Wes Montgomery(g) Buddy Montgomery(p) Monk Montgomery(b) Billy Hart(dr)
Elvin Bunn(cga)
TV Cast, Wayne State University, Detroit, Michigan; 1968
Windy [4:34]
California Nights [5:21]
結成当時の "モンゴメリ・ブラザーズ" と、再起してからの "モンゴメリ・ブラザーズ" (時に
は "モンゴメリ・クウィンテット" と名乗ったりすることもある) のラスト・セッションが収めら
れている。
ウェスは亡くなる前、恐らくA&Mに入ってから頻繁にラジオやTVに出演していたようで "ハリ
ウッド・ボール" で収録されたものがTV放送され、そのヴィデオがマニアの間で重宝がられたり
〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉をプレイしているカラー・ヴィデオがある。
このアルバムの2曲はウェスへのインタヴューも交え1968年(多分4-6月)ミシガン州デトロイトに
あるウェイン州立大学のテレビスタジオで制作・撮影されWTVSチャンネル56で放送された。
"People in Jazz" という番組名で司会はジム・ロックウェル、では、このアルバムでのウェスへ
のインタヴューを再現する。
TV Appearance, Detroit, Mich. 1968/Wes Montgomery intrviewed by Jim Rockwell
Jim : こんにちは、ジム・ロックウェルです。“People in Jazz”の時間です。
今日のメイン・ゲストはウェス・モンゴメリです。
遡ること1959年頃・・そう1959年のことですが・・私は以前より親交の深い友人がいて、そ
の友人はリヴァーサイドというレコード会社を経営していました。
彼はアルバムのリリースにあたりプロモーション盤を送ってきてくれました。
そこには当時無名のギタリストのプレイが収録されていました。
そのギタリストこそウェス・モンゴメリで、以後彼はジャズ界中央に現れ、大スターへと成
長しました。私はその時からの成長を見守ってこれて本当に嬉しく思っています。
ウェス、もうすぐ10年・・いやまだ9年ですが・・インディアナポリスの無名ギタリストが
このような大スターになるまでの過程を見てきました。
リヴァーサイドでの事がたいへん懐かしく思い出されますが、ビル・グラウアの死により会
社は終焉を迎えたがその歴史の中で意識的に不出来と思われたアルバムを一度もリリースし
たことはなかったと思います。稀にみる会社です。
他のレコード会社では不出来と思われても売れるならリリースさせるような所が見受けられ
ますからね。もちろんリヴァーサイドの全てのアルバムが上出来だったとは言えきれません
が、だからと言って不出来だったとしても、彼らが最初から努力せずに臨んだものでは決し
てないことですから。
リヴァーサイドはいつも良い作品を目指していました・・彼らはどうすれば良いかが分かっ
ていなかっただけで、芸術としてそして良いアルバムを作るために・・と言うことで、彼ら
がウェス・モンゴメリに信頼を寄せ最初にあなたをレコーディングしたことは素晴らしく先
見の明があったと思います。
その切っ掛けとなったのがキャノンボール・アダレイがインディアナポリスであなたのプレ
イを聴いて、リヴァーサイドに報告したからですよね。
彼は「インディアナポリスに途轍もなく素晴らしいギタリストが居る」と言ったそうです。
おおかた無名のミュージシャンが見出される流れがこういうことでしょう。
あなたのように全国を巡演するミュージシャンたちがある町で素晴らしいプレイアーを見つ
け・・それをニューヨークに帰り報告するという形を広める・・と言うこと。
あなたは今、国内外を巡演していますが、旅先々で他のプレイアーを聴いたりしますか。
wes : 機会があればね。でも仕事が多すぎて他のバンドやミュージシャンを聴きに行く間がなかな
か取れないんだ。
たまに聴いた事がないギタリストに出会うこともあるけど、みんないいプレイしているよ。
Jim : どこかで誰かのプレイを聴いて特に印象深かったギタリストで思い浮かぶ人はいますか。
wes : そうだ、シカゴのジョー・ディオリオって知ってるかい。
Jim : 知りませんが。
wes : 奴も凄いんだが、しかし今まで一番素晴らしいと思ったギタリストはモントリオールのネル
ソン・サイモンだったよ。オスカー・ピーターソンが奴を教えてくれたんだ。
コルトレーやホレス・シルヴァーも、他の凄いミュージシャンも奴の話をしていたよ。
だから、やはり凄いんだと思い、丁度モントリオールで一週間出演の機会があったので、奴
のプレイを聴いてみたんだ。
それが予想以上で僕のギターを燃やしてしまいたいぐらい素晴らしくて・・燃やせないけど
そう感じたよ。もし、奴がここに来ることがあったら聴いてみて。
Jim : そうなの。
wes : ほら、僕が言っても信じられないと思うけど。
Jim : いえいえ疑ったりはしませんよ。
wes : 誰だって "凄い奴だな" と感じることってあると思うんだ。凄い奴を見ると興奮することは
