THE VEW FROM WITHIN / ORIN KEEPNEWS

 だが、私が最も興味をそそられたのはウェ    私が彼に対して幾分偉そうな口調でいったこ スとマッコイがジョン・コルトレーンの求め    とは『もっと忍耐強くあれ、一年かそこら前 に応じて一緒に演ったという事実である。     まで君は全くの無名だった。かっては無一文 これまで述べてきたような人々のウェスへの    の放浪者のようなものだったのに、それが今 熱狂ぶりに加えて、殆どのジャズ・ライター    では無一文でもスターだ。何と凄い出世じゃ からもいち早い賛同の声(グリーソン、ジョ    ないか』、ということだった。      ン・ウィルソン、ナット・ヘントフといった    現実に、初めて大きな経済的成功が到来した 面々が、新人のミュージシャンにむけたとは    のはリヴァーサイドを移籍してからのことだ 思えない発言をしたことをとり挙げておくべ    ったが、このことをとりあげるたびに私は一 きだろう。                   つの問題にぶつかる。【晩年】とは対照的な 彼らはウェスのことをチャーリー・クリスチ    【初期】のウェス・モンゴメリに関しての問 ャンと同等に扱うような大胆な評価で仲間入    題だ。 りさせてしまったのだ。             このことは世間からの根強い先入観があって もっともこの評価は極めて正確なものと思う    彼への佳人的評価と結びついている。 )がウェスに自信を持たせ始めたのだった。    私は今までモンゴメリのコンボ・スタイルの ところが大規模的なファン支持となるとそう    アルバムにおいて、厳密な意味のジャズのプ 簡単にはいかなかった。             ロデュースを何気なくこなしてきたが、今、 彼は実際一夜にして人気投票の第一位に輝い    振り返ってみると彼にとって最も創造力に富 たわけだが、他の多くのミュージシャンたち    んだ音楽的土壌と成るべくして行なわれてき もウェスの悲運から学べるように、ダウン・    たのであった。 ビート誌の称賛だけでは食べていけないこと    ウェスのレコードの大部分には一流のリズム が解かるだろう。                ・セクションをただ配したに過ぎないような 世界的に偉大なジャズ・ギタリストとして支    気もするが、これらの後につくられたアルバ 持を受けながらにも名誉だけでは金は稼げな    ムの数々はビッグなセールスを得たもので、 いという不道理さに当然のことながらウェス    確かにグレードの高い制作環境を持ちレパー にとって辛いことであった。           トリーもポップ指向で相対的にインプロヴィ                         ゼーションを抑えたものばかりである。
 これらに比べると初期の作品のほうがはる    、同時に周りのアーティストに対する勝利宣 かに大きな存在意義や、永続的価値を持って    言となる。だが結果において富も名声も追求 いるように私は感じられるのだ。         しない場があって、そこではセールス中心主 私の立場にのしかかるのは、他のプロデュー    義の束縛から逃れて私もよく馴染んでいる本 スによって成された莫大なレコード売り上げ    当のウェスのサウンドが聴けるならそれを望 の重みである。                 だろう。 しかし私にあるのは音楽をテーマにしたスト    いずれにせよ、話の残りは1968年におけるウ レートで遠慮のない考えや気心の知れたミュ    ェスについてのことだが、彼は何の前触れも ージシャンの意見、それにウェス自身の意見    なく心臓発作に襲われて早すぎる死を迎えて もあったが私も考えなければならなかった。    しまった。 確かに彼はその後の富と名声をリヴァーサイ    しかし私が察するにいつ彼がこの世を去ろう ドと手をきってヴァーヴと契約することでそ    とその死は早すぎるものとなっただろう。 れらを得たのだ。                私とウェスとは幾つかの点で非常に類似した しかし、彼がヴァーヴで最初のビッグ・サク    部分があった。 セスとなった《ゴーイング・アウト・オブ・    ひとつは、私と彼の生年月日が僅か4日間し マイ・ヘッド》を気に入らないと私にいって    か違わなかったこと(二人とも魚座)だろう いたのを思い出す。               。一緒に仕事をすることがなくなってからと とんでもない理屈で、彼がその成功を気に入    いうもの私とウェスは生涯最後の3年間には らないからといっても現実として、『このア    余り逢うこともなくなっていたが、でもお互 ルバムが与えてくれたものを君は素直に受け    いへの親愛の情は少しも変わることはなかっ いれるべきだ。私にはこのアルバムを嫌うこ    た。 ともできるが、君にその自由はないのだよ』    彼以外に私に大きな影響を与えた人物は世界 と私は説いた。                 中でも7人といないことをいっておきたい。 なによりも切実に何のためらいもなく私が嫌    (訳注:はっきりとは言明していないが、後 うことができる事実は、私が最高のプレイと    の6人はセロニアス・モンク、ソニー・ロリ はほど遠い状態に陥ったと思わざるを得ない    ンズ、キャノンボール・アダレイ、ナット・ ような形で、ウェスが大観衆の前に晒されて    アダレイ、ビル・エヴァンス、ジョニー・グ いるということである。             リフィンと察せられる。) 彼の音楽を支持することが彼への賛辞であり                         =ザ・ヴュー・フロム・ウィズイン/オリン                                 ・キープニュース著=参考

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