想い出

「故郷は、遠きに在りて想うもの、そして悲しく詠うもの、・・・・詩人の気持ちが心に沁みる。」

犬を連れて、朝の散歩にでた。
久々の故郷の街並みは、新しい家が増え少し変わった様子であったが、
古ぼけた神社は昔のままで境内は、掃除が行き届いていて、
清清しいたたずまいであった。
幼い日この境内で、遊んだ人を思い出した。
あの人は、確か自分より二つ年上だった。
お父さんを亡くして、しばらくして引っ越していった幼い日の、
もの悲しい想い出である。
富岡城の大手門の石垣を右手に見ながら、
狭い路地のゆるい坂道を上がりきると、天草灘が目の前に広がる。
頼山陽が、水天髣髴 青一髪と詠った海である。
泊ス天草ノ灘の歌碑は、今も変わらずにその海に向かって建っている。
ただ、当時海亀が卵を産みに来ていた砂浜は跡形もなく駐車場となり、
遊歩道は数メートル沖へ突き出し昔の面影は消えてしまっていた。
故郷を遠く離れたものにとって、変わらないで昔のままであって欲しいと
思うのはエゴだろうか。
若いあの日に朋と歩いた浜辺は、松林の防風林となり、
漁港が造られ、遊漁船が繋船されていた。
想い出が、少しづつ消されていく故郷の現実が目の当たりとなつた今、
俺はなにを心の拠りどころとして、故郷の想い出を抱いていけばいいのか、
思いは複雑で、初めて乗る天草空港発福岡行きの飛行機の中で、
離れ行く故郷の島影を瞼の中に刻みながら、
心の中でさらば故郷と言った。

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