あるんだけど・・奴はそれ以上だったよ。ギターの新しいアプローチ、新しい方向性を感じ
たね。例えば、普通ならシングルトーンで弾く速さなんだけどコードで弾くんだよ。
Jim : それはあなたも同じじゃないですか。
wes : いや、そうじゃなくて僕が言いたいのは、全てのコードチェンジを完璧に熟すんだよ。
細かく素早くコードチェンジがあったとしても難なく演ってみせるんだ。
Jim : そうなの。
wes : そうだよ、あんなプレイは今まで見たことも聞いたこともなかった。奴は「いや、まだまだ」
と謙遜していたが、僕は "とんでもない自分がどれだけ凄いか分かっていない" と思ったね。
Jim : 彼は何歳ぐらいですか。
wes : 聞いた事はなかったが、見た感じ31歳ぐいかな・・29、30、31歳・・ぐらいと思う。
奴は自分自身の才能について気づいていないし分かっていないんだ。
とにかく、覚えておいても損はないぐらい素晴らしいプレイアーだよ。
Jim : モントリオールのネルソン・サイモン、モントリオールですね。今度オスカー・ピーターソ
ンが町に来たら彼について聞いてみます。
だけど、ここでひとつ言っておきたいことは、あなたが先ほど言ったように・・多くのミュ
ージシャンが "凄い奴だな" と言うことで名前が知れ渡るということです。つまり無名のプ
レイアーが売れるようになる典型的な形です。
それでは、あなたが挙げたプレイアーやあなたのようなプレイアーが、無名のプレイアーを
レコード会社に売り込むのを待つ必要があるのでしょうか。
この話をした理由は多くのプレイアーが私を訪ねてきたり、誰かに相談したりして「どうし
たらデヴューできるか」と持ち込まれることが本当に多いからなんです。
wes : そうだね、今は難しいかも知れない。以前は有名レコード会社も新しい才能を探していたが
今はそのような働きはなくなったように思う。よほど会社内部のスタッフが推薦しない限り
関心を示さないようだ。例えば僕がいま契約しているA&Мレコードに "凄い奴だよ" と言
っても彼らの反応は「あーそうなんだ。それよりコーヒーでも飲んでいったら」という感じ
だね。彼らにとって日常茶飯事であり、単にそんな時代ではなくなったということなんだ。
例えば、有名レコード会社がジャズ・アーティストに対してアルバムの1曲2曲は商業的な
曲を入れるよう言ってくるようになったが、以前はそんなこと言わなかった。リヴァーサイ
ドはそう言う注文は付けない方針だったけどね。しかし時代が代われば致し方ないって事な
んだ。
Jim : あなたは先ほど「奴は自分の才能に気づいていない」と言いましたが、これは昔からウェス
・モンゴメリについても言われてきたことなんです。みんな「ウェス自身、自分の才能につ
いて分かっていない」と言っています。それはあなたが独学のギタリストだからこそです。
ジャズ・ギターの歴史において何らかの新しいことを成し遂げたプレイアーがこれまでに3
人います。彼等はギター界に新風を巻き起こし、その発展に対し真に価値ある働きをもたら
せたわけです。その3人とはジャンゴ・ラインハルト、チャーリー・クリスチャン、それに
ウェス・モンゴメリのことです。
何故なら、あなたのようなギター・スタイルは今までにいなかったからです。
wes : 本当に。
Jim : そう言われてきたのは、あなた自身それを知らなかったからですよね?。
もしあなたが最初から一般的な演り方でギター教育を受けていたら、今のようなプレイアー
にはなっていなかったでしょうね。
wes : おそらくね、おそらくそうだろうね。もし「ああしろ、こうしろ」と教育されていたら今の
存在はなかったかも知れない。でも僕にはそのような教師はいなかった。だから自分が演り
たいことを感じたままに演ることができたんだ。そしてその演りたいことが更に進化してい
ったんだ。
Jim : つまり一般的なギター教育の枠にはめられなかったからこそ自由奔放にできたんですね。
wes : そうだね。
Jim : 運がよかったのはその独学が素晴らしいものになったが、ただ独学で誰でも成功すると言う
わけではありません。考えるに先ほど挙げた3人・・ジャンゴ・ラインハルト、チャーリー
・クリスチャン、それにあなたらは全て独学のギタリストですね。
wes : そうだね。その通りだよ。
Jim : だけど、これからギターを始めようとする若者を意図的に独学で目指せと言っているわけで
はなく、独学でなにか新しいものを生み出し成功する人は本当に稀であるということだから
です。
wes : それで、僕も実際に独学で演っているプレイアーをたくさん見てきた。他の選択肢がなく独
学で演っていて上手くいくこともあるし、いかないこともある。成功し何らかの新しい貢献
がてきるぐらいの人はほんの一部なんだ。
Jim : あなたの兄弟はみんな独学だそうですね。では彼らの演奏を聴いてみましょう。
wes : 分かりました。
Jim : ピアノはウェスの弟、バディ・モンゴメリ、そしてベースは兄のモンク・モンゴメリ。
みんな独学のミュージシャンです。では "ウインディ" を演奏していただきましょう。
The Montgomery Brothers ♪♪ Windy ♪♪
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