであるディッ
だが、ボックがワールド・パシフィックで蓄 ク・ボックは単純な再発盤に変化を求めるた
積した貴重な財産も見捨てがたく、かって人 め、ジェラルド・ウィルソンのブラスとスト
気の高かったレコードの再発盤もてがけるこ リングス編成をクリエイトさせることに思い
とにした。 ついた。
この頃、ウェスはヴァーヴで大物といわれる ウィルソンのブラス・ライティングが曲その
スターにのし上がり、レコーディングのバッ ものを複雑にしているが、ウェスのサウンド
クにストリングスやブラスを配したレコード を殺していない配慮が実に気に入った。
がよくヒットしていた。そのことに眼を着け そのよい例として、彼の【一歩控えた】正確
たボックは、ジェラルド・ウィルソンに相談 なブラス・アンサンブルが〈フィンガー・ピ
を持ちかけた。 ッキン〉を聴いてみてよく解かった。

ストリングスで装飾された曲では、静かなバラッドのソフトなアン
ダー・コーティングとして巧くしあげられており、ウェスのギターを
より一層引き立てた彼独自のロマンチシズムの感性を強調している。
ジェラルド・ウィルソンによるこうした音楽に対する技術の集結が、
ジャズを聴かないリスナーにも受け入れられたのだろう。
ブラスとストリングスの中に融け込むウェスの他にはないサウンドを
車のAMラジオで聴くのが最近の心地よい体験である。
ウェスは人々に語りかけ、安らぎと愛を投げかけ、せちがらい出来事の多い世の中の清涼剤と
なるだろう。もし彼の音楽がなかったら‥‥それはいうまでもないだろ』。
=ライナー・ノーツ=参考
《ア・ポートレイト・オブ・ウェス・モンゴメリ》のオーヴァー・ダビングによるデータ。
A Portrait of Wes Montgomery/Liberty ST-20137:
Wes Montgomery(g) Harold Land(ts) Buddy Montgomery(p) Monk Montgomery(b) Tony Bazley(dr)
1. Far Wes
2. Leila
3. Old Folks
4. Montgomweyland Funk
Same as above plus horns* (#1, 2, 4), and strings (#3) overdubbd.
Gerald Willson, arranger and conductor
Wes Montgomery(g) Pony Poindexter(as) Buddy Montgomery(p) Monk Montgomery(b) Louis Hayes
(dr)
5. Summertime
6. Falling in Love with Love
Same as above except Pony Poindexter out in(#5), plus strings** overdubbd.
Gerald Willson, arranger and conductor
* Horns: John Audino, Larry McGuire, Alex Rodriguez, Jerome Rusch(tp)
Frank Strong, Lester Robertson, Thurman Green(tb)
Mike Wimberly(btb)
Los Angeles; July 30, 1968
** Strings: Israel Baker, Leonard Malarsky, George Poole, Jan Glinka(vln)
Edgar Lustgarten, RayKelley(cel)
Robert Ostrowsky(vla)
Los Angeles; July 31, 1968
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