ハンプトン時代のウェスのソロ
アルバム名 : Lionel Hampton and His Orchestra Live in 1948
アルバム番号: SOUNDS OF YESTER YEAR DSOD2005
リリース国 : ENGLAND
リリース年月: 7/2015
メディア : CD
1948年ライオネル・ハンプトン時代のウェス・モンゴメリのソロを偶然ネットサーフィンで見つけた。
これまでディスコグラフィ的にウェスの名前が確認できるもの、またソロが聴けるレコードは、
《Concert 1948/Weka WK 12-1》という12インチ海賊盤が筆頭であった。
すべてがブロード・キャストから収録したもので、48年7月1日から10月15日までの放送分が挿入されて
いる。
これらの中からウェスのもっとも古いソロが聴けるのは同年7月1日のブギウギのブルーズ曲〈Adam Blew
His Hat〉でイントロからヴァイブのソロで始まりブラス・セクションのテーマのあと、サビの部分8小節
でウェスがか細くソロを演奏している。
次に、同年7月21日のブギウギのブルーズ曲〈Brant Inn Boogie〉ではイントロ8小節のブラスのトゥッテ
ィに続き12小節のテーマ、そのあと4小節ブラスのアンサンブルに続きウェスのソロが5小節目から8小節
分と2コーラス目の12小節で合わせて20小節のソロが聴ける、これが最長なソロであった。
が、ネットサーフィンで見つけた2枚組CDは上記《Concert 1948/Weka WK 12-1》の全11曲を含みこれまで
聴いたことのない22曲、加えて32曲が挿入されている。
音源は《Concert 1948/Weka WK 12-1》と同じくアメリカのMBS(Mutual Broadcasting System)から放送・
収録したものです。
《Lionel Hampton and His Orchestra Live in 1948/SOUNDS OF YESTER YEAR DSOD2005》2015年イギリスの
SUBMARINE RECORDSからリリースとクレジットされているが、CD盤自体CD-Rに焼き付け、ラベル印刷も一般
的なインクジェットのプリンターで作り上げた・・何か海賊版の風体である。
いずれにしてもウェスのディスコグラフィに新たな、しかも驚きの曲数で久しく刷新されることとなった。
ディスコグフフィ的に【Weka WK 12-1】と書いているのは先にリリースされている・・という意味合いで
す。
また、ハーソネル自体にも不安定なところ・・つまりはっきりしない部分が見られる。
例えばベーシストのチャーリー・ミンガスとチャールズ・ハーリスの二人が連なっているが、どの曲での
参加なのか、ほかにも《Concert 1948/Weka WK 12-1》と見比べて不都合な部分も見受けられるが、当面は
っきりするまでライナーに書かれているとおりとする。
LIONEL HAMPTON AND HIS ORCHESTRA
basic personnel:
Teddy Buckner, Wendell Culley, Leo Shepherd, Duke Garrette, James Nottingham(tp) Britt
Woodman, Jimmy Wormick, Jimmy Wormic, Sonny Craven(tb) Lester Bass(tb.btp) Ben Kynard
(as.cl) Bobby Plater(as) Billy Williams, John Sparrow(ts) Charlie Fowlkes(bars) Lionel
Hampton(vib.p.dr.vo) Milt Buckner(p) Wes Montgomery(g) Charlie Mingus, Charles Harris
(b) Earl Walker(dr)
same personnel: *add Louis Jordan(as.vo)
B'Cast, unknown place; Jun.5,1948
disk 1 #16 Giddyup [2:06] Sounds of Yester Year DSOD2005
disk 1 #17 Midnight Sun [2:56] −
disk 1 #18 Barnyard Boogie * [2:38] −
disk 1 #19 Ain't Nobody Here But Us Chickens * [2:48] −
disk 1 #20 Pickup On The Rebop Kick (vo:unknown) [2:11] −
disk 1 #21 Asiatic Call [2:50] −
disk 1 #22 Cherokee (vo:L.Hampton) [3:52] −
same personnel: *add Eddie Chamblee(ts) Sonny Thompson(p)
B'Cast, unknown place; Jun.12,1948
disk 1 #23 When Your Lover Has Gone [2:46] Sounds of Yester Year DSOD2005
disk 1 #24 Joe Louis Punch (vo:L.Hampton) [2:41] −
disk 2 # 1 Muchacho Azul [3:45] −
disk 2 # 2 Long Gone Blues * [2:33] −
disk 2 # 3 Charlie Cole's Boogie Woogie [4:23] −
same personnel:
B'Cast, unknown place; Jun.30,1948
disk 2 # 4 Don't Blame Me (vo:unknown) [2:55] Sounds of Yester Year DSOD2005
disk 2 # 5 But Beautiful (vo:unknown) [3:00] −
disk 2 # 6 Always [1:03] −
disk 2 # 7 How High The Moon [2:54] −
same personnel:
B'Cast, Geneva, N.Y.C.; Jul.1,1948
disk 2 # 8 Adam Blew His Hat [2:55] Weka WK 12-1
same personnel: *add Billie Holiday(vo) Bobby Tucker(p) omit: Milt Buckner(p),
**add Wynonie Harris(vo)
B'Cast, Geneva, N.Y.C.; Jul.7,1948
disk 2 # 9 The New Look [3:04] Sounds of Yester Year DSOD2005
disk 2 #10 I Known That You Known [0:43] −
disk 2 #13 Barnyard Boogie [4:12] −
