中国の豪華バスに乗って(福州〜泉州)

     朝7時に目が覚めた。疲れていたこともあり、11時間ぐっすりと眠った。
    カーテンの隙間からは、柔らかな太陽の光が差し込んできて、部屋の中の埃が舞っている姿が映った。
    僕はベッドから起きて、カーテンを開き外を眺めてみた。
    貧乏旅行者には不似合いなホテルの8階から眺める福州の街の朝は、騒がしいアジア特有の音も聞こえず、静かな朝だった。
    「やっと遠くへ来たような気がする。」

     さぁ、行くぜ!なんて気合いも無く、
    昨日、購入したお茶、それに手紙を郵便局に出しに行こうと午前7時半に部屋を出た。
    ガイドブックの地図を眺めながら歩きだしたが、この地図はあまり信用が出来ないので、郵便局へ着くまでには時間がかかるだろうと思っていたが、地図どおりに郵便局を見つけることが出来た。
    あまりにも早く到着したため、郵便局は当然まだ開いていないし、郵便局に面している通り、楊橋東路も通勤している人がまばらな状態だ。

    僕は通りの面している食堂へ行き、ノートに漢字で”粥”と書き、席に着いた。
    朝からお粥なんて、日本では時間がなくて、めんどくさくて、やってられない。
    値段は安いが、贅沢な早点(朝食)です。

    飯を食った後、再び郵便局へ行くと、ちょうど開店準備をしているところだったので、僕が本日、一番最初のお客さんとなって、お茶と上海のガイドブックなどの郵便物を日本へと送った。
    郵送する用紙には、何カ所かチェックを入れる箇所があったのですが、僕は、そこにレ点でチェックしたのですが、どうやら中国では×印でチェックするらしく、係りの人に、レ点の上からなぞるように×印を書かれてしまった。

    左:茹でトウモロコシ屋 右:路上靴磨き屋

     今日やらなければならいことは、郵送業務と次の目的地のバス切符の取得なのですが、僕はまだ、次の行き先は決めていなかった。
    廈門か泉州か。どっちへ行こうか?
    まぁ、そのうち決めるだろうと、僕はガイドブックに載っている、白塔や烏塔を見たり、大通りから路地裏に入ったりという行動を繰り返した。
    大通りから眺める街は、省都だけあって、上海ほどの華やかさはないが、大都会ではある。
    しかし上海と同様、一歩裏通りへと入れば、そこには人々の息づかいが聞こえる、等身大の風景を見ることが出来た。

    路地裏へ入り、そして大通りへと戻るという行動をしていると、やがて、ここがどこだか分からなくなった。
    僕としては、最終的に宿に帰ることが出来れば良いので、今迷子でもどってことない。
    どうせ歩きで迷ったのだから、そう遠くへは来ていない。
    少しお腹が空けば、魚肉玉湯(魚の団子のスープ)を食べたりと、あてもなくブラブラ。

     やっと現在位置がわかり、西湖公園の周りを歩き、福州北汽車站(バスターミナル)に到着。
    さて、明日は廈門へ行こうか?それとも間の街、泉州にしようか?悩みます。
    しばらくの間、僕は腕を組みながら、切符売り場の前で考えていた。
    「せっかく中国にいるのだから、たくさんの街を見てみよう!」という理由で泉州へ行くことにした。
    バスの切符売り場でノートに泉州って書いて、それに時間と値段を書いて、係りの人に見せると、切符を買うことが出来た。

     僕が買った切符は、目の前のバス表に書いてあった豪華バス。
    安いバス表は、豪華バスの切符を購入後、発見。人目に付かないようにそっと置いてあった。
    それを発見した俺は、「あーあ」って感じ。豪華バスは52元で普通バスは31元だ。
    まぁ1回くらいは豪華バスに乗ってみるのもいいかな。と考えを変えた。
    まだ、中国での移動は少ないが、いつも小さなバスだったし。
    こうして僕は明日、豪華バスに乗って、泉州へと行くことになった。

    福州の路地裏にて

     翌日、出発まで時間があるので、バスターミナル周辺をブラブラ。
    駅に近いこのバスターミナルは人々の往来が激しい。そのためタクシーがウジャウジャ。
    靴磨きの女性達や新聞屋の兄ちゃんもたくさん集まっている。
    僕は、そんな光景を見ながら、小さな売店で朝食の菓子パンとジュースを購入。
    朝から麺はもう飽きました。

     僕が乗ったバスは9時40分発の泉州行き豪華バス。
    いままで乗った中国のバスとの違いは、まず第一に見た目。もう全然違います。
    豪華バスは日本の観光バスと同じような感じです。中はというと、クーラーがガンガン効いていて、イスはゆったりとしている。

    まさにリクライニングシートって感じ。
    その上、映画(ビデオ)まで鑑賞することができます。
    本日の映画はケリー・チャン主演の東京を舞台にしたアクション映画。
    周りを鄭伊健や阿部寛などで固めた、豪華キャストだ。うーん、さすが豪華バスだ。
    しかし、冷房がガンガン効いているのは、かなり寒い。
    窓もはめ殺し窓なので、開けることも出来ない。

     バスは高速道路を快調に走り、2本目の映画「爆裂刑事」の途中で泉州のバスターミナルに到着。
    バスを降り、タバコを吸いながら、ガイドブックを眺め、とりあえずの行き先を決めた。
    数人の男が、タクシーに乗らないか?と誘ってきますが、俺はそれらを断り、一人歩き出した。
    俺がとりあえず目指している所までは、ここから約2キロ先のホテル。
    荷物を背負ってなければ、こんな距離どってことないが、泉州に到着後、近くの食堂で昼飯を腹一杯、食べたおかげで、俺の足取りはとても重く、結局、自転車にリヤカーをくっつけたような乗り物で行ってしまった。

     宿は1泊=120元のホテル。ここのホテルには70元、80元の部屋があったが、外国人の俺は、この安い部屋には泊まることが出来ない。
    俺が泊まることの出来る最低ランクの部屋は120元って言われた。
    中国は宿が高いとは聞いていたが、周庄、蘇州、福州それに泉州とみんな100元(1500円)以上の所に泊まっている。
    外国人の俺は安いホテルに泊まることは出来ないし、これはイタイな。
    これからは、いろいろと節約しなければならない。

    福州の路地裏にて