Gibson L5C
ギブソンの便箋に書かれたウォルター・カーターからの添付の
レター (1995年7月19日付)にはこう書かれています:
「ブライアンからお聞きになったと思いますが・・このギターは
【カントリ・ミュージック名声の殿堂入り】におけるギブソンの
展示会のオープニングを飾る目玉となりました。
このギターをディスプレイに飾れるレベルまでに修復できること
を楽しみにしています。」

ギブソンのカール・ハンセンからの1998年5月11日付のファク
ス のコピーを紹介します:
「そのギターは、届けられた時ひどく損傷していました。
火災に遭ったことに加えて、焼け跡の中からこのギターを見つけ
た古物商が(火災で損傷を受けたフィニッシュを剥がすのに)強
力な家具用の剥離剤を使ったためです..家具用剥離剤で溶けて
しまったバインディングを取り替えるために、私たちはいちから
バインディングを手作りしなければなりませんでした。
また、ピックアップとCAPは徹底的な洗浄と研磨によって元の
状態に戻すことができました。

 修復中のハートのL5

最大限の努力を払って、私たちはこのギターをオリジナルの状態に近づけました..ギブソンは
ウェス用に3本のL5を製作しました。(訳注: このハートとダイアのL5とあと1本は?)
私たちがウェスの家族と話をしてわかったのですが、このうちの少なくとも2本は、ピックガー
ドの脇のトップ板に彼が指を乗せた個所が摩耗して薄くなっていたそうです。
そこで1本にはハート形の真珠貝を埋め込み、もう1本にはダイア形のオニキスを埋め込んだの
です。」
(ノート:どちらのインレイもギブソンの工場から出荷した時点では埋め込まれていなかった。)

この楽器はアコースティックのトーンバー・プレイスのジャズモデルのL5Cとして作られま
した。
そして、フィンガーボードのエンドの低音側に2つの小さな穴が残っています。
このことから、元々この楽器にはジョニー・スミス・ピックアップ(製造中止になって久しいモ
デル)が取り付けられていたと思われます。
いつごろウェスが今の状態(フィンガーボードのエンド部にシングル・ハンバッキン・ピックア
ップを取り付けた状態)に変えたのかはわかりません。

ハート形の真珠貝
このギターに添付されている手紙の中で、発見者が次のように書いています:
「我々がこのギターを手に入れたのは1995年のことで、骨董商が修理の見積を依
頼しにボロボロのファイバーボード製ケースに入ったこのギターを店に持ち込ん
だのです。
この紳士はインディアナポリスのある民家の全財産を買い取りました。だからこ
のギターが誰の財産だったのかは知りません。
強い熱にさらされて、つまみは溶け、ラッカーは溶解していました。

ただしギター本体は熱によるダメージを受けていませんでした。
調べていくうちに、ピックガード近くのトップ板にハートの痕跡があることに気が付きました。
ケースの中を捜すと縦に“Wes Montgomery”と刻印されたハート形の真珠貝が見つかりました。
このギターがいかに貴重なものであるかが分かったのはこの時でした。
シリアル番号からギブソンが確認したところ、まさにこのギターは1963年にウェス・モンゴメリ
の要望によって作られた特注品でした。
このギターが貴重なものであることを認めたギブソンは、私たちに対して修復を無料でやる代わ
りに、彼らの修復能力を示すために展示会や発表会などで使わせてほしいと言ってきました。
私たちは1995年の "ナシュヴイル・NAMM・ショー" でのギブソンの記者会見のために、この
ギターを送り届けました。」

この【ハート入り】ギターの修復プロジェクトがきっかけとなって、ギブソンはL5のウェス
・モンゴメリ・モデルを数量限定でリイシューしました。
ギブソンは1998年の冬期 "NAMM・ショー" の後でこの完全に修復されたギターを私たちに返
してくれました。
この楽器のバック・ボディとサイドは木目が対称をなす美しいカーリー・メイプルで作られ、ネ
ックは3つの部分がすべて5層構造の美しいメイプルで作られています。
この楽器は弾きやすいように完ぺきに調整されています。
アコースティク(生音)が素晴らしく、アンプを通した音も泣けてくるような美しさです。
私たちがこのギターを所有しているということが活字に載って以来、多くの人たちがショー・ル
ームへ訪れ、見せてほしい、触らせてほしい、弾かせてほしい、あるいは一緒に写真を撮らせて
ほしいといった要望が絶えません。私たちは誠実な付け値を考えています。

 

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