Analogy
人間をひとつの馬車にたとえることができる。
車(荷車・客車)・馬・御者・主人という、 それぞれ独自の四つの体がつながれた、ともに働くひとつの馬車に・・・
だが、実際問題いったい誰が主人なのだろう? |
『ベルゼバブの孫への話』p.725〜▼に、アナロジーとして馬車の全体像のあらましが記されている。
全文を抜粋するには長すぎるので、そこに書かれていることを中心に下図に要約してまとめてみた。
(本来、このように区分して線引きできない部分もあることを念頭においてではあるが…)
現状 | (御者の)修練項目 | 方法 | 成果 | |||
第一の体
車 肉体 |
動作反射機能を具えた身体 | 48法則 |
<適切に働けない>状態 ●様々な材料からできていて、機構がひどく込み入っいる組織の成長しつつある各部分を、全部教育して適切に導く特殊な知識、能力が欠如している ●細部は「脇道を進む」目的にかなうように作られているという事実を見逃している(誤解の最大原因)
|
馬車の調整法を知る
(御者の現状/ その必要性を知らないし、考えたこともない) |
||
<構造上の目的の誤解>状態 ●「脇道を進む」ことによる強い振動によって、均等に金属部に行き渡るように作られている、必要不可欠な「円滑油」は、町の中の「平らでなめらか所」だけを動きまわるようになり、行き渡らなくなっている ●「油」の少ない部分は熱をもち、しまいには真っ赤に焼けて他の部分まで駄目にする ●逆に部分によっては油のやりすぎで、馬車全体の動きが損なわれている ●そうなると、馬が引くのも難しくなる
|
油をさす
(たとえ油をさすにしても正確な知識がなく、最初に来た者の指示に盲目的に従っていい加減にしている) |
過 去 の 方 法 例 ▽ ▽ |
||||
<故障>状態 ●平坦な道を進むことに慣れてしまった馬車が、何かの理由で脇道を通らなくてはならなくなると、必ずどこか故障する(ナットがはずれる・ボルトがねじ曲がるなど、何かがゆるんでくる) ●脇道を行くには大修理をしないと目的地に着けない(「灯油」で分解清掃→組み立て直し・部品交換)
|
|
フ ァ キ | ル の 道 |
||||
<貸馬車>状態 ●<私>という主人の獲得がないかぎり、いつまでも乗客が好きな時に乗り降りする貸馬車のまま
|
||||||
<荷馬車>状態 ●構造上、乗客だけではなく、様々な荷を乗せられるようにはできてはいるが、乗客が不在で、馬が引けないほどの重量のものを乗せていることがある
|
||||||
シャフト | 磁気a | 連結部 | ↓偶発的 |
(shock!) (苦痛、疲労を伴う 半意識的刺激・振動) |
↑ 血液 |
主人の意志を表現するための協調的具現 |
馬具のつなぎ方 |
||||||
第二の体
馬 アストラル体ケスジャン体
|
感情機能とその表現 | 24法則 |
<孤児・無教育>状態 ●小さい時、まわりの不注意・怠慢のため放置される ●特殊な教育は全く受けない ●責任ある存在になのに必要な熱意を表現する母体となるデータが、適切な時期に全く形成されない
|
馬の養育 | ||
<戸に鍵をかける>状態 ●一人ぼっち→「内的生命」は内向し、外に向かっての表現は、ただ惰性によってしか行わなくなる
|
馬の手入れ | |||||
<いつもつながれている>状態 ●ムチ打ちとひどい扱いに対する恐怖におびえることだけに慣れてしまう
|
||||||
<無価値な食べ物しか与えられない>状態 ●カラスムギや干草の代わりに麦ワラだけ与えられる(必要としているものではないものだけ)
|
馬のえさのやり方 |
過 去 の |
||||
<興味も希望ももてない>状態(その裏返し) ●食べ物・飲み物・異性に対する自動的欲求のみに必然的に関心を抱くようになる ●一握りの欲求が満たされた記憶のある場所を目にするや、そこに突進するためのチャンスを窺っている
|
方 法 例 ▽ ▽ |
|||||
<おいぼれ>状態 ●自分のなすべきことがさっぱり理解できない ●惰性とこれ以上のムチ打ちは嫌だという理由だけで義務を果たす (*十全に活きることなく生をとじる)
|
御者と馬の相互理解 のための接触 |
修 道 僧 の 道 |
||||
潜在的可能性 ●逆に(御者のような)教育を受けない分、馬の受け継いだ可能性は失わずに残る ●この閉塞状態の中でも、御者と何らかの関係を結ぶことは可能 ●時には馬も何らかの「言語」を話すかもしれない
|
信頼関係を結ぶ | |||||
手綱 | 磁気b | 連結部 | ↓偶発的 手綱を使って、馬の意識に三つの概念(右・左・止まれ)だけは伝達可能だが、状態は絶えず変わる (大気圏内のさまざな現象に反応する素材でできていて、たとえば雨が降ると膨張しそして収縮するが、暑いと逆のことが起こるようなことのため)
