リヴァーサイドにいた頃を振り返ってウェスは次のように語っている。 「僕は本当のジャズ・ファンのために小さなグループと一緒にレコーディングしてきたが、その後 はビッグ・バンドとラテン・ビートを使ったり新しいアレンジで特別なバック・グラウンドを編成 し、セッションを始めたんだ。 とにかく僕は余計なことを考えずに、テイラーの言う通り進めたんだが、彼は素晴らしいアレンジ ャーであるオリヴァー・ネルソンを起用して僕にこういったんだ。 『ただそれをオクターヴでプレイすればいいんだ。』と、そしてそれが何と8万枚を超えるヒット になり、今も続いているんだ。」 評論家という者は、常に自分のこだわりの中で自分の主張を正当化しようとする、あたかも真実の ように。だがウェスに関しては通用しなかったようで、彼がCTIに移籍してからもその人気は高 まる一方であった。
           〈SUN DOWN〉別テイクの真相 California Dreaming/Wes Montgomery/Verve V6-8672 アルバム名 : Jazz Spectrum Vol.8/Wes Montgomery アルバム番号: Metoro 2356.009 リリース国 : Germany リリース年月: 1967 メディア  : LP

             ・Sun Down (alt. take)              Metoro(F)  2356.008     by M.Ruppli
           ・Sun Down (alt. take)              Metoro(Eu) 2356.009     by W.Bruyninckx
             ・Bumpin' On Sunset (alt. take)     Metoro(Eu) 2356.009     by W.Bruyninckx
           
 いつの頃だったか、ミシェル・ルプリやブリュニンクスのディスコグラフィに〈サン・ダウン〉
や〈バンピン・オン・サンセット〉の別テイクにヨーロッパ系のレコード番号が付けられ記載され
てきた。
それ以来、私は上記2枚の《Metoro(F)2356.008》フランス盤と《Metoro(Eu)2356.009》のヨーロ
ッパ盤を随分長い間探し求めた。
或る時、ドイツのコレクターとコンタクトをするうちかの有名なフランスのデイスコグラファであ
るミシェル・ルプリを紹介していただいた。
彼は今、セロニアス・モンクのディスコグラフィを手がけていると聞いたので、早速日本で入手可
能なモンクのディスコグラフィを贈り、〈サン・ダウン〉の詳細を尋ねてみた。
「そう、メトロ・レーベルよりリリースされた時だった。ある雑誌に〈サン・ダウン〉が別テイク
であると言う記事をみて、一時的にリスト・アップしたものなんだ。」と答えてくれた。
この曲を是非とも聴いてみたいのですが・・・「このレコードは "ジャズ・スペクトラム" シリー
ズとしてヴァーヴの大物ミュージシャンのベスト・ヒット集として、フランス・メトロよりリリー
スされたのだが、今となっては確実に探し当てるのは困難だと思うよ。」という返事とともに、私
がウェスのディスコグラフィを手がけていると聞いて "ジャズ・マンスリ" の記事を贈っていただ
いた。
その後、確か1995年頃だったと思うがついに念願の《Metoro(Eu)2356.009》ドイツ盤を入手した。
ついにフランス盤は未入手のままだが、内容的には同じと思われ、はやる気持ちを抑え早速2曲の
別テイクを聴き比べてみた。
〈???〉どこが違うの〈???〉別段なんの違いもない。続いていた緊張がいちどに弛んだ。
玉手箱を開けた浦島太郎の心境である。しかし、コレクターとして、デイスコグラファとしての宿
命と受けとめ今後も地道に活動したいと思う。よろしく。