ペリンのゴンパ
朝、6時半に起き、そして、一杯のコーヒーを飲む。
ステンレスのコップにペットボトルの水を入れて、そこに、コイルヒーターを入れて、お湯を沸かす。
そして、フィルターにコーヒー豆を入れて、お湯を注ぐ。
起きる時間は、毎日同じでは、ないけれども、これは、俺がインドに入ってからの、朝の儀式のようなもので、シッキム滞在中、ほとんど毎日続けていた。
コーヒーを飲み終え、タバコを吸って、宿に併設されているレストランで、チベタン・ブレッドとミルクティーの朝食を食べた。
昨日、ガントクから、ジープで約6時間のところにある、西シッキムのペリン(Pelling)へとやって来た。ペリンの標高は、2,000mほど。朝晩は、夏と言えども、少し冷えます。
ガントクで見送りに来てくれたko君とは、また行く先々で、会えそうなので、ガントクで最後だとは、思っていない。
さてと、これからペマヤンツェ・ゴンパへ行きましょうか。
地図なんて、持っていないので(旅行人ノートのみ)人に道を尋ねながら、テクテクと歩いていた。
今日は、天気は、それほど良くはないけども、自然豊かな道を歩いていると、清々しくて、気持ちがよい。
森林を歩いていて、こんなに心休まるのは、何故だろう?
ネパールでは、精神的に疲れてしまったので、本当に癒されている。
ペマヤンツェ・ゴンパ
ゴンパの門をくぐり抜けて、しばらく歩くと、白いタルチョが、いくつも立てられている。
霧が、だいぶん濃くなってきたので、遠くは見えない。
ペマヤンツェ・ゴンパは、17世紀に建てられたと、ガイドブックには、書いてあったので、古いゴンパだと思っていたが、最近建て直されたのか、新しい感じがした。
お堂の中にあった、デッカイ、マニ車を3回まわすと、鈍い音で、鐘が数回鳴った。
外に出て、ゴンパの周りを歩いてみたが、辺り一面、霧に包まれてしまっていて、何も見えない。
お堂の前には、広場があり、奥には座主が座るような、大きなイスがあった。
広場の横には、集会場のような建物があり、僧侶達が集まっている様子だ。
俺は、外にいる僧侶に「お堂の鍵は?」とチベット語で、言うと、扉を開けてくれて、中へ入れてくれた。
お堂の中は、写真撮影禁止と書いてあったが、それに気づくのが遅く、2枚ほど撮ってしまった。
ここでチベットに居たとき同じように、僧侶と話しをしたかったが、俺の語学力じゃ、思うようにはいかなかった。
ペマヤンツェ・ゴンパにて
お昼ご飯のインスタント・ラーメンの玉子入りを食堂で売店ですすりながら、思った。
ペリンは現在(2004年8月)は、オフシーズンのため、宿や店がほとんど閉まっていて、活気がなく、殺風景だ。リゾート地なので、ホテルばっかりで、歩いていてもつまらない。
建設中のホテルも多く、次のシーズンには、活気が溢れそう。
冬場は、カンチェンジュンガもバッチシ見られる素敵な所ですが。
それにしても、何でインスタントラーメンが、食堂で食べる、トゥクパと値段が変わらないのだろうか?
昼からは、ペリンから5kmほど離れたところにある、サンガ・チューリン・ゴンパへと歩いて行った。
ガイドブックによると、眺めが良いらしいので、霧が晴れて、天気が良くなったので、行くことにした。
再び、人に道を尋ねながら、テクテクと歩くが、なんか、坂道ばっかりで、しんどい。
舗装されていない、細い道路には、深い轍が出来ている。
石を積んだトラックが、俺の横を苦しそうに、通り過ぎた。
途中からは、山を登るように、山頂にある、ゴンパを目指した。
何か、シッキムに入ってからと言うもの、坂や山道を登ったりで、おかげで良い汗かいて、気分爽快です。
ゴンパに近づくにつれて、いくつもの白いタルチョが、竹の棒に付けられて、立てられている。
ゴンパにたどり着くと、僧坊のような建物の前で、小坊主が数人、集まって遊んでいるのか?
