wes quartet パーフェクト・ウェス
                                      ピエァ・ラッツ ピエァ: あなたがギターを始めた頃、インディアナポリスではどんなことがあったのですか? ウェス: 別に何も起こらなかったし、僕自身にも・・・何もなかったね。 ピエァ: ミュージシャン(インディアナポリスに)はかなりいたのですか? ウェス: かなりの連中がいたが、ベースのフィリップ・スチュアートなんか悪くなかったし、カール ・パーキンスは後でカリフォルニァに出ていったから今は少なくなったよ。 ピエァ: ギターを弾き始めたのは何歳でしたか? ウェス: 19歳だよ。 ピエァ: あなたの兄弟は既に活動していたそうですが? ウェス: そう "マスターサウンズ" というバンドを組んでカリフォルニァで演ってたんで、僕も58年 から2年半ぐらい一緒になって演ってたよ。でも当時は東海岸での仕事が多く活動拠点とす るシスコからどんな小さな仕事でも5000Kmの距離を何度も往復するのが嫌になって、結局ひ とりインディアナポリスに帰ったよ。     それで、メル・ラインとドラムスのポール・パーカーとトリオを組んで "ハブアブ" という クラブで仕事をし始めたんだが、あとでリヴァーサイドで初レコーディングした時の連中な んだ。 ピエァ: それがきっかけになったわけですね。 ウェス: そう、NYに着くとキャノンボールが僕のためにリヴァーサイドで初めてのリーダ・アルバ ムをレコーディングさせてくれたんだ。     僕にとって凄いことだよ。大きな意味を持つスタートだったと思うよ。  ピエァ: ワールド・パシフィックであなたの名前で出したレコードや、ジョン・ヘンドリックスと一 緒に演ったレコード(《A Good Git Together》) はそのこと (リヴァーサイドでのデヴュー ) より以前のことですか? ウェス: その通り、1957年のことだよ。 ピエァ: その他にもいくつか出されましたか? ウェス: そうだね。彼らは色々とやってくれたよ。レコーディングした曲 (訳注: 多分、初リーダと なった〈フィンガー・ピッキン〉のことと思われる) をあるレコードにいれ、どんな結果が でるかやってみた。     先ず、僕のことを知っている連中が『よう、ウェス・モンゴメリを聴いてみろよ』と広めて くれたのが良かったと思う。というのも皆ミュージシャンの話しは聞いてくれるからね。      こんな風にしてだんだん知られていくようになったと思うんだ。 ・・・・ウェス・モンゴメリは自分の特徴であるプレイの堅実に加え、沈着冷静で優しさを込めてイ ンタヴューに応えている。・・・・ ピエァ: あなたはその後次々とレコーディングしたのですが、レギュラー・メンバではなかったです よね。 ウェス: スタジオ録音は決まってたわけじない。僕はグリフィンと一緒に "ツボ" で演ったレコーデ ィングのようにホーンを加えたり、トリオやクォーテットを組んでレコードをだしてきが、 今ストリング・オーケストラでレコーディングしようかと思っている。 ピエァ: どんなメンバでプレイするのがお好きなんですか? ウェス: とくに考えたことはないが、それよりミュージシャンのことを考えるようにしているので、 決まったスタイルやメンバには拘らないほうがいいと思うね。 ピエァ: 今のスタイルでプレイするようになってからどれくらいになりますか? ウェス: 8ヶ月かな。 (訳注: この度の渡欧のメンバのことをいっていると思うのですが、すると結     成が64年11月だから計算が合わない???) ピエァ: アーサー・ハーパーは以前J・J・ジョンソンと一緒に演っていたんですか? ウェス: そうだ。ハロルド・メイバーンと同じようにね。カリフォルニァ出身のジミー・ラヴレイス     はお調子者のリチャード・ホルメスと演っていたが、僕もピアノのメル・ラインとドラムス     のジョージ・ブラウンとトリオを組んでいたよ。 ピエァ: そのトリオとはレコーディングしたのですか? ウェス: ああ、《ボス・ギター》のことだろ。このメンバとはもう一度レコーディングしたんだが、     リヴァーサイドが倒産したんでリリースされなかった。でも悪い出来じゃないんでそのうち     陽の目をみると思うよ。 ピエァ: これからも今のメンバで演っていこうと考えているのですか? ウェス: とくに目標をもって考えているわけじない。いいのか、よくないのか判らない。     ミュージシャンはもっと自分のプレイについて考えないと。ちゃんとできればいつでも一緒     に演ることができるんだ。 ピエァ: あなたの前にオクターヴ演奏するプレイヤーを聴いた事がありますか? ウェス: ひとりもいないね。 ピエァ: とても難しそうですね。 ウェス: そりゃ難しいさ。思わぬことがきっかけとなったんだが、ギターをチューニングするって大     変なことなんだ。とりわけ新しい細い弦はロー・ポジションとハイ・ポジョンでは微妙に音     程の差があるんだ。     で、全てのポジションにわたって同じ音のオクターヴでチューニングすることにしたが、や     がてもっと速く弾けるようにとスケールでも練習するようになった。     