|
(shock!) (二極間の葛藤・摩擦 等による意識的苦悩) |
↑ ハンブレッドゾイン (テンポの密度) |
主人の意志にそった操縦 |
馬の操縦法 |
||||||
第三の体
御者 メンタル体 |
知性
意識 思考活動
|
12法則 |
<ボロをまとっている>状態(それを隠そうとする) ●威厳ある風貌づくりに、ひげをのばす ●やせている場合は、服の中に詰め物をするなどして重要人物づくりに苦労する
|
|||
<雇われ御者><運ちゃん>状態 ●自然の定めた時間を偶然の客を待つ間につぶす ●完全な文盲ではなく、自国の教育をうけている ●(馬同様)ムチ打ちが怖くて働くにすぎない ●たまに命令なく働いても、つまりはチップ目的 ●チップ目的で動くうちに、客の弱みを見つけ、それにつけこみ、利益を得るようになる ●機械的にずる賢くなる方法をおぼえ、おべっかや人を巧みに喜ばす → 嘘をつくことがうまくなる
|
過 去 の 方 法 例 ▽ ▽ |
|||||
時には、強制ではなく雇い主のために何かをやることに興味を示すこともある ●自分の義務についてはほとんど理解していないが、ほんのわずかとはいえ、論理的な思考ができる (理由が失業の恐れや報酬の期待など何であれ)
|
御者の義務を知る |
ヨ | ギ の 道 |
御者の義務の理解 | |||
<半ば居眠り・酔っ払い>状態(最大弱点の1つ) ●周囲の料理人や女中につきまとう ●心のこもったご馳走と1、2杯ひっかれるのが好き ●満腹でご機嫌になり、空想的な白昼夢にふける ●雇い主からもらうお金を、馬のかいば用にでなく、 この弱点の満足のためにちょろまかす
|
主人の声を聞く |
眠らない 起きている |
御者には理解できない言語を主人が話していることに 気づく | |||
<カラスと競争できるが孔雀には追い抜かされる>状態 ●田舎出身の無知な者 →職業柄、教育をうけて、あちこちからつまみぐい的概念表現を身に付ける →その結果、「田舎じみたもの」を侮辱して見下し、憤怒に燃えてこれらを「無知」の一語のもと退ける ●いっぱしの議論(宗教・政治・社会学等)ができると考えていて、似たもの同士での議論好き ●目上の者に対しては奴隷のようにこびへつらう
|
主人の言語の習得 | 習得する | 主人を 理解する | |||
主人の声 | 磁気c | 連結部 | ↓偶発的(精神的欲求・習慣・好み・記憶などから) |
(shock!) (道徳からではなく、 魂からの良心の呵責) |
↑ |
主人の 意志伝達 |
第四の体
主人 原因体 |
私 神性 |
6法則 |
<主人の不在>状態
|
|||
<所有者でない 偶然の客>状態 ●たまたま通りかかって御者を雇い、そして好きな時、解雇するだろう者を、何らかの理由や経緯で、 その都度、あたかも主体のようにみなしている
|
※ Gは過去の方法ではなく、 第四の道 をと・・・ |
*
自分の内に、いかにして「馬車」としての全体と部分を見出すか・・・
「馬車」の中に、「人間」としての「自己」の類似性を重ね合わせてみるということは、
グルジェフが何度も繰り返し言う「自動機械的」偶発から「自由」になる、
「意志」の獲得への足がかりになる可能性を秘めた、有効なものになりえるのかもしれない。
が、同時に、アナロジーとしての「あそびのあるはなし(ことば)」を、科学的用語と同じように考え、
正確につかもうと真剣なばかりに、少しのゆとりも認めずにガチガチに定義したものとして扱っても、
「自由」になるどころか、自ら新たな「枷(かせ)」を作り出すことになるだろう。
また逆に、「野放しの想像」を許す雰囲気的にとらえられるイメージの累積によってそれに頼っても、
やはり同様で、どちらにしても「自動機械的連想」の域を一歩も出るものではなくなるだろう。
いや、そればかりか、それを単に助長するに終始する危険性もあるにちがいない。
問題は、実際に個々人で毎瞬違う「生(なま)の現場」で起こる様々な現象に「寝ぼけず」に立会えるかだ。
往々にして言葉の説明の「あてはめ」でわかったような気になり、また「夢見心地」になったりもするものだ。
類推(アナロジー)の「あてはめ」は「入口」であって、自己との出会いの「出口」ではないはず…。
自己理解の「表現や形容の一つ」として扱えるようになるとき、記述の「言語」には依存しなくなるのだろう。
とはいえ・・・もし・・・
この「馬車」のたとえをその「足がかり」の一つとして使おうというなら、
それなりの徹底さが必要になるだろう。
**********