ここでウェスに関する実に興味ある話しが残されている。ウェス派第一人者として世界的にもオクタ ーヴ・プレイアーとして有名な宮之上貴昭 (Miyanoue Yoshiaki)氏がSJ誌1986年4月号の "ウェス ・モンゴメリとモダン・ジャズの時代" で彼の独り言ふうのエッセイが実に面白いので、氏には無断 ではありますが是非紹介したいと思います。 「このあいだ、オルガンのジミィ・スミスと一緒に演ったんだけど、ジミィさんはあんたの事を『ウ ェスは麻薬はもちろん、一滴の酒も飲まなかった。すべてを演奏で発散することが出来たからだ』と 言っていた。 本当に無心でギターを弾いていたんだね。 でもタバコの量が多すぎるような気もするけどね。だってほとんどの写真は、タバコを咥えているん だもん。ロン・カーターはあんたのことを『とても無口だ』と言ったけど、ジミィさんにそのことを 話すと『ウェスが無口だって?とんでもない。人見知りは激しいけど、女の子にはむちゃくちゃ優し くて急に多弁になるんだぜ・・』ときた。・・いやらしい奴め。 面白い話しもジミィさんから色々と聞いたよ。 片田舎のインディアナポリスからNYにでてきたばっかりの頃、ジミィさんのグループに呼ばれて大 きなホールで演奏することになって、いつもちっちゃなクラブでしか弾いたことがないから、幕が開 いて客の大歓声と拍手の大きさに驚いて、椅子から落ちそうになったとか。 たださ、あんたの〈インプレッションズ〉を聴いたら僕の百倍のスピードで弾いてるじゃん。 テンポじゃなく、アプローチのスピードだよ。 いい加減頭にきたから、どっか皮肉ってやりたいもんな。でもあんたは何の気取りも見栄もなく、と ても人間らしくていいね。ただひたすら音楽を愛し続けてきたんだね。」 どうです、宮之上氏のウェスへの思い入れ、並じゃないですね。だからこそ今の彼があり、ウェス派 第一人者と言われる所以がここにあるわけです。彼こそ本当のウェス・ファンなんですね。 そんな宮之上氏を中心とした "スモーキン" というファン・クラブが結成されサイトが開設されてい ます。一度アクセスしてみてください。
Touch Of Love/Yoshiaki Miyanoue アルバム名 : Touch Of Love/Yoshiaki Miyanoue with special guest Jimmy Smith アルバム番号: VAP 30016-28 リリース国 : JAPAN リリース年月: 11/1981 メディア  : LP

Yoshiaki Miyanoue(g) Jimmy Smith(org) Kenny Dixon(dr) Hiroshi Hatsuyama(vib) Q. Ishikawa
(ts) Yuzo Yamaguchi(b)
                                             AOI Studio, Tokyo Japan; Sep. 26 & 29, 1981
          Fried Cornbread          [4:56]    Y.Miyanoue
          Georgia On My Mind       [5:55]
          Smorkin' In The Rain     [6:07]    Y.Miyanoue
          Body And Soul            [2:38]
          Touch Of Love            [8:43]    Y.Miyanoue
          Tokyo Air Shaft          [8:18]    Y.Miyanoue
          Thank You, Jimmy         [3:23]    Y.Miyanoue                


何気ないエッセイのようですが、宮之上氏とジミィは実際に共演していたんです。
リリースされた当時、私も買いそびれていたのですが宮之上氏と親交の深い秋田のレコーディング
・エンジニァ、河内(コウチ)氏のご好意により聴かせていただいた。
宮之上氏のリーダではファースト自主制作アルバムから数え、5作目にしての超大作であり快挙で
ある。
なかなか大物をゲストに迎えるなんてことは実現させにくいものであるが、そのライナー・ノーツ
で「ミヤは、ギターを本当に弾きこなせる素晴らしいアーティストです」、とジミィが賞賛する。
恐らくジミィは宮之上氏のプレイにウェスへのノスタルジアをダブらせ、感動に咽ていたのではな
いかな。
2曲のスタンダード以外は、ご覧のように宮之上氏の才能で占められており、これら初期の秀作に
是非とも再発していただきたい一枚である。