Tequila/Wes Montgomery/Verve V6-8653
アルバム名 : Tequila/Wes Montgomery
アルバム番号: Verve V6-8653
リリース国 : USA
リリース年月: 8/1966
メディア  : LP


Wes Montgomery(g) with strings arr. & cond. by Claus Ogerman:
Bernrd Eichen, Arnold Eidus, Paul Gershman, Emanuel Green, Julius Held, Harry Lookofsky,
Joe Malin, Gene Orloff(vln) Abe Kessler, Charles McCracken, George Ricci, Harvey Shapiro
(cel) *add George Devens(vib) Ron Carter(b) Grady Tate(dr) Ray Barretto(cga)
                                 Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, N.J.; Mar.17,1966
          Midnight Mood *                        [5:20]                    
          Bumpin' On Sunset                      [4:45]                          

Wes Montgomery(g) Ron Carter(b) Grady Tate(dr) Ray Barretto(cga)
                                 Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, N.J.; Mar.21,1966
          The Thumb                              [4:30]                    
          Tequila                                [3:20]                         

omit: Ray Barretto(cga)  add: George Devens(vib)
                                 Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, N.J.; Mar.17,1966
          What The World Needs Now Is Love       [4:55]                    

Wes Montgomery(g) with strings arr. & cond. by Claus Ogerman:
Bernrd Eidus, Arnold Eidus, Paul Gershman, Emanuel Green, Julius Held, Harry Lookofsky, 
Joe Malin, Gene Orloff(vln) Abe Kessler, Charles McCracken, George Ricci, Harvey Shapiro
(cel) Ron Carter(b) Grady Tate(dr) 
                                 Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, N.J.; Mar.17,1966
          Little Child (aka:Daddy Dear)          [2:23]                    

add: Ray Barretto(cga)
                                                                              same dates
          How Insensitive (aka:Insensatez)       [3:45]                    

add: George Devens(vib)
                        Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, N.J.; probably Mar.17,1966
          The Big Hurt                           [4:30]  

note: Strings overdubbed May 18, 1966 at Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, N.J. 
      Devens's vibraphone parts may have been overdubbed at this session.             


 レコーディング・データの混乱 先ずはこのアルバムのレコーディング・データについて誤った記載をしていたことに陳謝します。 今まで、3月17日、18日、21日、それに5月18日としていたが、その根拠の殆どがSJ誌の広告に も掲載されているベルギー人、ウォルター・ブリュニンクス編纂 "JAZZ DISCOGRAPHY" とドイツよ り焼直しリリースのCD《テキーラ/ VERVE 831671-2》のデータを参考にしていたのですが、どう も正確さに欠けていることに気付き見直しをかけたというわけです。 最近このレコーディング・データのマトリックス番号が判明したのをきっかけに、ベスト・ヒット CDなどからのデータで一部記載されていたものを参考に、新たに記載変更したことについて説明 する。次の表を見てください。           
マトリックス番号タイトル録音月日ストリングス
66VK298Midnight Mood3月17日付加
66VK299Bumpin' On Sunset3月17日付加
66VK300What The World Needs Now Is Love 無し
66VK301Little Child 付加
66VK302How Insensitive 付加
66VK303The Thumb3月21日無し
66VK304Tequila3月21日無し
unnumberedThe Big Hurt 付加

ここからは推測になるが、真中3曲の録音月日が不明であるが過去のデータを参考にするならば、 3月17日か21日のどちらかではないかと思う。 が3月18日といデータも考えられるがブリュニンクス以外にこの日付はなく、本アルバムを含め多 くは5月18日というのがある。 しかし、マトリックス番号が連番になっているということは、録音月日も正しく昇順になるはずで あり3月の間に5月がはいることはまずありえない。 外国人も日本人もよく間違うのですが、3月は【March】5月は【May】と綴るのですが、簡略的に データを記載するとき3月を【Mar.】とよく書くが、これが多くの制作スタッフに伝わるにつれ5 月【May】と誤記されることがある。 本ディスコグラフィの《バンピン》でも同じ間違いのデータを記載してしまいましたが、このアル バムに関しても5月というのは間違いという感じがする。 仮にマトリックス番号が不明であるが、まして2ヶ月もおいて〈ビッグ・ハート〉1曲だけ録った とも考えにくく、これらのことから真中の3曲は3月18日、〈ビッグ・ハート〉は3月21日という 可能性もある。 〈追記〉 と、ここまで書いたが1999年リリースの《TEQULA/ Veve 314 547 769-2》で新たなデータが発見さ れた。
マトリックス番号タイトル録音月日ストリングス
66VK300What The World Needs Now Is Love3月17日無し
66VK301Little Child3月17日付加
66VK302How Insensitive3月17日付加
unnumberedThe Big Hurt多分3月17日付加