『とくに努力せず "偶然" オクターヴ・ソロが弾けるわけないだろ』と、自分に言い聞かせ     ながら真剣に練習を重ねたが、ほんとうに楽しいもんじゃなかったね。     でもこんな美しいサウンドで演らない手はないだろうから、問題なく弾けるようになろうと     思ったが、やっぱり簡単にはいかなかったよ。     だが諦めなかった。僕はどんなオクターヴでも演れるよう、またそれが夢だったからね。     やがて少しずつできるようになってやっと自分を満足させることができるようになった。     誰もが同じように考える訳ではないだろうが、本当に美しい音楽だと思う。音楽の目的とい     うものはひとつのスタイルを築くことなんだ。 ピエァ: 初めから親指を使って弾いていたのですか? ウェス: 初めは皆と同じようにピックを使っていた。少し不安はあったが案の定、家族や近所からア     ンプの音がうるさ過ぎるといってきたのでアンプなしで弾いたところ練習にならなかった。     違うんだよな。 で、親指を使えば少しはましかなといことで再びアンプにつないだんだ。 ピエァ: でも親指の動きはピックと同じようには動かないと思うのですが? ウェス: そうだね。とっても難しいよ。 ピックでは倍の速さで弾けるが親指では筋肉に限界がある。だけどやっぱり親指のサウンド     が好きでね。 ピエァ: クラシック・ギターに近い感じですか? ウェス: そうそう、それよりもっとソフトかな。ピックでもいいサウンドをだすギタリストはいるが     、でもみんな口を揃えてソフトさが違うって言うんだ。 ピエァ: レス・スパン(ギタリストでフルート奏者)はあなたを見習おうとしていますが、他にもい     ますか? ウェス: そうだな、ジャック・マクダフと演っているジョージ・ベンソンがいたね。     奴はいつもそういう風に弾いているわけではないが、でも使えるようになっている。 ピエァ: モダン・ギタリストといわれたスタイルで、例えばジム・ホールやケニー・バレルをみても     それぞれ違っていますよね。 ウェス: ギターに関して言えば、色々な感情を表現することができると思うんだ。僕達はそれぞれの     楽器にお互いが密着しているんだよ。 ピエァ: でもそれほど直接的な関係ではないですよね。ギターの中に息を吹き込むわけでもないし、     ボディを叩くわけでもないから動き自体は小さなものですよね。 ウェス: 解からないだろうが、特別の関係があるんだよ。指の先から自然と涌出る音。丁度テナーが     簡単にだせる外れた音階があるようにね。でも普通の音階はそれぞれ独自の触れ方、調子が     あるのさ。 ピエァ: レコーディングで、ギター同士の共演はしないのですか? ウェス: それはギターの持つ音質や響きがそれぞれ違うため、ハーモニーが合わないんだ。     ほらケニー・バレルやジム・ホールと僕を比較してみるとよく解かるが、お互いのサウンド     やアプローチも違う訳だからミックスしても多分綺麗に聴こえないだろうね。     サックスやペットのようにはいかないと思うよ。 ピエァ: 先人にあたるギタリストでは、どんな人のを聴きましたか? ウェス: 僕はチャーリー・クリスチャンの影響を受けたが、彼の総てを聴いたわけではない。     でも彼の曲を聴くと勇気付けられるし、他のミュージシャンのプレイを観るのもたいへん勉     強になった。こうして多くのことを知ったよ。 ピエァ: 若いギタリストはどうですか?     ウェス: 詳しくは知らないがパット・マルチーノ、シカゴ出身のジョー・ディオリオ、それから君も     知ってるだろうがジョージ・ベンソンあたりだね。     そうそう、モントリオール出身のネルソン・サイモンのコード弾きはかなりのスピードだか     ら、実際に観ても自分の眼を疑ったよ。     それに、ソニー・グリネイジ、まだまだ沢山いるな・・・ジョー・パスは実際に観たことは     ないが、レコードではよかったよ。  ピエァ: ジャズ・ギターの将来は明るいと思われますか? ウェス: ああ、まだ始まったばかり、これからだよ。 ピエァ: ギターはこれからのジャズ・スタイルに適しているのでしょうか? ウェス: かも知れない。確かにギターは魅力的な楽器だ。でも総てのジャズのスタイルにそう簡単に     は受け入れられないのか、特に管楽器の連中にはギターへの理解がないんだ。     だからプレイしているとき、静かに弾けとか、リズムを刻めなどと全く人を馬鹿にしている     よ。 ピエァ: フレディ・グリーンに続きたいとは思いませんか? ウェス: とんでもない。きっとギター界には新しい改革が起きると思う。もう直ぐね。 ピエァ: 具体的にはどういうことですか? ウェス: さーね。ただそんな風に感じるだけで、僕はこの6ヶ月間に今まで聴いてきたことよりも、     更に新しいものを聴いてきた。本当に多くの可能性があると思うんだ。     僕も音楽的に完璧を目指したいし、形にとらわれない事が大切と考えている。     そう言うと僕も古いのかも知れないがでも僕にとって大切なのは "フィーリング" なんだ。                     = JAZZ HOT May 1965 = 参考