ウェスがグレッチのギターを
ニュース速報No.99(2010.7.17号)ウェスがディアンジェリコのギターを?・・で掲載したが結果的に
確たる物的証拠はつかめなかった。しかし、このたびはウェスがグレッチのギターを抱えている写真
がある。
気づいたファンもおられるかもしれないが、実はこの3月5日にリリースされた《Wes Montgomery
in The Beginning-Early Recordings from 1949-1958》に添付されていたブックレットの裏表紙に使
われた写真、これがそのグレッチのギターである。
既にこのCDを買われた方はもう一度確認して戴きたい。撮影時期はおおむね1955年か56年、ターフ・
バーでのモンゴメリ・ジョンソン・クウィンテット、横からモンクのフェンダー・エレキベースも見え
る驚きのワン・ショットである。
この1955年-56年をグレッチのモデルにあてはめると仕様は以下の通りになる。
1953-61 GRETSCH #6128 Duo Jet
ボディトップはマホガニーを使った厚み2インチ、幅13.5インチのソリッド・ボディのシングルカッタ
ウェイ、ブラックである。
その他の特徴としてピック・アップは2PUのダイナソニック(ディアルモンド社製53年〜58年)ブリッジ
はシンクロソニック(55年以降)、テイルピースはGテイルピース・クローム(50年代以降)ピックガード
はジェット(50年代)となる。
何故、ウェスがグレッチのギター持っているのか・・まず最初に聴かれたそのグレッチのサウンドは、
2012年3月にリリースされた《Wes Montgomery/Echoes of Indiana Avenue》に挿入された一曲
Wes Montgomery(g) Earl Van Riper(p) Mingo Jones(b) Sonny Johnson(dr)
Live at "Hub Bub", Indianapolis; period 1957-'58
After Hours Blues(Improvisation)
ライヴの合間の余興かおふざけのように聴こえる〈アフター・アワーズ〉、このR&Bのペラペラなサ
ウンドがもしかしてグレッチではなかったのか、と思い起こさせた。
ウェスはこのハバブでのライヴと同時期に他でもR&Bバンドのジミー・コーやロニー・ヘイグのレコ
ーディングに参加している事実がある。
ここでのサウンドはセカンド・ギター、いわゆるリズムを刻むだけのものがほとんどだが、当然ながら
ぺラぺラのものである。
ウェスのギターについてモンクの証言がある。
「ウェスは自分のギターやアンプそれに技量において絶えず探究心を抱いていた。」と言う事は本当は
ジャズの傍らR&Bも捨てきれないところがあり、R&Bバンドに参加する時や演奏する時はそれなり
のサウンドが出なけりゃ納得できなかったのであろう。
思うに、ウェスが抱えた写真のグレッチは、人から借りたものではなくおそらくウェス自身購入したも
のと思う。
モンクは「最終的にはギブソン以外に目もくれなかった。他のギターで満足できるものがなかったから
だと思う」と言うが、つまりはウェスが60年代以降売れ、それにつれジャズ路線で活躍しコマーシャル
路線へと進むなかR&Bへの愛着心もあったと思うが50年代のような好き勝手なことはできず、グレッ
チは二度と持つことはなかったことになる。
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