楽器への拘り(It is concerned to the instruments)
ウェスはストラップでギターを吊っているほかに、右手の
指を開いてピックガードの下に当てることによってギターを
支えていた。
ウェスの有名な2台のカスタムメイド・ギターのピックガー
ドの下にインレイが埋め込まれている理由はここにある。
固い素材によってギターを保護しているのである。
実際、初期のギターには指によって穴があいてしまったもの
がある。
ウェスの愛器はL5CESで、1958年から1968年の間に少なくとも6台 (訳注: 個人的には4台と
思う) を所有している。常に014〜058のゲージのギブソンのHiFiフラットワウンドを張っていた。
また親指によるソフトなサウンドを補正するために、明るい音のする【チューン・オウ・マチック
/ tune-o-matic 】と呼ばれる金属製のブリッジを使っていた。
よく使っていたアンプはJBLスピーカー搭載のフェンダーのツイン・リヴァーブである。
しかし満足するアンプに出会ったことは一度もなかった。セレーヌによれば、家にはいらなくなっ
たアンプや改造したアンプで一杯になった部屋があったという。
晩年は新製品のトランジスタ・アンプも試していた。スタンデール・カスタムや別のJBL搭載の
アンプなどである。
ウェスがロンドン滞在中に親しくしていたアイク・アイザックスによると、アンプのトレブルを常
にフルに設定していたらしい。これも親指のソフト・トーンを補正するためである。「ウェスのア
ンプは他の連中にはとても使えなかったよ。」とアイクは回想する。
ウェスが新しいアンプ・テクノロジーに対して関心がなかったわけではない。当時はまだエフェク
ターもさほど発達していなかったが、ウェスはスロー・バラッドで、トレモロとリバーブを使ってバ
イブ的なサウンドを作っている。
アンプに対してはいろいろな要求があったウェスだが、ギターはベーシックな状態で使っていた。
「普通のギターさ。何も特別なものはほしくない。たとえ落っことしてこわしても、誰かのを借り
ればいいってわけだ。」とウェスはロンドンの仲間に話している(クレッセンド1965年5月号)。
ギブソンが60年代中期にウェスのために作った2台のシングル・ピックアップのL5CESも、構
造が多少異なる程度である。
先ほど書いたように真珠貝のインレイは保護と飾りのためであり、リア・ピックアップを取り付け
ていないのは、単にウェスがリアの音が嫌いで使わないからである。
ウェス・モンゴメリは自分が何を言いたいのかを知っていたし、それを表現するための道具を見
つけていた。現在の基準では、かれのギターとアンプはかなり保守的なものであるが、彼の生み出
した音楽は30年以上経った今でも新鮮で生命力にあふれている。
=Belgium, 1965/WES MONTGOMERY/VESTAPOL=ライナー参考
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