Have Blues Will Travel/ W.Pacific JWC-509
アルバム名 : Have Blues Will Travel/ The Blues Vol.2 
アルバム番号: World Pacific JWC-509
リリース国 : U.S.A.
リリース年月: 7/1958
メディア  : LP


Wes Montgomery(g) Joe Bradley(p) Monk Montgomery(b) Paul Parker(dr)
                                                               Indianapolis; Dec.30,1957
          Finger Pickin'             [2:59]                        
                     

ここに聴かれる〈フィンガー・ピッキン〉は、実質的にウェスの初リーダー・セッションといえ るが、決して華々しいデビューを飾って注目を浴びたというものではなかった。 1957年12月下旬、パシフィック・レコードのリチャード・ボックはNYへ帰る途中、兼ねてから計 画していたアンソロジ・シリーズ第2弾の1曲にウェスの演奏を加えるべくシカゴに立ち寄った。 以前からウェスの噂を聞かされていたボックは、早速モンクに電話をいれたところから話は始まる がそれについては《モンゴメリ・ブラザーズ・アンド・ファイヴ・アザーズ》のアルバムで詳しく 説明するとして、〈フィンガー・ピッキン〉について調べてみた。 このアルバムで聴けるテイクが、オリジナル2分59秒でウェスは13コーラスを独りで一気に弾きき っている。2年後の1960年、《モンゴメリランド》に収録されている〈サマータイム〉とカップリ ングされ、シングル盤(Pacific X-301)としてリリースされたが収録時間の関係で〈サマータイ ム〉はポニーのアルトがカットされている。 次にこの曲が聴けたのは1968年12月、リバティ・レコードが《ポートレイト・オブ・ウェス・モン ゴメリ/ST-20137》としてジェラルド・ウィルソンのオーケストラをオーヴァー・ダビングさせリ リースした。当時もてはやされたコマーシャルな一枚ではあるがまた違った楽しみかたができた。 そして私を混乱させたのがユナイテッド・アーチスト・レコードよりブルー・ノート・リイッシュ ・シリーズとしてリリースされた《ウェス・モンゴメリ・ビギニングス/ BN-LA531-H2》のことで ある。 ここでは再びオリジナル・テイク同様、オーケストラを外している。この時、出足からアドリブの 違いに気がついた。 「これは別テイクではないか!」、演奏時間も2分30秒と若干短い、「これは一大発見だ!」。 喜び勇んで友人のギタリスト、小泉氏に確認を依頼した。 その結果、「これは今に始まったことではないが既にジェラルド・ウィルソンがその混乱的作業を していた。」という。 つまり、彼はオーケストラを被せる段階で13コーラスのアドリブ構成を(8)(9)(10)(11)(3)(4)(5) (6)(7)(12)(13)と入れ替え、第(1)(2)アドリブをカットしてしまった。 《ビギニングス》はこのズタズタに鋏をいれたテープを無神経にも使ったという訳である。     1996年7月、キャピトル・レコードよりパシフィク時代のウェスをとらえたCD《フィンガー・ピ ッキン/CDP 7243 8 37987 2 8》がリリースされたが同じブルー・ノート系列として引き継がれて いた2分30秒の〈ズタズタ・テイク〉が収録されている。 輝しくなかったウェスのデビュー・セッションを改めて多くのファンに聴いて戴きたかったが、も はやそのマスター・テープはこの世に存在しないのであろうか。