お堂の入口の壁画は、壁が剥がれていたり、色あせたりして、無惨な状態だが、壁を白く塗り直して、書き直している最中の箇所もあった。
サンガ・チューリン・ゴンパ
遊んでいた小坊主に、お堂の扉を開けてもらい中へ入った。
中は、薄暗く、湿気を帯びて、ジメっとしていた。
お布施の1ルピーを賽銭箱に入れて、俺は、両手を合わせ、額に当て、目元に当て、口元に当てて、お祈りをした。さらに2階にも案内されて、俺は、小坊主の後に付いていった。
そこでは、若くはないが、初老と呼ぶには若い、中年の僧侶が、一人、経を唱えていた。
壁には、チャムの時に使う、お面も飾られており、その一体となった光景を見た俺は、一瞬、チベットに戻ったのか?と錯覚するくらい、懐かしい、光景だった。
それくらい、チベットでは、このような光景をよく見ていた。
小坊主に「トゥジェチェ(ありがとう)」と言った俺は、お堂を出て、その先にある、大きな石の台の上に立った。ここからの景色は、とても良く、眼下には、森林や点在する家々、それに覆い被さるような霧が立ちこめていたりしている。
雲が多くて、遠くの方までは、見えないが、雲が無ければ、ヒマラヤも見渡せるのだろうか?
それでも晴れていたので、眼下の景色を眺めているだけで、気持ちが良かった。
数人の僧侶が、俺のガイドブックを見ながら、「ポタラ宮だ!これが、ジョカンか?」雑談している。
数人の輪の中心は、俺で、こんな風に僧侶達と接するのも、なんか久しぶりのような気がする。
俺は、みんなの写真を撮ったりと、チベットのゴンパにいたときのような気分になった。
何か、とても嬉しい気分になれた。
サンガ・チューリン・ゴンパにて
再び、石の上に立ち、下界の風景を眺めた後、僧侶達に手を振って別れ、俺は、急斜面の坂道を下り、宿へと戻った。
かなりの運動量だったのか、服は汗でビッショリだったので、シャワーを浴びたいが、今は、あいにく停電中なので、共同トイレ&シャワー室は、真っ暗だ。
昼間だったら、ここの水シャワーを浴びられると思っていたのに、残念だ。
部屋も、ジメッとしていて、そこに身を置きたくは、ないので、宿のレストランで、ホットレモンを飲みながら、ネパールのタメルの古本屋で買った小説を読んでいた。
ペリンには、ケチュパリ湖やタシデン・ゴンパなどあるが、明日行ってみようか、どうしようか考え中。
やっと電気が点き、シャワーを浴びるが、やっぱ水だったので、風邪を引いたらイヤなので、やめた。
標高2,000mでの水シャワーは、辛いです。
晩ご飯のトゥクパを食べ、しんきくさい部屋でビールを飲んで、寝るが、布団も湿気を含んでいて、重たい。
ここで寝るのもイヤなので、明日、ヨクスムへ行こうかな?
サンガ・チューリン・ゴンパからの眺め
西シッキムのヨクスムへ(ペリン〜ゲイジン〜ヨクスム)
朝、いつものように6時過ぎに目が覚める。
シッキムに入ってからは、いつもこれくらいの時間に起きている。
そして目覚ましが、6時半に鳴る。
しばらくボーッとしていた。「今日も山が見えるのかな?」と気になって、カメラを持って、宿のテラスへと向かった。
昨日よりも、山は良く見えた。
この時期、日中は、山には雲がかかっていて見えないが、早朝は、山が良く見えます。
数枚の写真を撮った後、部屋に戻って、コーヒーを入れて、再びテラスへ行き、山を見ながら、コーヒーを飲んでいた。貧乏旅行者のちょっと贅沢な一時。
宿のレストランで、朝食のトーストとミルクティーを食べながら、今日はどうしようかと考えていた。
ペリンの街は、殺風景やし、部屋も湿っていてイヤやし、湖やゴンパも、どうしても行きたいわけでもない。
もうヨクスム行きのジープは出発してしまっているが、西シッキムの交通の要である、ゲイジン(Geyzing)まで行くジープはあるので、ゲイジンまで行って、ヨクスム行きがあれば、それに乗ればいい。
俺は早速、部屋に戻り、半分も出さなかった、リュックの中に残りの荷物を入れて、すぐに出発の準備が出来た。そして、チェック・アウトをして精算した。
宿泊費(2日分)、レストランでの飲食代を含め、240Rsだった。ペリン2泊3日の滞在で、300Rs(約750円)も使っていなかった。
