Wes Montgomery(g) Joe Bradley(p) Monk Montgomery(b) Paul Parker(dr)
Indianapolis; Dec.30,1957
Finger Pickin' [2:59]
ここに聴かれる〈フィンガー・ピッキン〉は、実質的にウェスの初リーダー・セッションといえ
るが、決して華々しいデビューを飾って注目を浴びたというものではなかった。
1957年12月下旬、パシフィック・レコードのリチャード・ボックはNYへ帰る途中、兼ねてから計
画していたアンソロジ・シリーズ第2弾の1曲にウェスの演奏を加えるべくシカゴに立ち寄った。
以前からウェスの噂を聞かされていたボックは、早速モンクに電話をいれたところから話は始まる
がそれについては《モンゴメリ・ブラザーズ・アンド・ファイヴ・アザーズ》のアルバムで詳しく
説明するとして、〈フィンガー・ピッキン〉について調べてみた。
このアルバムで聴けるテイクが、オリジナル2分59秒でウェスは13コーラスを独りで一気に弾きき
っている。2年後の1960年、《モンゴメリランド》に収録されている〈サマータイム〉とカップリ
ングされ、シングル盤(Pacific X-301)としてリリースされたが収録時間の関係で〈サマータイ
ム〉はポニーのアルトがカットされている。
次にこの曲が聴けたのは1968年12月、リバティ・レコードが《ポートレイト・オブ・ウェス・モン
ゴメリ/ST-20137》としてジェラルド・ウィルソンのオーケストラをオーヴァー・ダビングさせリ
リースした。当時もてはやされたコマーシャルな一枚ではあるがまた違った楽しみかたができた。
そして私を混乱させたのがユナイテッド・アーチスト・レコードよりブルー・ノート・リイッシュ
・シリーズとしてリリースされた《ウェス・モンゴメリ・ビギニングス/ BN-LA531-H2》のことで
ある。
ここでは再びオリジナル・テイク同様、オーケストラを外している。この時、出足からアドリブの
違いに気がついた。
「これは別テイクではないか!」、演奏時間も2分30秒と若干短い、「これは一大発見だ!」。
喜び勇んで友人のギタリスト、小泉氏に確認を依頼した。
その結果、「これは今に始まったことではないが既にジェラルド・ウィルソンがその混乱的作業を
していた。」という。
つまり、彼はオーケストラを被せる段階で13コーラスのアドリブ構成を(8)(9)(10)(11)(3)(4)(5)
(6)(7)(12)(13)と入れ替え、第(1)(2)アドリブをカットしてしまった。
《ビギニングス》はこのズタズタに鋏をいれたテープを無神経にも使ったという訳である。
1996年7月、キャピトル・レコードよりパシフィク時代のウェスをとらえたCD《フィンガー・ピ
ッキン/CDP 7243 8 37987 2 8》がリリースされたが同じブルー・ノート系列として引き継がれて
いた2分30秒の〈ズタズタ・テイク〉が収録されている。
輝しくなかったウェスのデビュー・セッションを改めて多くのファンに聴いて戴きたかったが、も
はやそのマスター・テープはこの世に存在しないのであろうか。
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