Wes Montgomery(g) Buddy Montgomery(p) Monk Montgomery(b) Billy Hart(dr)
Elvin Bunn(cga)
TV Cast, Wayne State University, Detroit, Michigan; 1968
Windy [4:34]
California Nights [5:21]
結成当時の "モンゴメリ・ブラザーズ" と、再起してからの "モンゴメリ・ブラザーズ" (時に
は "モンゴメリ・クウィンテット" と名乗ったりすることもある) のラスト・セッションが収めら
れている。
ウェスは亡くなる前、恐らくA&Mに入ってから頻繁にラジオやTVに出演していたようで "ハリ
ウッド・ボール" で収録されたものがTV放送され、そのヴィデオがマニアの間で重宝がられたり
〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉をプレイしているカラー・ヴィデオがある。
このアルバムの2曲は1968年(月日は不明)ミシガン州デトロイトに今のウェイン州立大学の前身で
あるデトロイト市立大学が創立され、その記念なのか、たまたま同地をロードする中の出演なのか
詳細は分からないが、ピープル・イン・ジャズというTV番組でインタヴュー交えての演奏である。
司会はジム・ロックウェル、では、このアルバムでのウェスへのインタヴューを再現する。
TV Appearance, Detroit, Mich. 1968/Wes Montgomery intrviewed by Jim Rockwell
Jim : ジャズ・ギターの歴史において何らかの新しいことを成し遂げたプレイアーがこれまでに3
人います。
彼等はギター界に新風を巻き起こし、その発展に対し真に価値ある働きをもたらせたわけで
す。その3人とはジャンゴ・ラインハルト、チャーリー・クリスチャン、それにウェス・モ
ンゴメリのことです。
何故なら、あなたの演りかたは今までになかったものです。
wes : 本当に。
Jim : 知らないでしょうが、そう言われてきました。
ピックでは絶対不可能なプレイを親指で弾くテクニックを誰からか教わったことがあるので
すか。
教わる気持ちもなかったでしょうが、どうなんでしょう。
wes : 誰だって弾けないという事だけで直ぐに教わることはないだろう。先ずはそれぞれが描くス
タイルを展ばしたいと思うだろうね。
Jim : あなたは一般的な音楽教育を受けなかったため急速な上達はなかったものの、人にはないギ
ター・スタイルと美しいサウンドを習得することができました。
全く同じではないがジャンゴもクリスチャンもまた独学ギタリストとして活躍したのですが
これからギタリストを志す若者にはあえて独学を勧めることはないと思うのですが。
wes : 同感だね。
Jim : やはり音楽教育を全く否定するわけにはいかないし、独学での成功はまれなことだと思うの
です。
wes : 確かに知ってる限り独学プレイアーは少ないが、まぁ何でも同じ事が言えるけどかえって上
手くなる人もいるんだ。逆も真なりってね。
Jim : 誰からも教わっていないという点から考えるとあなたは【本家モンゴメリ流】であり、ソロ
においてオクターヴ奏法を用いるのは他のギタリストには見られないところですね。
そう言えば、以前あなたに聞かされた逸話を思い出しました。そもそもオクターヴ奏法のき
っかけは、より静かなサウンドで弾こうとしてピックの代わりに親指を使ったということで
したね。
wes : そう、ピックは刺激的な鋭さがでてしまうんだ。
当然の事ながら僕も最初はピックを使ったが、その後アンプにつなぐようになり・・。
Jim : 最初の2ヶ月間はアンプなしで練習し、それからアンプを使ったんですよね。
wes : その通りさ。
ギターの音より回りの雑音がうるさいのでアンプにつないだということなんだ。
夜遅くまでの練習はかなり近所迷惑になったが・・何しろ【甲高い音】がでるもんで、何ら
かの対策を講ずる必要に迫られ・・と言ってもアンプのヴォリュームを絞ることは考えなか
ったけどね。
もしあのとき絞っていたら、僕は一生アンプを使いこなせなかったと思う。
だからアンプをどうのこうのじゃなく、ピックを使ってあの【甲高い音】を抑える工夫をし
てみたんだ。
Jim : その結果ピックの問題は解決されないことを悟ったわけですね。私論におけるピックの必要
性についてはやめておきましょう。
wes : ああ、いいとも。
Jim : 何故ならあなたはピックを必要としていないのですから。
wes : そうだね。当時の僕は初めからプロを目指していたわけでもないが、ただギターを思うまま
に親指で弾けるようになって何もわざわざピックで苦労することもなかろうと思っただけの
ことなんだ。
Jim : でも初めからピック奏法のギタリストは、あなたのようにピックなしで弾けるはずがないと
考えていたでしょう。
wes : うーん、連中は親指が5本の中で特に扱いにくいという言うんだが、ラテンでは僕と同じで
はないにしろ親指を使っている。
Jim : だけどあなたの親指は奇跡的なまでの動きをしていますよ。
wes : それが痛みを伴うんだ。
Jim : 本当ですか。
wes : 時々だがね。
Jim : 正真正銘、これこそがあなたを別格の存在にしたのです。
そのオクターヴ奏法は今まで誰一人として完成させることができなかったのですが、あなた
は如何にしてこの奏法を思いついたのですか。
wes : 或る時、ギターがあまりよくなく直ぐに狂ってしまうのでチューニングをしていたんだ。
まぁ、新品でも完全とは限らないが、ロー・ポジションはそこそこでもこの部分 (訳注: ウ
ェスが実際にギターを手にしてハイ・ポジションを指しているものと思われる) までの範囲
にズレがあるんだ。
それで一弦からチューニングしていき、ニ弦、三弦と順次どのフレットでどのくらい合って
いるのか、どの弦にズレがあるのかなど探っているうちに、あるひとつのスケールを全くの
偶然に見つけ「おっ、これは悪くないぞ」と思いながら同じ音程の2本の弦で弾き比べるこ
とに気付いたんだ。
だからそのスケールについてもう一度確かめようとしたら途中で解らなくなってしまったが
「おい、しっかりしろ。一度出来たんだから必ずできるさ」、と自分に言い聞かせながらな
んとかメロディが弾けるようにまでなった。
が、次のステップ・・つまりソロになかなか進む事が出来ず終いにはギターを放り投げてし
まう始末さ。
(訳注: オクターヴのきっかけは諸説あるが、これもかなり参考になります)
Jim : しかしやり遂げました。とうとう完成させたわけですね。
wes : まあね。
|