ニュース速報 No.124(2017.9.24号)


ウェス・モンゴメリ奏法勉強会/講師:宮之上貴昭
 ウェス・モンゴメリ奏法解説
講師:宮之上貴昭 氏
2017/9/9(Sat)14時〜15時15分
会場:G'Club Tokyo
日本のトップ・ジャズ・ギタリスト宮之上貴昭氏は、自身の【宮之上貴昭ジャズギター道場】を精力的に 実践し、多数の優秀な卒業生をジャズ界に送り出してきた実績があります。 このたび、道場は全くの初心者でも懇切丁寧に指導できる新体制を発足させましたが、その傍らG'Club Tokyo主催による【第12回勉強会/WES MONTGOMRY奏法解説】に宮之上貴昭氏が講師として迎えられました。 ウェスの奏法分析に宮之上氏独自の技術も交え、実演で分かり易い解説はさすがウェス継承第一人者な らではの勉強会となった。 当ファン倶楽部の特派員 GIBSON BOY さんにその模様を伝えていただきましょう。 講義前段に自己紹介がありました。宮之上さんのプロフィールは既に知られているところではありますが ウェス・モンゴメリとの係わりから記載いたします。 「10歳からギターをはじめ、その時代の流行からGSやベンチャーズの音楽に傾倒していました。 15歳の時(1968年)に友人のお父さんから『このような音楽もあるのだよ』と紹介されのがウェスの 《A Day In The Life》でした。 ちょうどウェスが亡くなった頃だったのですが、まずビックリしたのは親指で弾いている柔らかなサウン ド・・まるで二つの音が聴こえるような・・これがオクターヴ奏法でした。 それからはウェスがアイドルとなり、ジャズにのめりこんでいきました。 プロになってから、ブートレックして先に出回ったウェスの映像〈West Coast Blues〉を観て想像して演 ってきた事が思っていたとおりでした。 次は、私が共演したミュージシャンに聞いたウェスの話を紹介しましょう。 Philly Joe Jones(ds)は「とてもやさしい奴だった」と、Milt Jackson(Vib)は「僕自身がファンなんだ。 ウェスは曲をいっぱい知っていたよ」。そしてJimmy Smith(Org)は「ウェスは、とにかく謙虚でいい奴で、 大きなホールの俺の舞台で、幕が開いたら多くの観客にビックリして、椅子から転げ落ちそうになったんだ。 コード進行はとっさに出来たよ」と、誰もがウェスの性格の良さと音楽の天性を褒めたたえていた。 最後に、ウェスのギター奏法を解説します。 彼はピックを使わず親指で弾きますが、一説によると『ピックで夜中に弾くとうるさい』とあるが、私はこ の説に疑問を感じている。 音色(注:同じ音階でも音の質が違うと異なる聴こえ方になる)の違いだったと思う。(注: と、ギターを弾き ながら、音の違いを説明した) オクターヴ奏法(注:ここでは〈Fly Me To The Moon〉を弾きながら解説)は、はなれた音の押弦、ポイントは 真ん中の弦をミュートすることです。 それで、親指で単音を弾くのは、ピックと違いアップ・ダウン(注:特にアップがむずかしい説明)を10年くら い繰り返し練習すれば上手くなるよ。 アップはダウンに比べて音量的に弱くなるので、必要な時(注:早いパッセージの時)以外は、ダウン奏法で 弾くこと、フレーズによる選択が大事ですね。 ここからは質問を受けて答えていきましょう。 受講者:ウェスのコードソロについて教えてください。 宮之上:彼はコードソロの中でディミニッシュを多用するのが特徴。(注: ケニー・バレルなどは4度や5度     の積み重ね) 例えば、ディミニッシュでディミニッシュのスケールを動かすんだ。     (注: と、言いながら〈Autumn Leaves〉をディミニッシュコードを交えギターを弾ながら解説する)     〈ミサイル・ブルース〉は(注:ディミニッシュコードを交えギターを弾ながら解説)D7からGmへ弾く     んだったらD#dimとね。(注:〈Autumn Leaves〉の進行を使って解説) 受講者:コードソロの話しですが、シングル、オクターヴ奏法、コード奏法の3段論法で盛り上げていく定石     は、パターン化できるのですか? そうゆうことなく・・・。(注:少し質問が曖昧) 宮之上:初めにウェスを勉強していくと、なんとも自然ながら単音、オクターヴ、コードソロと盛上げている     のが分かると思うが・・みんなそれを目指していますよね・・どこにクライマックスを持っていくか     ・・最初は計算していると思うけど。     私も今では考えなくなったけど、最初は考えて演っていた。誰でも初めからできる訳がなく挫折もし、     ただ聴くだけになっていました。(注:〈Jingles〉のフレーズを弾きながら解説)高いハードルも無     理と諦めず頑張ってトライし、そういう風になっていく。 受講者:(注: 質問の内容が聞き取れない。多分ギターの音がどこにあるか?というようなこと) 宮之上:(注: フレーズを歌いながらギターで弾いて見せ、弾きたい音を追認できる技術を披露) したがって、      ライヴでも違う音へ外れることはほとんどない。ある程度キャリアだと。 受講者:(注: 質問の内容が聞き取れない。ウェスの技術を超えるものは?) 宮之上:今、話したのは宮之上奏法ということです。ウェスが活動した時代、他の楽器奏者の演奏もいっぱい聴     いています。(注: 影響 も受けているとの意味合いで)、ウィントン・ケリー、ルー・ドナルドソン、     フィニアス・ニューボーン、ジャッキー・マックリーンなど。     宮之上独特の奏法としてはウェスから発展させたもので、例えばオクターヴ奏法にアルペジオを加え た奏法(注: 演りながら)とかギターのボリュームノブを使った、ボリューム奏法。