上記の表には赤字で記入したものだがやはり3月18日のレコーディングはなく〈ビッグ・ハート〉 は【多分3月17日】と記されているが、前述のようにマトリックス番号が揃わないため確証はでき ない。 そして【3月レコーディング後の5月18日にストリングスが被された】と記載されていることから ウェス等には直接関係のない事後処理、つまりストリングスだけのレコーディングがされていた。 更に、デヴェンスのヴァイブもこの時に付加されたのかも知れないと記されている。
 私が30年程前(歳がばれてしまいますが)、ウェスを聴いた初めてのアルバムがこの《テキーラ》 だったのですが、それ以前は専らラテンに凝っていたことから、タイトルにある〈テキーラ〉がな おさら斬新に感じたものでした。 当時のダウンビート誌の評論家はこのアルバムに3ツ星の評価を下しながら、「商用的なアルバム ではあるが決して質の悪いものではない。というのは〈ミッドナイト・ブルー〉や〈リトル・チャ イルド〉でクラウス・オガーマンのアレンジが優雅で叙情感に溢れているからである。」と褒めな がらにも、オガーマンのアレンジが施されていない〈テキーラ〉や〈ザ・サム〉については、「ウ ェスはイマジネーションに欠けており、彼自身も失望している。」と保守的であり疑問の感じる発 言である。 しかし考えてみるに〈テキーラ〉でのレイ・バレットのコンガがオガーマン以上のアレンジに匹敵 することをみ抜き、あえてストレートに収録したクリード・テイラーが見事であったと評価すべき ではなかろうか。 テイラーはヴァーヴ在籍の1964〜66年にかけて、4人のアレンジャーを起用している。     《ムーヴィン・ウェス》ではジョニー・ペイト     《バンピン》ではドン・セベスキ     《ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド》ではオリヴァー・ネルソン     《テキーラ》ではクラウス・オガーマン     《カリフォルニア・ドゥリーミン》ではドン・セベスキ     《ジミィ・アンド・ウェス・ザ・ダイナミック・デュオ》ではオリヴァー・ネルソン 私自身はこれらの中で、異形の融合と感じるのが、この《テキーラ》でのクラウス・オガーマンの アレンジである。 ボーランド出身のオガーマンによるドイツ仕込のクラシックス理論が〈リトル・チャイルド〉を見 事に仕上げていると思うのですが、彼のアレンジは他にもビル・エヴァンス、オスカー・ピータソ ン、それに得意のボサ・ノヴァではアントニオ・カルロス・ジョビン、スタン・ゲッツ、アストラ ッド・ジルベルト等など、59年にアメリカに移住して以来ニューヨークでたちまちジャズとポップ スのトップ・アレンジャーとして成功している。 1970代もてはやされた "クロスオーヴァー" の走りというのが、ウェスがヴァーヴ時代にリリース したこれら一連のシリーズ、つまり "イージー・リスニング・ジャズ" といわれたサウンドであり これらが後の "クロスオーヴァー" や "フュージョン" に影響を及ぼしたのは確実なことである。 思うに、テイラーがヴァーヴを離籍しA&Mの傘下にCTIを設立しウェスを迎え入れたとき、バ ロック風のアレンジをドン・セベスキに任せたことで大ヒットを呼んだという点ではセベスキがそ れらの発展に大きく寄与させたといえるが、テイラーがオガーマンではなかったということも、ま たまたテイラーの計り知れぬ才能だったと言えよう。