disk 2 #11 I Cover The Waterfront * [3:20] Weka WK 12-1
disk 2 #12 There's Good Rockin' Tonight ** [2:19] −
same personnel: *add Johnny Board(as)
B'Cast, Geneva, N.Y.C.; Jul.21,1948
disk 2 #14 Central Avenue Breakdown * [3:02] Sounds of Yester Year DSOD2005
disk 2 #15 The Man I Love * [4:05] −
disk 2 #17 Hawk's Nest * [2:01] −
disk 2 #16 Brant Inn Boogie * [3:38] Weka WK 12-1
same personnel: *add Betty Carter(vo)
B'Cast, Peoria, Illinois; Aug.4,1948
disk 2 #18 Lady B Good * [2:32] Sounds of Yester Year DSOD2005
disk 2 #19 Body And Soul [3:32] Weka WK 12-1
similar personnel:
B'Cast, Denver, Colorado; Aug.11,1948
disk 2 #20 Satchmo's Blues [1:59] Weka WK 12-1
Walter Williams, Benny Bailey, Wendell Culley, Leo Shepherd, Duke Garrette(tp) Al Grey,
Lester Bass, Jimmy Wormick(tb) Johnny Board, Bobby Plater(as) Billy Williams, John Sparr-
ow(ts) Ben Kynard(bars) Lionel Hampton(vib.p.dr.vo) Milt Buckner(p) Wes Montgomery(g) R-
oy Johnson(b) Earl Walker(dr)
B'Cast, Little Rock, Arkansas; Oct.15,1948
disk 2 #21 Dues In Blues [3:35] Weka WK 12-1
similar personnel: *add Betty Carter(vo)
same period
disk 2 #22 Beulah's Boogie [3:17] Weka WK 12-1
disk 2 #23 Calling Dr.Mancuso [2:57] −
disk 2 #24 Jay Bird * [3:48] −
disk 2 #25 Re-Bop [2:09] −
このディスコグラフィを見てハット!!気づいた。
今まで48年7月1日が最も古いとされたウェスの参加録音が、なんと6月5日の記録が確認できた
ということ、これは大発見です。
ウェスのバイオグラフィでこのような下りがある・・ウェスがハンプトン楽団に入ったきっかけは、
ハンプ一行が中西部をロード中インディアナポリスに立ち寄った時のことである。
巷では、ハンプが新人を募集していると言う噂で持ちきりであった。 妻シリーンの回想によると
「主人はオーディションを受けるのに少し不安を抱いていたようですが、とにかくトライしてみる
ことにしたんだ。といっていました」。
ハンプはチャーリー・クリスチャン系の若いギタリストに目を丸くしながら、彼が音符もコードも
読めないプレイにも係わらずその場で太鼓判を押した。
ウェスは、その当日(5月15日頃)みなが驚いたことにインディアナポリスを出発した。・・1か
月も経たないうちの参加録音が見つかった。ハンプ一行の詳しい足跡は不明ですが当時のフライヤ
ーとステージ写真がありました。
左のフライヤーは1949年、ニュー・ジャージー州 ノース・ワイルドウッドにあるマナーホテルでの
宣伝広告で、右のステージ写真は同年ニューヨークのストランド劇場でのハンプトン楽団です。
当時はディスコグラフィを見ても分かるように、メンバーは細かくよく入れ替わっている。
一番手前で指揮を執っているのがライオネル・ハンプトンで、手前の列の左から
France Gadison(p) Billy Willams, John Sparrow, Johnny Board, Bobby Plater, Gene Morris(sax)
Ben Kynard(bars) Jimmy Wormick, Benny Powell, Al Grey, Lester Bass(tb)
後ろ列左からRoy Johnson(b)、椅子に座っているのがウェス・モンゴメリ、Earl Walker(dr),
Benny Bailey, Wendell Culley, probably Walter Williams, probably Leo Shepherd(tp)
という並びである。
話を戻して、この2枚組CDでさらに伝えたい驚きが隠されていた。
disk 1の22番目に挿入の〈Cherokee〉とdisk 2の3番目に挿入の〈Charlie Cole's Boogie Woogie〉にも
ウェスのソロがハンプトンより許されていた。
先ずは代表的なスタンダードとして多くのミュージシャンがレパートリーにしている〈Cherokee〉について
・・個人的にはクリフォード・ブラウンのソロが気に入っていますが・・「A」32小節「B」16小節「A」’
16小節の1コーラス64小節という曲構成で、2コーラス目トロンボーン・ソロの後、「B」でピアノと
ウェスのソリ(soli)が16小節あり、3コーラス目の「B」で16小節と「A」’の16小節、合わせて32小節で
ウェスのソロが聴ける。
なんと〈Brant Inn Boogie〉を抜いてのこれが最長記録となった。
もうひとつは、ブギウギのブルーズ曲〈Charlie Cole's Boogie Woogie〉ですが、テーマ12小節の後、4小
節ブラスのアンサンブル・トゥッティがあり、5小節目からウェスのソロが8小節と、2コーラス目の12小
節、合わせて20小節のソロ、これが先発ソロですから堪りません、魅せますね、聴かせますね。
どれもこれもクリスチャンライクなソロに改めてウェスの技量が発揮されていることが、しかもハンプトン
楽団のなかでという事実を確認した。プレイに関して身勝手なハンプトンを見直した、えらい。
最後に、この48年はレコーディング禁止令(AMFアメリカ音楽家連合会が第1次レコーディング・ストと
して、1月1日から12月14日まで全てのレコーディングを禁止)により、正式なレコーディングによるリリ
ースがないためこの放送・収録がどれだけ貴重なものか、推し量るものもない。
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