他にもタッピン グ奏法やウェスも余りやらなかったダブルオクターヴは音域が1オクターヴ少々しかないなど。     (注:〈Here That Rainy Day〉を弾きながら解説) 受講者:ウェスを練習するのにどのような曲がいいですか? 宮之上:オクターヴ奏法から頑張って勉強して・・〈Fly Me To The Moon〉・・なんか良いかも。その際音域を     考えて、ギターに合った。(注: 音域で)私はオクターヴ奏法から入って、意外と早くオクターヴ奏 法を会得した。 受講者:小指を見ているんですか?人差し指を見ているんですか? 宮之上:今はどちらも見ていない。最初は人差し指かな。〈ジョーカー〉とか・・・。スイングの曲より、ロッ クの人はボサノヴァが入りやすいと思う。     (注:〈ジョーカー〉を弾きながら解説)後はゆったりしたブルースとか(注:〈Fried Pies〉をスロ ーテンポで弾きながら)コピーしやすいし、コード進行も決まっているし、ブルースの曲をコピーする と、コード進行が判ってなくても使えるし、あとは最後の所のUーXの所を勉強しとけば使える。     リズム感は大事だよ。(注: ここからリズムの話になる)ウェスもかなり走るし、バレルも・・グラン ト・グリーンはいい感じだね。     メトロノームで2、4拍で鳴らして弾くことを勧めたい。速いより遅いほうが難しいしので練習するこ と。 主催者側の要請で、店舗にある幾つかのモデルで弾くこととなり、まず63年製のS-400を持ち『ケニー・バレル 弾きたくなっちゃうよね。』と言いながら〈Mi Cosa〉をさらりと演奏する。 GIBSON BOY;シングルトーンのアドリブフレーズとオクターヴのフレーズは同じですか? 宮之上:音域の問題で単音では弾けてもオクターヴでは難しかった。けど、今はオクターヴでも同じように弾け るが特にBe-Bopは難しいね。(注: Gibson Johnny Smithモデルに持ち替えて、単音のフレーズをオク ターヴで弾きながら) 速いのは難しいけどね。     (注: ジョニー・スミスのコード演奏は美しいと解説し〈Too Late Now〉を演奏) ゆっくりだけどコ ードとコードの移り際は速く移ると、ゆったり(注: たっぷり)に聴こえる。 受講者:ウェスのグルーヴ感について、その特徴とそれを習得するにはどのようにしたらいいですか。 宮之上:レコードなどと合わせて演って、フィーリングを勉強して欲しい。フィーリングのコピーだね。少しく らい音を間違えても、フィーリングをつかんで欲しい。 受講者:ウェスはあのフィ−リングをどうやって掴んだんでしょうね。 宮之上:コルトレーンを研究したらしいしよ、キャノンボール・アダレイとか・・・。     それからね、必ず演るのが、ちょっと外れた様な音を出すが(注: ギターを弾きながら)半音上の裏 コードのフレーズを弾くとよい。(注: 詳しくは私の教室でと)あとね、(注:〈Wave〉を弾きながら)  Gm-C7-Fmaj、そしてFmっていく時、必ずF#m7と・・そして半音下で着地。(注: 裏コードのアウト感の フレーズの説明) 受講者:オクターヴ奏法で小指と薬指の使い方について教えてください。 宮之上:(注: L5WESモデルに持ち替えて) 映像がなかった頃は分からなかったが、ウェスは小指と薬指を変え ています。変えてないとばかり思っていました。     私は指を変えないが(注: 宮之上さんはどのポジションもオクターヴの押弦は、人差し指と小指で押 さえている)こちらのほうが速く動くと思うんだけど・・。」
 最後に〈Road Song〉をデモ演奏し、有意義な講習会はあっという間に 終わってしまいました。 “WES MONTGOMERY 奏法の勉強会”なんて題してちょっと堅苦しい感じ がしないでもないかも!と、始まる前は少し身構えて、その雰囲気に 緊張気味でした。 講座が始まるや、宮之上さんの優しい、まるで受講生の目線にあわせ ての語り口で始まりました。 長年多くのファンを持ち、又岡安さん、田辺さん、井上銘さんなど一 線で活躍するJAZZ-GUITARISTを育て、弟子に持つ、日本を代表する JAZZ-GUITARISTでありますが、そんな仰々しさは微塵も感じません。 彼の人気の秘訣は演奏はもちろん、ファンを大切にするこの姿勢があ るから他にありません。 講義といえば、WESの数々の愛想曲をいとも簡単に弾きながら、その 場で弾いて見せて説明してくれますから、受講生 は誰もが目、耳を一点に集中して熱心に聞き入っています。 音だけでなく、ビジュアルに体現していますから、形としても理解し やすく、多くの解らない事、再確認など、色々出来たはずです。 しかし、プロとはいえこれだけのWESの曲をほぼ同じように弾いてし まう、耳の良さ、記憶力はどうなっているんでしょうか!驚きです。 僕も以前からオクターヴ奏法のフレージングの思考発想について疑問 に思っていましたので、質問しました。
頭の回転の早い人ですから、すぐに質問の意味することを理解し、「シングルトーンでフレージングするの と同じですよ」と即答してくださいました。「音域が限られているから難しいいけど」と、その難易点もち ゃんと指摘し、「やっていけば出来るから」と。「あ!やっぱりそうなんだ」と納得。 明快そのものでした。 一方通行の講義ではなく、受講者それぞれが疑問に思っていることを、質問形式で丁寧に演奏しながら、答 えていただきました。 白熱したあっという間の75分間!!貴重で充実した時間を過ごさせて頂き、大変勉強になりました。 宮之上さん、ありがとうございました!!                                    投稿☆☆GIBON BOY☆☆