ヨクスム(Yoksum)までは、わざわざゲイジンまで、戻る必要はなく、昼頃にジープが来るから、それで行けば良いと言われたが、俺は、ここでボケッと待つのが、イヤだったし、移動がしたかったので、すぐに来たゲイジン行きの乗り合いジープに乗り込んだ。
ペリンの宿のテラスから、少しだけカンチェンジュンガが見えた。
ペリンからゲイジンまでは、1時間もかからなかった。
標高も下がって、日も差していたこともあって、暑いと久しぶりに感じた。
こんな暑さで、暑いと言っていたら、本格的にインドに入った時は、どうなるのか?なんて考えながら、ヨクスム行きのジープを探した。
ジープはすぐに見つかった。他にも、西シッキム各地へ行くジープが、ゲイジンには、集結している。
出発まで、あと2時間あったので、ゲイジンの街を歩いてみたが、小さな街なので、歩きがいもなく、食堂で昼食のチョウミン(10Rs)を食べた後、ジープ乗り場へと向かったが、まだ1時間しか経っていなかった。
さらに1時間ほど経ち、昼の12時前に、俺を乗せたジープは、ゲイジンを出発した。
森の中を分け入るように、ジープは走る。
目の前には、緑溢れるさわやかで清々しい風景が広がっている。
滝が岩に当たる音や水が流れる音が心地よく、視覚、聴覚の両方が癒されている。
そんな森林浴をしているような風景が、ずっと続き、やがてジープは、ひなびた村に着いた。
どうやらここが、ヨクスム(Yoksum)らしい。
ジープが止まった所が、村の中心らしいが、売店兼食堂や宿が数件あるだけで、自然豊で静かなところだ。
ヨクスムにて
リュックを背負い、ほとんど歩くことなく、宿へ。
トイレ&シャワー付きの部屋を1泊250Rsから交渉して、170Rsにしてもらい、チェック・イン。
ここなら気持ちよく過ごせそうな気がする。
どうもペリンの宿は、限りなく独房に近くて、気が滅入ってきそうだった。
リュックから、荷物を出して、さっそくコーヒーを飲もうとしたが、今は、どうやら停電中らしく、コイルヒーターが使えないので、しょうがない。
外へ出るきっかけが出来たと思い、3軒ほどある食堂の1軒に行き、そこでミルクティーを飲んだ。
目の前には、ゴンパが見えるので、そこまで行ってみようと、まるで日本の田舎道を歩いているように感覚に陥るような、ヨクスムの道を歩いた。
村から見えた、ニンマ派のゴンパは、現在(2004年)建設中で、お堂の中には、金色のグル・リンポチェがバラバラ死体のように、置かれていた。
その足で、俺は、ノルブカンへと向かった。
ノルブカンは、初代シッキム王の戴冠式が行われた場所らしい。
その前に、湖が見えたので行ってみたが、湖と言うか、池って感じだったが、周囲には、竹竿に付けられた白いタルチョが、池を囲んでいたので、ここが単なる池ではないことが、理解できた。
ノルブカンは、白いチョルテンがある公園といった趣で、一組のカップルが、ベンチに座っていた。
「こんな狭い村で、二人で居たら、すぐにウワサになるんやろな。」なんて、思ったりもした。
お堂も二つあったが、寂れていて、鍵もかかっていた。
「思っていたよりもパッとしてない。」と、心の中で呟きながら、曇った空に5色のタルチョがはためく、ノルブカンを後にした。
夕方の風景
さらに散歩を続けるが、なんか畑の中を歩いているような気がするが、気にもせず歩いた。
さっきまで曇っていた空には、太陽が見え、空も青くなった。
畑や民家の周囲には、白いタルチョが立てられて、夕暮れの太陽の光を浴びて、光っているようにも見える。
井戸端会議中のオバチャン達や子供達の写真を撮ったりしながら歩き、そして宿に戻った。
宿の人が、電力が再開したと教えてくれたので、3日ぶりのシャワーを浴びた。
良い部屋に泊まって良かった。
サッパリもしたし、夕食へ。
ミルクティーを飲んだ店、ヤク・レストランで、ビーフカレー&白飯を食べた。
味は、まぁまぁって感じだったが、店の人が良い人なので、1日1回は、行こう。
それにしてもヨクスムって、森に囲まれていて、流れる水の音が聞こえるくらい静かなところです。
部屋も良いし、ヨクスムって、良いところです。